新聞屋まとめ1

主にアダムとリズの会話。「ハロウィン砒素騒動」~「立ちんぼの少女との遭遇」 ※青猫堂様・黒火薬様との会話を含んでいないため不自然な節が多々あります。※誤字が酷いです。
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新聞屋 @gossip_n_p

「何とかしないでください、一人じゃ出来ないからここに居てって言ってくださいよ、リズのことを必要としてください、」 (感情任せに泣きながら叫ぶ女を抱き締めてやれば良いのだろうが、そんなことで解決してしまうのは嫌だった。女に残った最後の誇りは、新聞屋として男に必要とされることだ。)

2014-12-17 22:15:58
新聞屋 @gossip_n_p

(男は直ぐにでも、お前が必要だと言ってやりたかった。しかしどうにもその言葉は、愛の告白に聞こえはしないか。これからずっと俺の傍に居てくれ、だとか、そういった薄ら寒い言葉に似ている。男が言わんとしているのはそんなものではない。男はしゃくり上げて泣く女を前に、困り果てた。)

2014-12-17 22:21:07
新聞屋 @gossip_n_p

(しかしいつまでも黙っていては、それこそ最低な上司に……いや、最低な男なってしまう。いよいよ男は腹を決めて、「この新聞屋を続けるには、お前が不可欠だ」と勘違いされないような言葉を選び、口を開いた) 「……リズ。これからずっと、俺の傍に居てくれ」 「…………は?」

2014-12-17 22:26:09
新聞屋 @gossip_n_p

( 間 違 っ た 。 男は本日二度目の後悔に苛まれた。どうして俺はこんな大切な時に、薄ら寒い台詞を吐いたんだ。当然だが女の涙は引っ込み、赤い目で訝しげに男を見ている。) 「……悪い、間違った」 「……でしょうね」

2014-12-17 22:29:48
新聞屋 @gossip_n_p

「ごめんなさい、取り乱しました」 (目の淵に残る涙を指で拭った女は、先ほどの男の言葉を思い出したのか微笑みを浮かべ、顔色には明るさが射している) 「本当に悪かった……もう一回言ってもいいか?」 (男は煮え切らないままその黒髪を掻き上げたのだが、女はゆっくりと首を横に振った)

2014-12-17 22:35:02
新聞屋 @gossip_n_p

「いいえ、言いたいことはわかりましたから」 (女は少し照れくさそうに言う。男もそんなことは二度言うものではないと解っているのだが。) 「でもな、」 「ほら、早く書いちゃいましょう。明日になりますよ」 (男は仕方なしに椅子に座り、再び取材の目のメモと睨み合うのだった。)

2014-12-17 22:42:06

捜索①

隣人の「火薬」が何者かに連れ去られ、彼女の「先生が」殺された。知識商店・青猫堂の二人が新聞屋に捜索の依頼をした直後の会話

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(情報屋の二人が出て行った後、男は長い溜息を吐きながら頭をがりがりと掻いた。失踪した彼女は一週間、新聞屋で働いていた事もある。探し出す他に手段は無いのだが、如何にして女に知らせるかが第一の難関だ。結局何と告げて良いのか解らぬまま、一人で活字に向かっているのである。)

2014-12-21 00:55:16
新聞屋 @gossip_n_p

「リズ、差し替えだ」 「差し替え?こんな時間にですか?」 (活字を組み直し、とある人物画を加えて印刷機に無理矢理差し込んだ。一週間限りの部下の失踪はいずれ女も知ってしまうことだが、出来るだけ長いこと知らなければいい。苦し紛れの悪足掻きだった。)

2014-12-21 01:01:07
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【尋ね人】 火薬と呼ばれる若い女性。 長い黒髪と特徴的な瞳。 ×月×日22時〜23時より行方不明。 彼女の保護者が行方不明日に何者かによって殺害されている為、何らかの関係があると見られる。 発見者には多額の報酬金有り。 目撃情報等の報告は当新聞屋迄。 (人物画が添えられている)

2014-12-21 01:11:35
新聞屋 @gossip_n_p

(試し刷りを終えたばかりの新聞を、女が誤字脱字の確認をする為に手に取った。女がじっと食い入るように見つめるその姿を、男はどこか恐れながら見ていた。女は、己が味わった恐怖をもう一度違う形でその身に浴びるのようなだろう。男は女の胸中を推し量ると、堪らなく苦しい。)

2014-12-21 01:13:22
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「……火薬ちゃんが行方不明って、どういうことですか」 「書いてある通りだ、あの白衣の男は殺されたらしい。……探しに行くぞ」 「…………」 (女は泣き叫ぶでもなく、男を罵るわけでもなく、その場で押し黙った。)

