宮本和英 @kazmiyamoto さんの出版業の問題点とそれに対する反応

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宮本和英 @kazmiyamoto

実体験2 何号か出して、書店の販売データを目を皿のようにしてチェックしました。すると数字は悪いのですが、完売店がちょこちょこあるのです。2、3部配本されてそれが全部売れているといったレベルでしたが、僕にとっては唯一の「いい芽」でした。つまりお客さんが確実にいる!という手応えです!

2011-01-06 05:00:32
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験3 その頃、営業担当と会議をして、こちらが販売策を色々提案してみるものの、彼らの答えはいつも「そんなことをやっても効果はないですよ」「過去にいろいろやってきたけど、結局雑誌の中身が良ければ売れていくんです」。営業担当者からこの言葉を聞いた事のない編集者はいないでしょう。

2011-01-06 05:27:23
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験4 彼らの考えが間違っているわけではありません。彼らの言う通りです。でもその視点からしか見ないようになると、「いい芽」を見逃してしまうのです。売れていないnicolaの「いい芽」は、完売店がチラホラあったことです。細かく見ていかないと気付かないほどのちっちゃな「芽」でした。

2011-01-06 06:00:05
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験5 売れてくれることを最も必死で願っていた創刊編集長の僕だから気付いたことといえます。その時考えたのは、このまま放っておくと……ちょっと疲れたので続きはまた後ほど。、

2011-01-06 06:00:29
宮本和英 @kazmiyamoto

j実体験6 続き…その時考えたのは、このまま放っておくと、実売数が伸びなければ取次が配本部数を減らします。当然配本される書店数が減ります。売れていない書店への配本をカットし、完売店や比較的売れている書店へ配本数を増やして、結局完売店がなくなっていくだろうということです。

2011-01-07 02:47:35
宮本和英 @kazmiyamoto

j実体験7 つまり唯一の、僕だけが気付いている「いい芽」がなくなってしまう!完売店とはいえ配本数をどんどん増やされたら当然売れ残りが出てきます。そして全体に数字が均されていって、全体の実売率がこの程度では配本数をさらに減らさなければならない、という状況に追い込まれます。

2011-01-07 02:53:35
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験8 そして廃刊への道をまっしぐら! そうしないために例えば大々的に宣伝する手がありますが、当時のnicolaではそんな予算を組んでもらえる状況ではありませんでした。必死で考えた僕の販売プランは、実はしごくまっとうなものでした。

2011-01-07 02:58:46
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験9 配本にあたって幾つかのルールを作りました(実行できるかどうかは営業と取次にかかっていますが…)。

2011-01-07 03:04:08
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験10 まず一書店あたりの配本数を最低でも5部以上にする。これは書店の平台に置いてもらうためです。知名度のない雑誌は1~2部の配本では棚に置かれてしまい、お客さんの目に触れることなくそのまま返品されてしまいます。だから5部以下の配本をやめさせる!

2011-01-07 03:08:10
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験11 次に配本される全体の書店数を絶対に減らさないこと、逆に増やして欲しいということ。これは、それまで5部以下の配本店で売れ行きの悪い書店への配本を切ってしまうことを防ぎたかったからです。つまりそれまで5部以下の配本店にm配本数を増やすためのルールです。

2011-01-07 03:12:07
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験12 1~2部しか配本されていなかった書店も、5部以上配本して平台に並べてもらえば売れるようになるかもしれません。その機会を失いたくなかったからです。

2011-01-07 03:23:51
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験13 さてそうすると、全体の配本数を増やさなければならないのでは?と思われるでしょうが、大書店などには必要以上の部数が配本されているので、その余計な分を減らして他に回してもらえばいいのです、そうすれば大書店の実売率も上がってきます。全配本数を増やさずに効率を上げるわけです。

2011-01-07 03:28:24
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験14 さらに、完売店に対して、通常は次回から配本数が増やされていくのですが、そこに2割増しまで、というルールを提案しました。僕はあくまでもまず完売店を増やしていこうと考えていたので、やみくもに完売店への供給を増やされてその書店の実売率を落としたくなかったのです。

2011-01-07 03:32:17
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験15 完売店があるといことが、僕の発見した「いい芽」なのですから、その「芽」を大きく育てていくことで、ブレイクスルーしようと考えていました。仮に全体の実売数があまり増えていなくても、完売店の数を増やそうと狙ったのです。それはきっとイメージを変えます!

