日本甲状腺学会雑誌への寄稿「甲状腺癌と超音波」から始まった議論:30年前、日本は21世紀の韓国にならずにすんだけれど・・・
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includes surgery which can cause permanent damage to thyroid function and to the nerves that control speaking and breathing.
2017-03-14 11:06:11(↑上の2ツイートで引用されている英文は、下のページにリンクされている"Screening for Thyroid Cancer: Consumer Guide"というPDFファイル
https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/Home/GetFileByID/2883
の2ページ目の1番上の2行で、"Potential Benefits and Harms of Screening for Thyroid Cancer"=「甲状腺癌スクリーニングにより生じうる利益と害」というセクションの最終文に相当します。英文の意味は「過剰診断の結果これらの癌の不必要な治療が行われ、これにより害が生じる可能性がある。治療は一般に手術を含むが、手術は甲状腺の機能や発声・呼吸を制御する神経に永久的な損傷を与える可能性がある」ということです↓)
推奨グレード D です。 twitter.com/kimitakatajimi…
2017-03-14 11:09:22甲状腺癌スクリーニング bit.ly/2mlAnsF 過剰診断 can result in unnecessary treatment of these tumors, which can cause harm. Treatment typically
2017-03-14 11:06:00(↑甲状腺スクリーニングが推奨グレードD=非推奨とされるのはあくまで無症状の一般成人の話で、現在無症状でも甲状腺癌のリスクが高い人については話が別だということが、上で引用したガイドライン案の公表ページの"Draft Recommendation Statement"
https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/Page/Document/draft-recommendation-statement169/thyroid-cancer-screening1
のサブセクション"Patient Population Under Consideration"に明記されています。
甲状腺癌のリスクを増大させる要因として、サブセクション"Assessment of Risk"では子供のころの頭頸部への放射線照射(医療目的)、放射性降下物への被曝、家族に甲状腺疾患または甲状腺癌の患者がいること、甲状腺癌のリスクを増大させる遺伝的素因があること(家族性髄様癌など)があげられています。また甲状腺癌にかかったものの根治療法(甲状腺全摘と放射性ヨウ素内服療法のセット)を行わず部分切除だけにとどめた場合は、定期的な甲状腺スクリーニングを行えば再発を早期発見できる利益があります)
来月、公開予定の U.S. Preventive Services による「甲状腺癌スクリーニングのガイダンス」の草案。 「無症候性の患者に対するスクリーニングは、"過剰診断"と"治療による害"をもたらす可能性がある」との結論。 twitter.com/PriamalFear/st…
2017-04-01 10:16:09Draft Evidence Review for Thyroid Cancer: Screening uspreventiveservicestaskforce.org/Page/Document/… U.S. Preventive Services Task Force
2017-04-01 09:15:48とりあえず、要旨のconclusionに目を通してみるといいんじゃないかな。甲状腺エコーは甲状腺癌を見つけるのに有効だけど、それが死亡率を下げるとか健康を向上させるというわけではなさそうだし、一方で過剰診断による害はあるよ、みたいな感じ twitter.com/priamalfear/st…
2017-04-01 11:29:21上のツイートはDraft Evidence Reviewファイル
https://www.uspreventiveservicestaskforce.org/Home/GetFileByID/2873
(推奨グレードを決めるための根拠=エビデンスとして利用した論文をあげて内容を簡単に紹介し根拠としての質の高低を評価したもので、全部で124ページもあります)
のp.3-4に掲載されているアブストラクトの結論部分の話です。
Conclusions: Although ultrasonography of the neck using high-risk sonographic characteristics plus followup cytology from fine needle aspiration can reasonably identify thyroid cancers, it is unclear if population-based or targeted screening can decrease mortality or improve important patient health outcomes. More importantly, screening results in the identification indolent thyroid cancers, and treatment of these overdiagnosed cancers can pose real patient harms.