2014-12-21 01:19:39
新聞屋 @gossip_n_p

「明日の朝、新聞の投函と同時に調べ始める。さっき帰った情報屋から軍資金を受け取ってあるから、金は惜しむな」 「……はい、」 (女は小さく頷いて、執務室を後にする。男はやはり、呆気に取られていた。ただ黙っていたのは、恐怖の表れか、それとも。)

2014-12-21 01:26:46
新聞屋 @gossip_n_p

「火薬ちゃん、」 (実のところ、差し替えられた新聞の内容も男の話も殆ど頭の中に入ってきていなかった。うまく働かない頭でこじんまりとした棚から小さな袋を取り出す。彼女の頭髪を彷彿とさせる黒いリボンで口を縛られたそれは、あの日彼女から受け取った紛れも無い"彼女"である。)

2014-12-21 01:30:26
新聞屋 @gossip_n_p

(彼女は一体どこに居て、何をしているのだろうか。女が懸命に忘れようとした悪夢がぶり返し、いくら息を吸っても肺が満たされない。もし、あんなにも純粋で汚れを知らない彼女が己と同じような目に遭っていたら。吐き気が女を襲ったが、今一番辛いのは彼女である。昔の出来事に浸っている時間はない)

2014-12-21 01:33:15
新聞屋 @gossip_n_p

(どうせ眠れはしない、と簡素な机の上に地図を広げた。彼女の居そうな場所を推測してゆく。特に治安の悪い地区、廃墟、地下なんてのは盲点かも知れない。人の多いところには居るまい。いいや、木を隠すなら何とやらだ。弾かれたように働き始めた頭は、地獄を思い出させるまいと延々と回り続けた。)

2014-12-21 01:35:38

捜索②

手当たり次第に捜索を開始した新聞屋のとある場面

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「……参考までに聞くだけだからな。お前はあの時、どこに居た?」 「……それがですね、地理的なことは全く覚えていないんですよ。恐らく……そういう地域だと思うんですけど」 (とうに踏み固められた雪道を急ぎ足で歩いてゆく。新聞のネタを探しながらの捜索というのは、楽なものではない。)

2014-12-21 09:48:23
新聞屋 @gossip_n_p

「軍資金を貰ったって、そんな人がいるんですね」 「ああ、金色の目の男と、恐ろしく頭の切れる子供の情報屋がな。会うことがあれば礼を言っておけよ」 「はい」 (人目を避けて閉じ込めておくなら、と思い立ちホテル街へ立ち寄ったものの、その気まずさに二人は適当な話題でその場を濁した)

2014-12-21 13:40:06
新聞屋 @gossip_n_p

「……一旦引き上げるか、夕刊を刷らなきゃならない」 「……そうですね」 (取材先や道行く人に尋ね人のことを訊いてみたものの、収穫は無いに等しかった。女は口を真一文字に結んで寂れた街並みを見渡した後、ブーツの踵を鳴らして男を追いかけた)

2014-12-21 14:27:23
新聞屋 @gossip_n_p

「寒くなってきたな、足元気を付けろよ。……少し危ないが、あっちも行くぞ」 「はい、」 (マフラーの隙間から白い息を吐き出す男は、寂れた工場地帯を指した。あの辺りは人の目に晒されにくいと踏んだためだ。)

2014-12-21 17:50:13
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「先輩、一ついいですか?」 「ん?」 「変な言い方をしますけど、どうしてそこまでするんです?」 (踵が雪を踏みしめる音を規則的に聞きつつ、女は口を開いた。知り合いが行方不明になったとはいえ、普段は何事も面倒がる男が食事の時間すら惜しんで外を探し回っているのだ。)

2014-12-21 20:46:55
新聞屋 @gossip_n_p

(もちろん女は感謝していた。それと同時にやはり疑問は浮かぶ。先ほどは地下にある、薬物中毒者の集まる酒場を訪れたのだ。甘ったるい大麻の匂いで気分が悪くなったが、男は平気な顔で報酬の存在をちらつかせつつ強気な態度で話を進めていた。普段の小心者の男とは余りにもかけ離れている。)

2014-12-21 20:52:32
新聞屋 @gossip_n_p

「火薬は新聞屋の従業員だ。俺がお前を死に物狂いで探したのと同じように、火薬を探すのは当たり前だろ」 「……従業員」 「一週間だろうが一年だろうが変わらない。従業員を放っておく事業主がいるか?」 (そういって男は女を急かし、古びた建物を指した。次はここで聞き込みだと言う。)

2014-12-21 20:57:17
新聞屋 @gossip_n_p

(女は途端に嬉しくなった。女と尋ね人……火薬は、一週間姉妹のように、もしくはそれ以上の感情を持って過ごした。別れ際には思い切り泣き、行方不明だと知った時には感情が作用しないほどにショックであった。その胸中を知ってか知らずか、男も火薬を同じく大切に考えていてくれたことに感謝した)

2014-12-21 21:02:57