新聞屋まとめ1

主にアダムとリズの会話。「ハロウィン砒素騒動」~「立ちんぼの少女との遭遇」 ※青猫堂様・黒火薬様との会話を含んでいないため不自然な節が多々あります。※誤字が酷いです。
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新聞屋 @gossip_n_p

(カンカン、と冬靴が金属を蹴る音を聞きつつ、男は内心溜息を吐いた。女がいる建前、柄にもないことを言ったのだが、正直なところ恐ろしい。彼女を見つけてやりたいのは勿論なのだが、身一つとちゃちな拳銃を持って治安の悪い地域に足を踏み入れるのは、恐ろしいことであった。)

2014-12-21 21:08:53
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(それに加えて、あの情報屋から受け取った資金。それが男を動かしている一因であることは確かだった。確かに金に糸目を付けないことは何かと楽だが、同時にあの金が依頼料のような意味合いがあるのではないかと考えてしまう。受け取ったからには相応の働きをしなければならないだろう。)

2014-12-21 21:14:19
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(息を吸い込んで酒場の扉を開けた。またしても甘ったるい匂いが肺に流れ込んでくる。男は新聞をバーテンダーに突き出し、彼女の居場所を尋ねた。20回以上同じ質問を繰り返しても、やはり恐ろしい。しかし、この恐怖を見破られることだけは、どうしても避けなければならなかった)

2014-12-21 21:20:50

捜索③

手がかりは見つからず。そしてクリスマスは目の前

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「少し休むか?」 「いいえ!時間が勿体無いですもん、行きましょう」 (女は顔をマフラーに埋め、男を急かした。仕事と食事、睡眠以外の時間を全て捜索に費やしてもう3日目だ。体の芯を冷やす寒さは、寂れた地域に行けば行くほど酷くなる。)

2014-12-23 19:06:27
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「顔色悪いぞ。……そこで待ってろ、俺が戻ってくるまで動くなよ!」 「え?ちょっと、先輩!」 (賑やかな通りの終わりが見えてくる。もうすぐ街灯の少ない地域に出てしまう。男は近くにあったカフェの名前を見て安全だと確かめると、女をその中に半ば無理やり押し込んだ。)

2014-12-23 19:25:54
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(男は踵を返し、再び街灯の橙が足元を照らす大通りに戻ってきた。ほんの一瞬、視界の隅に捉えた店が気になった為にわざわざ女を置いてきたのだ。ウィンドウの向こうで男の視線を集めているのは、マネキンの首で煌びやかに輝いている貴金属だった) 「何をやってるんだ俺は、」

2014-12-23 19:33:54
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(人探しの途中に女性物の貴金属を見ていた、などと女に知られた暁には、年明けまで口を利いて貰えないだろう。男は暫くウィンドウの前で立ち止まり、腕を組んで考えた) 「……クリスマスだしな。時期が悪いんだ、時期が」 (頷きつつ己にそう言い聞かせ、男はようやく店の中に入った。)

2014-12-23 19:42:05

クリスマスイヴ

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「リズ、ほら。メリークリスマス、イブ」 「……え?私ですか?」 (新聞屋に帰るなり、男は綺麗に包装された箱を女に差し出す。お前以外に誰が居ると言うんだ、やら、お前の名前がイブじゃなくて良かった、などと沸き上がる恥ずかしさを誤魔化すように首筋を掻いた。)

2014-12-24 19:21:09
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「あの、私……先輩に何も用意してないんですけど」 「そんなのいいから、開けてみろ」 (そもそも人探しの最中にプレゼントを用意すること自体が間違っているのだ。それを悟られないよう、男は女を促した。しかし包装を丁寧に開けるその様を見ているというのも、中々に緊張する。)

2014-12-24 19:24:01
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「……ペンダント」 (女の細い指に絡み付くように現れたのは、銀色のハートがぶら下がったペンダントだ。それだけではなく、星を模った髪留めやら、ピンク色の金属の付いたまたもやペンダントなど、その箱からはやたらめったらアクセサリーが顔を覗かせた)