頸部の超音波検査とその後の穿刺細胞診により適度に(reasonably)甲状腺癌を発見することができるが、集団全体を対象とするもの(population-based)であれ対象を絞ったもの(targeted)であれスクリーニングで死亡率が減少したり健康状態が改善されたりしうるかどうかは明らかにされていない。さらに重要なことに、スクリーニングの結果進行の遅い(indolent)甲状腺癌が発見されることになり、こうした過剰診断の癌を治療すると患者に真の害が及ぶ可能性がある。
2017年5月に入って米国予防医学専門委員会(USPSTF)の甲状腺スクリーニングガイドラインが正式に確定し、JAMAに論文として公表されました
そういえば甲状腺癌スクリーニングに関して今号のJAMAで米国予防医学専門委員会(USPSTF)の推奨ステートメントが。曰く「無症状者への甲状腺検診は有害性が有益性を上回るので行うべきでない(推奨度:D、確実性:中等度)」 /JAMA jamanetwork.com/journals/jama/…
2017-05-10 10:53:45(↑上のツイートに引用されたリンクをクリックして掲載雑誌JAMAの論文ホームページにアクセスし、無料のユーザー登録をすれば論文ファイルを無料でダウンロードできます)
本文を見てもらえればわかりますが、甲状腺マススクリーニングで生検や手術の侵襲・合併症リスクや術後甲状腺機能低下症・唾液分泌障害などが増える割に甲状腺死亡自体はあまり減らないので、「本来は放置しても問題ないものを掘り起こすだけで有害無益の可能性が高いので、検診はむしろマイナス」
2017-05-10 11:03:37低線量被曝がある人へのマススクリーニングは論文がかなり少ない。前述のエビデンスレポートの引用文献22(アメリカ)と23(イスラエル)が関連論文らしいが、いずれも1980年代の古い観察研究の論文で本文が読めない(>_<)。
2017-05-10 11:14:00ツイッター民、医療者も非医療者も猫も杓子も甲状腺マススクリーニングの話題が大好きな印象だけど、このUSPSTFの論文の話をしてる人あまりいないな。
2017-05-10 11:15:23@m0370 JAMA OtolaryngologyにもEditorialがでてたので誰か解説してくれないかなと気になっておりました。勉強になります、ありがとうございます。
2017-05-10 12:11:53その後韓国では甲状腺癌が国民がかかる癌の第3位に後退
(HANKYOREH)韓国国民が最も多くかかるたがんとして、胃がんが再び第1位の座に復帰した。2009年からずっと頻度の高いがん1位だった甲状腺がんは、過剰検診の議論の後に大幅に減り、3位に下がった。 → japan.hani.co.kr/arti/politics/…
2017-12-22 21:43:23「5年生存率が最も高いがんは甲状腺がんで100.3%を記録し、続いて前立腺がん(94.1%)、乳がん(92.3%)の順だった。100%より高く出るのは、がんにかかっていない同じ年代の5年生存率よりむしろ高いという意味だ。酒・タバコなどを断ち健康に気に配った結果、むしろ生存率が高まった」 twitter.com/hayano/status/…
2017-12-22 21:51:26「甲状腺穿刺吸引生検をすればするほど、甲状腺癌の診断数が増加する。」という韓国からの報告(2017年2月)。 →Thyroid fine-needle aspiration biopsy positively correlates with increased diagnosis of thyroid cancer in South Korean patients. - PubMed - NCBI ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28173779
2017-12-24 09:53:06この論文は、2003-2013年の韓国内での国民健康保険の医療費データ(2002年に全国から無作為抽出された保険加入者1,025,340人分)の追跡調査をもとに、行政区(Si-Gun-Gu; city-county-ward)別の人口10万人あたり穿刺細胞診実施件数と人口10万人あたり甲状腺癌の新規診断例数の間に正の相関関係があることを示したものです。韓国の成人における甲状腺癌の診断件数は2012年に頂点に達しましたが、国民健康保険の医療費データからみた新規患者数(手術費用の補助を受けるための申請件数で見たもの)はここから減少に転じて2015年にはすでにピーク時の約半分に低下しています。従ってこの論文の研究対象となっていたのは、まさに韓国の甲状腺癌の診断件数が増加の一途をたどっていた時期といえます。
韓国の成人の甲状腺癌が減少に転じた背景には、2014年に一流医学雑誌New England Journal of Medicineに超音波検診による過剰診断を警告する論文
Ahn HS, Kim HJ, Welch HG.
Korea's Thyroid-Cancer “Epidemic” — Screening and Overdiagnosis
N Engl J Med 2014; 371:1765-1767
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp1409841
(ここでは1993-2011年のデータを分析。ラストオーサーのWelchは2010年に過剰診断の問題をはじめて論文で取り上げ、その後過剰診断に関する書籍を出版)
が掲載されたことを契機に、医師と患者双方の理解が進んだことが挙げられます。