オカルト探偵あきつ丸 -深淵の呼び声-

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次のオカルト探偵あきつ丸シリーズです。 今回は民俗学方向から捕らえたお話。 是非ご堪能くださいませ! 続きを読む
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竹村京 @kyou_takemura

対して海上保安庁に艦娘はいない。領海警備と救助を担う、防性の組織のままだ。 無論、自分もその軍の一員であり汚れ仕事を担う身であるから、その感情を表には出さない。 しかし、だからこそ海上保安庁を好もしく思っているのも事実だ。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:52:17
竹村京 @kyou_takemura

そも、単純に護衛艦を動かすにはカネがかかり、艦娘を出しても老人を担いだままでは航海できないという問題もある。だから守りのスペシャリストの力を借りるのだ。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:54:55
竹村京 @kyou_takemura

「うちの提督殿はもともと海上保安官でありますから、正式に軍から要請するよりも話が早いはずであります」 大月が意図を察して頷く。 「なるほど。では私はそれに同乗して追いかけます。ご武運を」#落ちぬい二次

2015-07-02 22:56:11
竹村京 @kyou_takemura

「お前も。ああ、ついでに飯と寝床も用意しておくでありますよ?」 「忘れずに伝えておきます」 あきつ丸は上出来であります、と言って、大月の肩を励ますように叩いてから東に舵を取って海を駆けて行った。#落ちぬい二次

2015-07-02 22:57:14
竹村京 @kyou_takemura

あきつ丸と別れてから数時間後、大月は全速を発揮して海上を疾走する巡視船の中にいた。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:00:31
竹村京 @kyou_takemura

あきつ丸の提督――鯨崎を介して手配させたのは巡視船やしまPLH-22。最高速度は23ktと、高速発揮時の最低基準が30ktである護衛艦に比べれば足は遅いが、素人が操船する漁船に追いつくには充分のはずだ。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:04:13
竹村京 @kyou_takemura

「鯨崎さんのたっての頼みだから船を出したが、いい加減何をやるか教えてくれないか」 急な要請を受けて横浜から出航し、途中の島で大月をピックアップしたが、その大月は憲兵だと名乗ったきり行き先を指示するばかりでほとんど何も語らなかった。船長の宮濱は痺れを切らし、催促する。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:05:27
竹村京 @kyou_takemura

「ああ、そろそろ追いつくから覚悟を決めてもらおう」 「覚悟?」 「いや、なに。ちょっと気の触れた老人が漁船を奪ってこの先にいるので救助してもらいたいだけさ」 「その程度なら、別にやしまを出す必要は無いはずだが」#落ちぬい二次

2015-07-02 23:06:53
竹村京 @kyou_takemura

みずほ型巡視船はヘリ搭載の大型巡視船であり、船体規模だけで言えばオリバー・ハザード・ペリー級フリゲートと同等である。たった一人の救助ならもっと小型で高速の巡視艇もあるし、ヘリだけを飛ばす事も不可能ではない。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:08:59
竹村京 @kyou_takemura

「救助だけならそうだが、ほぼ確実に深海棲艦が出る。だからある程度、武装が欲しい」 「深海棲艦だと!?」 宮濱船長が驚愕の声を上げる。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:10:58
竹村京 @kyou_takemura

この「やしま」は大型のヘリ巡とはいえ、武装は35mm単装機銃一基と20mm多銃身機銃一基しかない。海軍の護衛艦でさえ深海棲艦と正面切って戦うには分が悪いのに、この巡視船で立ち向かえというのは無茶だった。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:12:24
竹村京 @kyou_takemura

「海軍を呼べ!俺たちじゃ手に余る!」 海保の深海棲艦に対する基本戦術は、まず逃げの一手である。任務上、指数の高い海域に進出する事もあるが、彼我の戦力が圧倒的な以上、深海棲艦が出れば警備対象を引き連れてとにかく逃げる。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:13:42
竹村京 @kyou_takemura

いきなり深海棲艦に立ち向かえと言われて取り乱す船長に対し、大月はやれやれと嘲笑してみせる。 「怖気づいたのか? 帝国海軍の後継のくせに情けないな」 「ふざけるな!俺たちゃ軍人じゃねえ、海保は海保だ!」#落ちぬい二次

