べちゃり、べちゃり。 水音がする。 びちゃり、びちゃり。 ナニカがしたたる。 一歩、一歩、揺らめくたびに、それが煩わしく音を立てる。 うん、それが“ナニカ”はわかってる。 からだを拭く気にもなれず、ただ穢れたままに。 街を徘徊する。 #黄昏町の怪物
2015-07-08 09:05:34そもそも、この街はなんなのだろうか。 自分は、ここで生まれて、これが当たり前、ってわけじゃ、ない。 ぼうっとして、霞がかっていても、それはなんとなくわかる。 日に日に、街の住人は増えている気がする。 それが、“ひと”であるかは、さておいて。 #黄昏町の怪物
2015-07-08 09:07:04見かけた、のか? そんな顔――というか雰囲気。ただその面影は本当に、雰囲気位しかない。 あるいは鱗にびっしりと覆われ、とげとげの尾が薄気味悪いくらい映えている。 あるいは鬼の形相で正気がない赤ら顔、牙と角だけがてらてら輝く。 #黄昏町の怪物
2015-07-08 09:11:37それを見て、自分を見る。 “ひと”の形をしていたからだには、ケダモノのようびっしりと毛におおわれている。 そのおかげで、野宿をしていてもさほど寒くはない。快適だ。 かわりに、いろいろなゴミも付着しやすいから不快ではある。 さすがにそれは、慣れたけど。 #黄昏町の怪物
2015-07-08 09:15:47さまざまな異形がはびこる、自分も含めて。 生まれつき、ってわけじゃないんだろう。 それは、身をもって体験したから。 なら、その違いは、生まれつき以外に、なにか、あるってこと? いやそんなことは、割とどうでもいいことか。 そも、この街自体がおかしなものだ。 #黄昏町の怪物
2015-07-08 09:18:46“おかしい”と感じる程度には、自分はココの住人じゃないんだろう。 そんな、よぎった一連が、帰着が、それこそとてもおかしくて。 口から自然と、笑みがこぼれていた。 「異形の種類は死因に準じるみたいなんだよね」 そんな時だ、声をかけらたのは。 #黄昏町の怪物
2015-07-08 09:21:38声の方を見る。 ずいぶんときれいな白衣をまとった、少年だ。 前々からいたのかもしれない。 何しろ自分は、この街にきてからこっち、はっきりと廻りを認識した覚えがない。 いまもそう。 “声”を掛けられ反射的に視線をやっただけ。 またふらふらとあてどなく歩みを進める。 #黄昏町の怪物
2015-07-08 09:23:53それでも、なんとなく動きで、肌で、解るものがある。 視線をやられた少年は、錆びた包丁と自分を見比べている。 「実験しよ?」 いや、断r…… 口を動かそうとした瞬間、ぷつりと。 #黄昏町の怪物
2015-07-08 09:28:10自分から湧く、生ぬるい感触。 絶対的なナニカが途切れたカンカク。 もはや、遅い。 何を認識しようにも、なにもかももう遅いんだな、と。 諦めに似た、ナニカを受け入れた、否。受け入れさせられた。 それが最期に、認識できたことだった。 #黄昏町の怪物
2015-07-08 09:30:41――7にちめ。
[ハンドアウト]気が付くと、君は病室のベッドに両手足を拘束されている。《力5以上で【拘束解除】、力4以下で【拘束状態/死亡時解除】》《開始地点[病院]shindanmaker.com/541541》
2015-07-09 00:06:49[病院]鬼が来た。《拘束状態で力4以下は即死【魂-1】、拘束状態で力5は丁寧に潰されて死亡【魂-2】、拘束解除状態で力5以下は拷問にて死亡【魂-3】、前述以外のとき戦って死亡【異形『鬼腕(力+5)』を入手】》
2015-07-09 00:07:06初めに認識? したのは、ぐにゃりと。 すべての色も感触も温度も感情も何もかもがごちゃまぜの、なんとも言えないゆがんだカンカク。 #黄昏町の怪物
2015-07-09 17:30:30――チガウ。 洞穴にでも落ちこんでぽっかり空いたところから、何か戻ってくる、戻っていく、そんな、カンカク。 まわりがゆがんでいるのじゃない、自分の感覚が、理解が、認識が、何もない所から灯りをたどって把握しようとしていく、そんなカンカク。 #黄昏町の怪物
2015-07-09 17:30:59ぐにゃぐにゃと、白とも青ともまだらとも混沌とも、また明るいとも暗いとも取れない、そんな世界。 無から、空っぽから、這い上がっていくよう、戻ってくる。 いつもの、黄昏。 霞がかった世界。 あ、また“戻って”きたんだな。 #黄昏町の怪物
2015-07-09 17:35:28目を閉じる。そしてあける。 すっと、肺を膨らませて、息を吸う。 見慣れない白い天井、嗅ぎなれないシーツの香り。 聞き慣れない機械的な音に、感じ慣れない異質な気配。 ため息でもつくかのよう、ゆっくりとそれを、吐きだしていく。 ――空気が、違う。 #黄昏町の怪物
2015-07-09 17:39:13たぶん、ここは病院。 ただ、いわゆる“まとも”な病院じゃ、ないのだろう。 あんまり真面目に考えなくても、なんで“ココ”で“こうなってる”かは察しはつくけれど。 視線をやれば、両手足ががんじがらめに縛られている。 ほんのすこしも、からだを動かせない。 #黄昏町の怪物
2015-07-09 17:43:26毛皮に覆われた自分の躰を見る。 なんの気なく意識をやれば、ふわふわした毛皮のいくらかが硬い棘と化す。 これでこの拘束が斬れないか? ――、――。 あ、うん。 これを引きちぎるのには、どう考えても“足りない”。 #黄昏町の怪物
2015-07-09 17:44:24