不知火に落ち度はない特別編　-川内ボルネオ探訪記（完結）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なお、流石にこの川内も無傷というわけにはいかず、艤装は当然大破状態。 ふらふらになりながら水平線の向こうから帰ってきて「流石にへとへとだから寝る」とのコメントを残して、屋根裏に逃げ込んだと聞く。 その頃俺達は、北方海域に進軍してたわけだ。 #不知火に落ち度はない

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なにをやってたんだ、に対する質問で「散歩してたらすっごい数に襲われてなんとか撃退した」とシンプルに答えた川内だが。 それを信じて貰えるスコアが、あいつにはなかったのが災いした。 だって、あいつ一回の出撃で、沈めるの1艦とかなんですもん。 #不知火に落ち度はない

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よって60超のスコアなんか、誰もうなずきゃしねえ。 だが、姉が無駄に言い張るのを見て神通からの進言により、指定海域へ調査に行くと海に残骸が山ほど浮かんでたと。 こうしてニンジャは、ヒーローとなったのである！ ありがとうニンジャ！ ニンジャ強い！ #不知火に落ち度はない

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そして、大いに拍手を貰えてこの話はおしまい！ やったね！！ と川内は思ってたらしい、つーか俺もそうしたい。 が、そうもいかねえのが現実である。 夜戦とは言え単騎で60機以上叩き落とす艦娘がいる。 そんなん敵目線で考えてみ？ #不知火に落ち度はない

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とても信じられないが、しかし、死んだ数は多い。 そして、同時に開いた拠点を攻められた。 じゃあ、少なくとも新型装備みたいなのを持ってきてる、って誰だって考える。 では次は油断なく援軍を送って、拠点奪還と同時にそれを見極めよう、って思うじゃん？ #不知火に落ち度はない

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さて、そうなると、この師団集結はごくごく自然な流れになるわけだ。 早い話、普通に買った負けたのレベルを超えて、大規模戦闘へと変わりつつある、と。 普通に戦闘して、拠点奪還したならこうはならんわな。 川内は大規模戦闘の引き金になったわけだ。 #不知火に落ち度はない

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もちろん、それに対する対策はとっくに立ってる。 そこであそこにおられる大熊猫元帥様が龍田の口を借りてこうおっしゃったのである。 『まずは海域を放棄せよ。それでも襲い来るならば迎え撃つほかない。アウターヘブンより大和型を出す』 とのことである。 #不知火に落ち度はない

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まあ、実際さ。そうなると攻める側としちゃ、気持ち悪くて攻め込んでこないわな。 来ても自慢の超火力とかで戦線を維持しつつ、撃退って腹である。 で、まあ。あれだ。 表面上だけ見れば、大戦果の英雄がいて、ちょっと予定が狂っちゃったよ、って感じ。 #不知火に落ち度はない

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その予定が狂った分のおっかぶせは、この場にいる提督全員に来たわけだ。 出撃した分のコストは、誰も払っちゃくれないのである。 本来この場は、軍法会議でなく英雄表彰の場でありたいんだけどさー。 実際モグリはそれでやる気をイタリアまで飛ばして、スマホゲー中。 #不知火に落ち度はない

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作戦指揮の失敗の分。 少なくねえコストを払った分。 これから払うコストの分。 その責任を誰が負うか、って話で喧々諤々した結果、川内がその椅子に座った。 一番の功労者が運悪くそこに座ったんだ。 生じた損の分を誰が被るか、っつー椅子取りゲーム怖いよな。 #不知火に落ち度はない

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納得いかねえ。はっきり言って納得いかねえ。 だが、ここで誰かが責任を負ってどうにかならねえと、前に進めないわけだ。 今もなお、繰り返し5度目の話が飛んでってる。 「独断専行とは考えなかったのか」 「通信機壊れてたんだって。しかたないじゃない」 #不知火に落ち度はない

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その態度が、こいつこそが原因である、と印象づけていく。 龍田は──ただ、微笑んでる。 が、苦笑いに見えたのは気のせいだろうか。 龍田の言葉に対しても、川内はマイペースに知ったこっちゃないと返してるのだから。 #不知火に落ち度はない