2015-07-02 23:15:17
竹村京 @kyou_takemura

海上保安庁と海上自衛隊はともに帝国海軍を受け継ぐ組織だが、海保は海軍であることを拒み、海上の警察権に徹する事を選んだ。戦うのではなく、警備と救助によって守る組織になったのだ。だから巡視船は軍艦旗を掲揚しない。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:16:37
竹村京 @kyou_takemura

「それは失敬。だが、ならばこそ要救助者を前にして逃げるのはどうかと思うが」 「……っ!生意気言いやがる!いいだろう、やってやる!」 宮濱船長は闘志を漲らせ、部下たちに次々と指示を飛ばす。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:19:15
竹村京 @kyou_takemura

「ヘリは今のうちに出ろ!あの爺さんを吊り上げる準備しとけ!」 「了解!」 パイロットや救難員たちが搭載しているベル412型はなみどり2号に走り、整備員がエンジン始動の準備を始める。 「機銃もいつでも撃てるように準備しろ!」 「了解!」#落ちぬい二次

2015-07-02 23:21:06
竹村京 @kyou_takemura

コンソールに取りついた船員が遠隔操作機銃の発射準備を始めた。 やしまはあくまで巡視船であり、しきしま型のような高性能レーダーを備えているわけではない。射撃管制はあくまで目視に頼っている。射撃用コンソールにしがみつく船員が緊張を静めるため深呼吸を繰り返していた。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:22:43
竹村京 @kyou_takemura

はなみどり2号は間もなく空に舞い上がり、低空で指示を待つ。このまま目標に近付けば深海棲艦からの対空射撃を受けるためだ。 しばらくして、大月のもとにあきつ丸から通信が入った。 「こちらあきつ丸。大月、聞こえるでありますか?」 「ええ、そちらの状況は?」#落ちぬい二次

2015-07-02 23:23:40
竹村京 @kyou_takemura

「やっと漁船に追いついたであります。もしかすると深海棲艦に出くわす前に御老人を吊り上げられるかと思っていたでありますが、もうすぐ近くまで奴らが来ているようであります」#落ちぬい二次

2015-07-02 23:26:31
竹村京 @kyou_takemura

あきつ丸が探知している敵は軽巡以下の小規模な艦隊だそうだが、漁船の影からなので正確にはわからない。大月は大望遠の双眼鏡を覗き、あきつ丸と漁船の進む先に視線を動かしてゆくと、不自然な波がこちらに向かっているのが見えた。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:27:33
竹村京 @kyou_takemura

「駆逐艦が三匹です」 「それならば最悪、逃げ切れない事もないでありましょう」#落ちぬい二次

2015-07-02 23:29:44
竹村京 @kyou_takemura

とはいえ、深海棲艦が交戦距離まで来ているのだから学者をピックアップして逃げるだけでは背後から撃たれるのは間違いない。あきつ丸は少なくともヘリとやしまが深海棲艦の射程外に出るまで粘る必要があった。 揚陸艦一対駆逐艦三はあきつ丸から余裕をはぎ取るには充分な戦力差である。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:30:57
竹村京 @kyou_takemura

「開始の合図は?」 「自分が漁船を止めるので、それに合わせて深海棲艦を叩くであります」 「了解しました」 大月は戦況を見渡して言う。 「聞いていたな。合図があり次第撃て」 「だそうだ。準備いいな?」#落ちぬい二次

2015-07-02 23:32:10
竹村京 @kyou_takemura

遠隔操作の銃座が回転し、老学者の漁船の先に照準する。そこには駆逐イ級が三隻接近しつつあった。 あきつ丸は砲を漁船の尾部に向ける。 「さて、始めるであります。だーんちゃーく、今!」 砲弾は漁船の尾部を破壊し、スクリュープロペラを失った船はその速度を急激に落とした。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:35:51
竹村京 @kyou_takemura

「やるぞ!撃ち方はじめ!」 やしまからは船長の号令一下、機銃が火を噴く。 火線はややぶれたが、すぐに修正して駆逐イ級を叩く。さすがに効果は薄いが、進行速度を鈍らせるくらいはできたようだ。#落ちぬい二次

2015-07-02 23:37:06
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