オカルト探偵あきつ丸 -深淵の呼び声-

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次のオカルト探偵あきつ丸シリーズです。 今回は民俗学方向から捕らえたお話。 是非ご堪能くださいませ! 続きを読む
1
前へ 1 2 3 ・・ 6 次へ
竹村京 @kyou_takemura

ただし、成分が分かってもそれをどう合成するか、たかが硫化鉄でどうして強靭な装甲ができるのかは不明なままだ。 『さすがあきつ丸どの、当たりです』 「まあ、我々に話が回って来るなら基本そっち絡みでありますからなー。せっかくの休日がおじゃんであります」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:03:29
竹村京 @kyou_takemura

『犯人の目星はついています。昨日の朝漁船をチャーターして島に入った学者です』#落ちぬい二次

2015-07-02 22:05:08
竹村京 @kyou_takemura

そも、その島には島民の他には学者と生き帰りの足を提供した漁師しかいない。島民全員の居場所が分かれば、自動的に犯人が分かるというものだ。だが、その学者は昨日から居場所が分からないという。迎えの漁船に乗っていない以上、島内にいる事だけは確かだ。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:06:16
竹村京 @kyou_takemura

『部下を先行させて山狩りをさせます。詳細はメールで送りますので、その島で合流しましょう』 しょうがないでありますにゃぁ、とやる気のなさそうな返事をしながらも、既に炬燵から這い出している。 「ところで大月。一番重要な事でありますが」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:07:56
竹村京 @kyou_takemura

『……なんですか』 「その島、飯はうまいでありますか?」 電話の向こうから大月の大きなため息が聞こえた。 『残念ながら、食堂は一軒もありませんね』 「一気にやる気がなくなったであります」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:09:44
竹村京 @kyou_takemura

『冗談を言う余裕があるなら行動してください。では』 電話が切れると炬燵の上の休暇申請をがりがりと手早く書き、一葉の脅迫用写真とともにまるゆに託して提督に提出させる。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:10:57
竹村京 @kyou_takemura

その写真とは、酔い潰れた(ふりをした)あきつ丸を提督が抱きかかえて自室に連れ込む(様に巧みなアングルで撮影した、実際はその前を通り過ぎてあきつ丸の部屋に連れていく時の)写真であった。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:12:39
竹村京 @kyou_takemura

あきつ丸が徴発した漁船で島に入ったのは翌日の事だった。ヘリを使った大月は数時間早く到着していて、部下たちからの情報を集約し終えたところだった。 「お疲れ様です。早速ですがこれを」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:14:35
竹村京 @kyou_takemura

大月が差し出した手帳を受け取り、手早く目を通す。山頂に近いところで発見された、老学者の持ち物の一つだ。 「よくもまあ、こんな伝承を見つけたものであります」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:19:09
竹村京 @kyou_takemura

手帳は日誌として使われていたらしく、古文書を騙し取ったことからそれを基にしたこの島での探索まで事細かに記述されている。洞窟に入る所で記述が途切れている事から、洞窟に入った直後に行方をくらましたと推測された。 「この御老人、間違いなく操られているであります」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:21:10
竹村京 @kyou_takemura

主に空母の艦娘は一種の念動力で艦載機を操る。深海棲艦も同じだとすれば、理論上はその力で他者を操ることも可能だろう。事実あきつ丸たちはそうして操られた人間に出くわしたことがあるし、クトゥルフ神話などにあるように感受性の高い人間はテレパシーの影響を強く受ける。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:24:17
竹村京 @kyou_takemura

「なにか呪術的な祭祀の形跡はあったでありますか?」 手帳を読みながら問う。 「ええ。その手帳が見つかった洞窟には注連縄と簡素な祭壇がありました。いずれも古いものですが、壊されたのはつい最近ですね」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:26:42
竹村京 @kyou_takemura