2011-01-07 03:36:19
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験16 こうしたルールを決めてもそれを実行してくれる営業担当者がいなければ画に描いた餅です。雑誌営業のベテラン達は素人の僕のこのルール提案に乗り気ではありませんでした。「君がそんなことをしなくても、取次だって効率配本を心がけているんだから」と。

2011-01-07 03:40:16
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験17 僕が提案した配本ルールは、出版社からの指定配本という事でどの出版社でも出来るわけではありません。でもS社は営業がその煩雑な作業をやってくれれば可能だったのです。つまり面倒な事をやりたくなかったのでしょう。確かに彼らの言うように雑誌に力があれば売れるはずなのですから。

2011-01-07 03:45:17
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験18 その時僕に幸運が訪れました。週刊誌編集部から若手のU君が雑誌営業に異動してきたのです。編集と営業の人事交流が始まり彼はその第一号。U君は営業プロパーの思想に染まっていなかったので、僕の提案を素直に理にかなっていると賛同してくれ、煩雑な作業を厭わずやってくれたのです。

2011-01-07 03:51:10
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験19 僕がU君にもう一つ頼んだのは、調査店販売データに、調査店のうち実売率100%の書店が〇%あり、実売率99~80%の書店が〇%とい79~50%の書店が〇%という表を付けてもらったのです。

2011-01-07 03:57:07
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験20 そうやって号を重ねていくと、はっきり数字が良くなってきました。完売店が増えていくのです。勿論、編集サイドの努力も色々あったのですが、それはここでは置いておきます。とにかく完売店の占める割合が確実に増えていき、全体の実売率も着実に上がって行きました。

2011-01-07 04:03:59
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験21 つまり雑誌に力がある(「いい芽」がある)ということを、配本ルールを厳格に適用することで目に見える形(数字)にして見せた訳です。雑誌に力があっても、その「いい芽」を見ようともしない連中は、簡単に「雑誌に力がなかったんだ」と決めつけてしまうのです。

2011-01-07 04:10:32
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験21 販売データの数字が良くなってくると、周囲から「nicolaに勢いが出てきた」という声が上がるようになりました。取次の対応も変わってきます。実は実売数はまだそれほど上がっていたわけではないのですが、関係者がnicolaの「いい芽」を見てくれるようになったのです。

2011-01-07 04:14:38
宮本和英 @kazmiyamoto

実体験22 最初は僕だけが気付いた「いい芽」を、多くの人達が認め始め、売れていきそうな雑誌に、書店も取次も営業も広告部も乗ってくれるようになりました。良い方向へ雑誌が回転し始めたのです。この一連の成功は、U君が煩雑な作業を厭わずにやってくれたことに尽きます。彼に感謝でした。…続く

2011-01-07 04:20:04
大門弘樹 @hdymon

新潮社を退社した宮本和英氏( @kazmiyamoto )のツイートが、すごく勉強になる。新しい出版企画の前に立ちはだかるのは、実は出版社の営業というポジションの人。判断基準は類書の部数という人がすごく多い。よって類書のない本は通してもらえない。この悪循環に私も苦しめられた。

2011-01-07 04:55:13
大門弘樹 @hdymon

出版社の営業さんの多くがそうなるのは、どうしたら取次が本を仕入れてくれるかという視点だから。でも、そもそも返品を前提とした再販制度が細分化した消費者のニーズに合ってない。電子書籍がどれほど定着するかは疑問だけど、企画が通りやすくなって且つ出版社のリスクも減るならウェルカムのはず。

2011-01-07 05:11:55
大門弘樹 @hdymon

私も宮本さんの講義を聞くようで、改めてツイッターの凄さを実感しました。 @HiraoRyo 紹介ありがとうございました。さっそく宮本さんのツイート読ませてもらっています。描くほうとしても担当編集さんから先のことは見えにくくて、ぜひ知りたかった部分でもあるので大変勉強になります!

2011-01-07 05:26:01