５月　三國佐久間と狭間駿

狭間 駿 @c_yu_n

狭間】空の雲の流れから聞こえているのか、背後の海から聞こえているのか、だんだん、分からなくなってくる。

ーーー @HaKo_723

サクマ】費やした時間分、短くなった煙草と鉄骨に押し付けて潰す。そして放り投げれば先ほどの様に異能を発生させ今度は一瞬にして潰し消した。音もなく立ち上がり踵を返せば、キリンの首、背中に向けて歩き出す。視線は泳ぐこともなく行く先も見ている。

狭間 駿 @c_yu_n

狭間】頭上を見上げている。鉄骨はのびていって、クレーンに繋がる部分で、自分の視界では唐突に途切れているように見える。夜空に、雲が明るい。ぽかんと口をあけてそれを見ていると、こつん、と、一定の振動が聞こえるような感覚をぼんやりと受け止める。

狭間 駿 @c_yu_n

狭間】「………、……。　！」 しばらくぼけっとそれを聞いたあとに、それが足音かもしれないと気付いて、さらに一拍置いて、上を見上げたままはっとして少し身を起こす。

ーーー @HaKo_723

サクマ】「…、」とつ、とつ、と歩き、首に差し掛かれば重力の異能を使い、飛び降りるもまるで綿毛のように体重を感じさせない様子で首の根元に踵をつける。そこに降り立つまで空間の重力が薄くなったのを感じるだろう。

ーーー @HaKo_723

@c_yu_n サクマ】彼が背を鉄骨につけたままであるならその正面に背中を見せるようにして降り立つ。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】ふわりと、羽根のようにかるがると飛び降りてきた影をみる。くっきりした影だ、と認識しながら、その相手が同じ平面上に立つまでを目で追いかける。後ろ姿。…まだ、相手が誰かを、とっさに認識は、しない。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】ひんやりした風が、ひとすじ、すうっと吹き抜けていったように感じる。

ーーー @HaKo_723

@c_yu_n サクマ】鉄骨の上に立てば一度だけ振り返り見る。そこに誰かいるのだろうかと思って。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】後ろ姿の背格好。連想して浮かぶような知り合いの姿は特になく、着地した靴底のかたちのシルエットが、やけにはっきり目にうつる。ちら、とこちらを、無造作に見返った顔が灯りで照らされる。 「あ、」 座った状態から、見上げるようにしてぽつん、と声を零す。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】「三國佐久間、」 相手の顔を認識して、短く、呟くように言う。呼びかけというより、それは単なる呟きになる。

ーーー @HaKo_723

@c_yu_n サクマ】「・・・、てめえか」ふい、と首を戻してそのまま去るように前に進みゆく。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】「……、」 数拍見送ってしまってから、 「…ああ！待てよ、」 声をかける。しかしあまり気合いの入った声にはならない。よ、と鉄骨に手をついて、立ち上がる。相手は止まりはしないだろうから、立ち上がれば数歩、そのあとを追いかける。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】「なにしてんの、こんなとこで」 つけたして、背中にそう声を投げかける。

ーーー @HaKo_723

@c_yu_n サクマ】立ち止まる気配はないが、走れば追いつく速度だろう。「眺望」そう一言だけ答えよう。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】「ちょー…？　…なんて？」 咄嗟に単語が意味ある語に変換されない。足場も悪いし、あまり距離は詰めすぎないが、それでも淡々と、追いかけるには追いかける。

ーーー @HaKo_723

@c_yu_n サクマ】やはり歩みを止めることなく「・・・・」重力を操作し、歩いたままキリンの足を歩いて下りる。地面と平行に身体を傾け地面へ向かい歩く様はエッシャーのだまし絵のようで奇妙に見えるだろう。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】「うお、」鉄骨の端から、おかしな重力で下に歩いてゆく相手の背を見おろす。奇妙な光景だ、ちょっとたじろぐ。しばらくじっと、その光景を見ている。 「……、」 しかし、相手が地面に降りてまた歩きだせば、その後ろに自分も降りるだろう。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】前に回りこんでもいいと一瞬考えるが、あの相手に自分の空間移動を、面と向かって見せたことはまだないはずだ、だからやめておく。その腹づもりだけして、相手が地面に降り立つまで、柱を歩いて降りてゆく、重力の狂った不可思議な光景を見おろしている。

狭間 駿 @c_yu_n

狭間】（……んや、どうだったっけな…、…？） 見せたことがない、はずだ…とまで思って、記憶は明確に定かではなくて、見おろしながら僅かに考える。といって、直に見せているにしろいないにしろ、だいたい知られてはいるだろうとも思うのでどちらでもいいのだが。

ーーー @HaKo_723

@c_yu_n サクマ】地面に下りればコンテナの積まれた方向へ歩き出す。彼が空間移動の力を持っていることは知ってはいるうえ、あのクレーンの場所に居たのであればそれなりの異能を持ち合わせていることは想像できるだろう。けれど言及することもない。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】地面を歩きだしたその背後に音もなくスッと移動して、やはりあとをついてゆく。多少の距離は置いている。 「なあ、…なー、」 反応はないだろうとは思いながら、声をかける。少し考えて、 「…やっぱさ、海、好きなの？」 そう訊いてみる。

ーーー @HaKo_723

@c_yu_n サクマ】「ああ」言ってわずかに振り返る。歩みもゆったりとしたものになる。彼が突然地面に立っているのを驚く様子はない。

狭間 駿 @c_yu_n

@HaKo_723 狭間】相手の歩みが少し緩んだことに気付く。止まるなら自分も止まるし、それでも進むなら、こちらも同じ程度の歩速に緩める。 「ふうん、」 言う。驚かれている様子がないことに、特段の不思議は感じない。

ーーー @HaKo_723

@c_yu_n サクマ】つ、と立ち止まる。半身を彼に向けて少年の姿を横目に観察する。