2014-12-24 19:25:54
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「な、何ですかこれ?」 (極め付けは、ツリーのてっぺんに飾ってあるような大きな星だった。女は素っ頓狂な声を上げて、男に問いかける。よくぞ訊いてくれたと言わんばかりに男はその星を取り上げ、女の頭の上に乗せた。)

2014-12-24 19:27:17
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「お前の髪の上に乗せたら、ツリーみたいになるんじゃないかと思ってな」 (そう言いながら、男はペンダントやら髪留めやらを女の髪に付けてゆく。なるほど確かに若葉色の女の髪をツリーとすると、鈍い輝きを放つ髪飾りはクリスマスオーナメントのようによく映える。)

2014-12-24 19:29:06
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「……な、なるほど。ありがとうございます」 (ぎこちなく礼を述べた女は鏡でその姿を見ながら、何とも言えない顔をする。似合いそうだから一つに絞れず、全部買ってきた、とは口が裂けても言えない男は、上手くいったと頷きながら口元に弧を描いた。)

2014-12-24 19:30:41

捜索④

有力な情報が見つからないまま捜索を続けていたものの、青猫堂の店主に二十日鼠を渡される。しかしその店主の言動に男は腹を立てた。

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「リズ!」 「っ、はい!」 (珍しく大声で名前を呼ばれた女は、齧りかけのパンを慌てて皿に戻し執務室へと向かった。扉を開けると、極めて不機嫌そうな男が手招きしている。) 「火薬の捜索は止めだ、今日からは犯人捜しと洒落込むぞ」

2014-12-27 14:14:42
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「犯人捜し、」 「火薬の目撃情報がないのは監禁されているから。火薬が誘拐される前に、その知人が殺されたらしい。その犯人と火薬の誘拐犯が同じって見立てだ。捜索場所は質屋、酒場に加えて娼館。質問、意見があるなら今のうちに言え」 (目に見えて苛立っている男に物申すのは、不可能だ。)

2014-12-27 14:18:18
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(……と見せかけて、女は挙手をした。) 「どうしてそんなにイライラしてるんです?」 「……あのガキに一杯食わされたんだよ。お前、この数日間で何回マリファナの副流煙を吸った?」 (恐らく、火薬の捜索に関して情報屋に上手いこと踊らされていたのだろうと女は推測した。)

2014-12-27 14:22:28
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「落ち着いてください。私達が利用されようと、火薬ちゃんが見つかれば万々歳じゃないですか」 「……わかってる」 (つまらない意地を張っている場合ではないことは、男も充分に理解しているようであった。額に手を遣った男が、不意に右手を差し出す。女は首を傾げた)

2014-12-27 14:26:41
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「こいつは新しい従業員だ。名前は……そうだな、お前が考えろ」 「ね、ネズミ……?」 (長い尾を携えて男の手のひらに座ったのは、情報屋から預かった二十日鼠であった。女は思わず一歩後ろに下がり、口元を手で押さえる)

2014-12-27 14:28:46
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「鼠の嗅覚は犬よりも鋭い。小回りが利く分、犯人捜しにはうってつけだ。それにコイツは、人の言葉も理解出来るらしい」 「凄いですね、名探偵じゃないですか!名前はネロにしましょうよ!」 (名探偵から連想されるネロ・ウルフから名前を拝借したのだが、残念なことに彼は安楽椅子探偵だ。)

2014-12-27 14:34:00
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「あの、私も着いて行きます」 「……着いて行くって、娼館だぞ?」 「一人で此処に残ってたら、どんな輩が押しかけてくるかわかりませんし」 「それもそうだが、」 「先輩?娼館を利用するわけじゃないですよね?あくまで捜索ですもんね?」 「当たり前だろ」

2014-12-27 17:11:29
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「……娼館を探すってことは」 (女は男の方を見ずに言葉を切った。わかってはいても言いたくない。) 「……お前の考えてることは大体合ってる。誘拐された後の使い道は、」 「……そんな、物みたいな言い方しないでください」 (二人はそれきり、目的地に着くまで一言も話さなかった)

2014-12-27 17:24:39

捜索⑤

質屋と売春街を徹底的に調べることにした二人は赤毛の少女に声をかける。

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