「つまり一昨日から今朝にかけて、という事でありますな」 深海棲艦のテレパシーを遮断していた場が壊されたのだろう。現代風に言えば盗んで電波暗室に封じていたラジコンを持ち出したようなものだ。反応が返ってきた持ち主が取り返そうと思うのは当たり前の事だ。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:28:16
竹村京 @kyou_takemura

「指数が大分上がっています。放っておけば深海棲艦の群れが来る可能性がかなり高いですね」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:29:34
竹村京 @kyou_takemura

不用意に艤装を手にした老学者がテレパシーの中継装置のような役割を果たし、艤装の在処を知った深海棲艦たちはそれを海軍から隠し続けるべく老学者を操っているのだ。同時に回収部隊も差し向けている事だろう。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:31:21
竹村京 @kyou_takemura

「奴ら、艤装を取り戻そうとしているのでありますな。陸の上で回収できれば楽なのでありますが……」 あきつ丸と大月が相談しているところに憲兵の一人が報告に現れる。それによれば、島民所有の漁船が一隻無くなっているそうだ。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:33:57
竹村京 @kyou_takemura

「逃げられましたね」 「で、あります。仕方ない、自分はこのまま追いかけるであります」 あきつ丸は持ってきた艤装を手早く身に着けていく。既に乗ってきた漁船は帰していた。大月は部下に命じて漁船のGPS信号を照会させ、一隻だけ東に向かっている船があることを確認する。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:35:36
竹村京 @kyou_takemura

「お一人で大丈夫ですか」 「相手によるであります。空母や戦艦が出たら一目散に逃げるしかないであります。何しろ自分、人相手ならともかく深海棲艦には滅法弱いでありますから」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:37:02
竹村京 @kyou_takemura

それから大月にねっとりした眼差しを向け、意地悪く言った。 「大月も男なら自分と肩を並べて戦うくらいの気概を見せてほしいであります」 「それができればどんなにいいか。気にしているんですよ、深海棲艦をあきつ丸どのに押し付けなくてはならない不甲斐なさは」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:39:10
竹村京 @kyou_takemura

大月は普段の他者に対する高圧的な態度はどこへやら、目を伏せて殊勝な事を言って見せた。 「ふふ、冗談でありますよ。艦娘には艦娘の、お前にはお前の役目があるであります」 「と、いいますと?」 「自分の鎮守府に連絡して提督殿から海保に話を通させるであります」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:42:39
竹村京 @kyou_takemura

「海保に? 海軍の方が戦力になるのではありませんか」 いやいや、と首を横に振って続ける。 「老人一人を助けるためには護衛艦や艦娘より海保の方がよっぽど役に立つでありますからな」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:44:18
竹村京 @kyou_takemura

軍と海上保安庁は組織も管轄も違う。アメリカでは陸海空軍と海兵隊、コーストガードは一体的に運用されるが、日本ではあくまで軍は軍、海上保安庁は警察権だ。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:46:36
竹村京 @kyou_takemura

深海棲艦の出現後、日本の世論は深海棲艦を撃退するためというエクスキューズを得て好戦的になっている。 確かに海洋国家である日本にとって中東の資源地帯とシーレーンの確保は国家の存立の根幹だが、それにしても急進的にすぎるという意見はある。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:47:48
竹村京 @kyou_takemura

艦娘システムに必要な、太平洋戦争までに有力な海軍を持っていたという経歴を持つ国は多くない。だから艦娘を持つ国が持たない国に進出して基地を構えるのは互助の観点からも当然の事だが、しかし昨今の日本はその基地を拠点に現地の政財界と癒着しているように見える。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:49:12
竹村京 @kyou_takemura

現代の戦争は領土の取り合いではなく経済戦争だ、とはよく言われるが、あきつ丸には潤沢な経済力に加えて世界屈指の艦娘戦力を擁する日本と日本海軍がこの期に乗じて利権を漁っているように感じられた。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:50:22
前へ 1 2 3 ・・ 6 次へ