国や王、皇帝の系譜や格式をめぐる継承、称号、正統性…に関する色々な話。
- gryphonjapan
- 79787
- 63
- 59
- 282
講談社から出た「興亡の世界史」のモンゴル編「モンゴル帝国と長いその後」では、第7章 が『「婿どの」たちのユーラシア』でした。 amazon.co.jp/dp/4062807092/ twitter.com/izumino/status…
2015-11-08 11:52:28遠く離れた中国だと易姓革命の思想があるので血統主義はゆるくてナポレオンがやりたかったことに近かったのに対して、地理的に近い、モンゴル帝国由来の各国ではチンギス血統主義が非常に強かった(ティムールが王ではなく王婿なのもそのため)、というのも権威の在り方を示す話として面白い
2015-11-08 11:28:19そろそろ終わらせるために、西洋以外も。 中国の皇帝は、@izumino さんも仰る、孟子が思想的裏づけまでした易姓革命思想がある訳で、基本世襲なのに「皇帝は人民の意志による」という思想が強固なのだよね。「万世一系の日本には、孟子を積んだ船が行くと沈む」とのデマとんだり。
2015-11-08 12:13:49@gryphonjapan 細かい違いですが、中国皇帝は人民の意志ではなく「天命」が建前ですね(笑)。その点ではヨーロッパの王権神授説に近くて、毛沢東も「中国人民は自分たちの力で支配者をなんとかできるという発想が薄くて困る」みたいな、やる気のない国民性に悩んでたらしいですし
2015-11-08 12:21:02まー、そうですよね。そのへんは、孟子と弟子のやり取りの 「天命ってどう聞くんですか」 「そりゃ人民が喜ぶかだよ」 っていうくだりを拡大解釈する感じでしたかね。 (※これは逆に「最後に人民をきちんと統治できれば反逆OK」つうことにもなるんですが) @izumino
2015-11-08 12:30:12山本七平が「なのになぜか『投票』の概念がない。もしこの易姓革命思想を「投票」で確認するという発想があれば東洋で民主主義は完成されたかもしれないのに、まったく文明の型とはおもしろいものだ」と語っていたっけ。
2015-11-08 12:15:07@gryphonjapan 実際は「一番偉い人が変わるのは大局的にはよくあることだし(道家思想っぽい循環構造を持った歴史認識)、権力争いはおかみで勝手にやってくれ」感が強いのだという話を読んだことがあります
2015-11-08 12:34:05そしてモンゴル。 たしか「遊牧民は草原で家畜を食わせるため、リーダーの判断がすべてを握る。だから、農耕民族とちがい実力主義で、血統はあまり気にしない」という話を聞いてさもあろうと思ってたけど、その実いったんモンゴル帝国ができたら、チンギスカンの血統ってめちゃ重視なのよね。 なぜ?
2015-11-08 12:18:42今回のまとめ togetter.com/li/897309 たいへんご好評いただいておりありがとうございます。 (おそらく最後の)補足追加として、最初のまとめ時にはちょっとだけ触れている「興亡の世界史」モンゴル編の一章、「『婿どの』たちのユーラシア」から一部を紹介。
2015-11-09 20:23:331:「時空をこえるチンギス・カン家の血の神聖、そしてその記憶」っていう見出しだけでワクワクしない? その家系は「アルタン・ウルク」(黄金の一族)と呼ばれ、少なくとも内陸アジア、中央ユーラシアにおいて支配者の正統性はここに由来した。 pic.twitter.com/o7G621SGr4
2015-11-09 20:27:202:アジアを稲妻の如く駆け抜けたティムールとその王国。 要約 「彼はモンゴル王子のソルガトミシュという人物を名目上のカンの位につけた。 その上で、自らは直接の主筋に当たるチャガタイ家のサライという王女をめとった。その結果、ティムールはチンギスカン家の「キュレゲン」(婿)となった」