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かくして会議は川内型一番艦、川内の適合者は不的確である、との方向に流れつつある。 英雄は軍に要らない、みたいなありさまだ。 そこまでは、まあ。 ままある話なのだが。 そこで、ふっと嫌な予感がした。 中野学校と言われる機関が顔を出していた。 #不知火に落ち度はない

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前身が陸軍中野学校、っていうあれの、いわゆる『超人育成』みたいな機関と聞いた。 もちろん表向きは兵器開発局とか、そういうアレだ。 そいつが、何故か会議に加わってる時点で思いっきりきな臭さがある。 いや、艤装技術顧問として、あっちに海軍もいるんだけどな。 #不知火に落ち度はない

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実際、責任を押しつけ、川内の任務を外し、懲戒免職とする。 ここまでが第一の落としどころ。 さらに余罪などを考慮の上で、軍刑務所にて数年禁固刑。恩赦はある。 ここまでが第二の落としどころだろう。 が──。 #不知火に落ち度はない

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誰もが納得するはずの、そんな答えの中に意図が見えた。 あの前席で大人しく座ってる奴が時折話の流れを、恩赦方向に持って行ってるあたり。 恩赦の対価に労働は必要である。 以後、研究機関に所属、という好待遇もちらつかせてる。 #不知火に落ち度はない

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誰だってテメェの失敗を、ただ一人に負わせて笑っていられるほど肝は太くない。 そういう恩赦を与えることのできる機関からの声は、素直に受け止めたい。 これこれこういう理由で仕方なく裁いたけど、その後の人生は平和です、としたいわけだ。 #不知火に落ち度はない

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みんなが損をしましたが、たった一人が責任を負いました。 でも、その後更正して立派に役に立ちました。 ああ、なるほど。 シナリオはそんなところだろう。 俺だって賛同したい。 60機以上を単体で落とした超性能の艤装を、調べたいって意図がなけりゃな。 #不知火に落ち度はない

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分別くさい声が頭の中で聞こえる。 大人になって考えろ。 別に川内は悪いようにされない。 あいつの謎性能が、解明されれば今後の艦娘の強化に繋がる。 ここで黙って頷けば、誰もが幸せでした、で終わる。 お前も川内には手を焼いていたし、いいお灸だろう。 #不知火に落ち度はない

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それに独断専行した。 戦果云々以前の問題だ。 和を乱すからこうなる。 ああ、わかる。 痛いほどわかる。 これが出た杭が打たれ、社会に還元される流れだ。 規律正しい軍であるための、必要な犠牲である。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

だから、俺は川内を見限り、そこで同意すればいい。 俺からの声は、おそらくこの会議をさっさと終わらせる事ができる。 あそこに座ってる川内もそりゃ、バカだが納得するだろう。 目を向ければほら。 ──良いよ？ しょうがないでしょ。 そんな目をした川内だ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

多少神通に恨まれたり、那珂ちゃんに恨まれたりはするだろうが。 ま、何の問題もないまま、俺は提督の椅子に座れる。 ──これは必要なことだ。 腰が、椅子から浮く。 ──だからその先は言わない方が良い。 手を挙げる。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「異議があります」 ──ああ、くそったれが。アホか俺は。 なんでよりによって川内なんだよ。 「先程審議に登りましたが、彼女は私、兵頭一也の部下です」 目の前で川内が目を丸くしていた。 やったぜ、初めて見たその顔。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「独断専行ではあったものの、彼女は戦果を出した。軍人として恥ずべき行為ではない。その責があるとすれば、私にあると断言します」 ざわめき出す周囲。慌てる中野学校の人。 はっはっは。良いなその禿頭。 汗が出てて予定が狂ったってツラがよく拝めるわ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「よって資格を剥奪されるべきは自分である。そう考えます」 モグリがゲームを投げ捨てた。 ギンブチが眼鏡を落として、慌てて拾ってる。 あっはっは、大混乱だぜ。 おっかしー。 「それは、先程検討した結果。君の戦果などを考慮して却下したはずだが」 #不知火に落ち度はない