2015-11-09 20:31:003:ティムールの正式な自称は 「アミール・ティムール・キュレゲン」。 アミールはアラビア語、ペルシャ語由来で、「長」。イスラムの用語でもある。 確か覚えてるぞ、後ウマイヤ王朝は当初、アッバース朝の「カリフ」を認める気もないが、全面対立も避けたいと思って?この称号だったはず。
2015-11-09 20:33:474:「ティムール帝国最後の君主であったバーブルによって樹立されたいわゆるムガル帝国は、いわば第二次ティムール帝国…ムガル帝国治下においてもなお、モンゴル帝国とチンギス血統への尊重、顧慮が消えうせることなく息づいていた…支配者となるものは、時空を貫く高貴なる血でなければならない」
2015-11-09 20:38:52さらにロシアと満洲
5:【ロシア】要約 「イヴァン三世は強力な君主だったが、なおモンゴルの「宗主権」を認めざるをえなかった…局面を一挙にしてくつがえしたのが雷帝の名でも知られるイヴァン4世。 ところが、自身が…彼の母は、かつてのジョチ・ウルスの直系…妻もジョチの名家。モンゴル側からみれば「婿」。
2015-11-09 20:44:28イヴァン4世はモンゴル嫡流のシメオンを名目的な君主としていただき、その権威のもとで実権者として辣腕を振るおうとしたのである。 シメオンは翌年に退位させられたあとも権威と影響力を持ち続け、イヴァン四世没後、シメオンの復活を怖れるものは彼を強制引退させ、さらに盲目にしたという。
2015-11-09 20:46:597:【満州、清】 清の正統性や由来は複数の線があって、 明を滅ぼし取って代わる(明は火徳の王朝で、それを倒す水の王朝だからサンズイの「清」「満洲」(サンズイつきが正式の字))つう話もあれば、 「明を滅ぼしたけしからぬ盗賊・李自成を討ってさしあげましたぞ」史観も(笑) だが…
2015-11-09 20:52:498:満洲のこの王朝は、中華帝国の系譜でなく、モンゴル経由の正統性も受け継いでいたらしい。まあ、とくに初期にはこっちのほうが重要かもね… 画像の、赤で囲んだ部分に注目。やっぱり「はんこお願いします」か… pic.twitter.com/6RvqfHpGTb
2015-11-09 20:54:27新井白石と「日本国王」(対朝鮮通信使外交)の謎
最後に、「日本国王」を巡る称号の議論で。 朝鮮通信史との外交の中で、新井白石が将軍を「日本国王」と名乗るようにした、という話は結構有名だが、実質的な主権者と考えた、等の説に対し 【清国皇帝⇒朝鮮国王を封ず】=【日本国天皇⇒将軍(日本国王)を封ず】 で対等化したという説(続く)
2015-11-09 21:01:44(続く) という説があるみたいなんだけど、どこまで有力な説なのかね? 宮崎道生氏の説らしいんだが。 (画像は、その説を紹介する井沢元彦氏の「逆説の日本史」より。井沢氏はさらに新説を主張している) pic.twitter.com/3ZE6dZFmKO
2015-11-09 21:03:33一人の多くに、たくさんの称号が捧げられる話
あと、最後に称号の話だけメモっておきたいけど、 カエサル(シーザー)のカイザー、ツアーリなどへの変換も面白いし、 「ハーン」称号の拡大も面白い。 あと、自分が興味あるのは「諸王の王」という、たしかアケメネス朝ペルシャ?あたりからの称号も、みんな受け継いでいるのよね。(続く)
2015-11-08 12:23:18「諸王の王」っていうのはひとつの古い表現だから受け継いだのか、実際に広い領土をたったひとりで統治するなんて無理があるだろうから(それをやったから秦はすげー)、実態に即した称号だったのか、 それとも「俺は偉いんだぞ」と称するときの発想は、どこでも似かよるのか(笑)
2015-11-08 12:32:33あと個人的には、偉い人、特にドンドン勢力を拡大した人が、ひとつの権威に集中させるんじゃなくて、どんどん権威や称号を「重複」させていく現象が個人的には好きっス。 イギリス女王はインド皇帝を兼ねたので、そこで「皇帝(皇女)」を名乗る資格を得た、的な。(続く)
2015-11-08 12:34:22