セカチュウを受け取り損なってしまった。物語の奇跡に出会えなかったわけだ。

物語って奇跡のことだから、一生かかっても書けるものではない。だからみんな物語の終焉というのだ。私が、当時、セカチュウを観なかったのは、同年のドラマ『彼女が死んじゃった。』にハマり過ぎたからだ。私はドラマは、音楽が良いと、繰り返しリピートで観てしまう。映像喚起的というより、物語が音楽を喚起するからだろう。しかし、『世界の中心で、愛をさけぶ』(原題『恋するソクラテス』)は、より音楽的だった。2004年から12年もたってやっと一昨日、初めて観たのだが、それは物語の一つの奇跡だったのだ。 形あるものの歌という禅問答に、傘で応答し、送れなかったお爺ちゃんが送られていくためだけに、彼女は物語から退場させられる。そして弔辞ではなく、最後の禅問答がソラノウタとして書かれたのに、それを17年受け取り損なう物語。このように、奇跡は必ず誤配されてしまう。まるで脱構築の魔法が解けるように。 続きを読む
3
前へ 1 2 ・・ 8 次へ
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

そして、彼女を物語に投げ込み、17年後彼を物語行為に投げ返す、古典の先生が時を神の視点で見つめてるのよね。いったい、どんな神が死んだというのやら、と思いながら、つい泣きじゃくってしまうドラマなのだが。

2015-11-26 22:17:07
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

中上健次では、宿業とは、結ばれたタブーの宿業で、おリュウのおばがそれを神の視点で物語るのだけれど、セカチュウの祖父の物語の転移は、結ばれない、つまりイノセントが、物語を輪廻させる呪縛になっていて、それを解くのが古典の先生の時の視点になっているのが面白い。

2015-11-26 22:29:23
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

おリュウのおばの神的視点は、タブーの宿業への投げ入れだが、セカチュウの古典の先生の時の視点は、人間の宿業をイノセント、つまり儚さと切なさに投げ返している、というように感じてしまう。

2015-11-26 22:35:16
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

セカチュウのお爺ちゃんの写真館の書棚に詰まった西欧文学では、宿業はタブーの輪廻を神の視点で語ってしまうが、それではイノセントな結ばれない、思いを遂げられない、本当の宿業が物語られることはなかったのだ。

2015-11-26 22:40:46
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

ドラマは物語が散漫だとロケ地が散逸して無理やり世界を捏造しようとするが、セカチュウは四国の田舎から世界の中心であるアボリジニの大地を思うわけだが、西伊豆のロケ地だけで世界が完結して根付いている。この紫陽花の丘にいってみたい。 pic.twitter.com/z6TQEobn61

2015-11-26 22:51:10
拡大
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

セカチュウ、やっと観終わった。掻き乱されて観続けられなかった。一気に観るにはヘビー過ぎた。しかし、ラストは、17年の執着が、骨(灰)という眼前存在への執着だったというシーン、なかなかだ。さ

2015-11-27 02:01:54
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

17年も彼女の灰を持ち続け、彼女の遺した手書きの絵本を受け取らなかった。そこにはこう書いてあった。「隣のあの子はどこにいったの? もう見えないよ。なぜならおまえの中ににいるからさ。おまえの脚はあの子の脚だ」。 pic.twitter.com/gAYGrc6rA2

2015-11-27 02:02:47
拡大
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

遺骨には私はもういないよ、私は君の心の中にいるんだよ、という彼女の手書きの絵本を、17年も受け取らずに、ずっと灰を小瓶に入れて眼の前に持ち続け過去に囚われていた主人公が、やっと絵本の最後のページを開き眼前存在者と化した灰を空に返すことができるラストだった。お爺ちゃんも罪作りだな。

2015-11-27 02:11:42
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

眼前存在とか世界と、やたらハイデガー読みの作家さんだね。しかもそれを禅問答と思っている。彼女が遺した、手描きの絵本は禅問答。それを17年たち、やっと持ち帰るシーンは、セカチュウ冒頭のシーンで、彼女が弔辞のかわりに自作の詩をよむ禅寺。 pic.twitter.com/P1mwYXPGwD

2015-11-27 02:32:22
拡大
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

彼女は冒頭から、禅問答のような詩人として登場していたのだ。そして17ぶりに受け取った彼女の手書きの詩集はソラノウタ、それを持ち帰るのが、骨という眼前存在者に執着したキッカケのお爺ちゃんの写真館。そこで彼女の骨を傍らにページを開く。 pic.twitter.com/ELfKnDOsO1

2015-11-27 02:40:10
拡大
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

「生きていくあなたへ」「もしも、おまえが枯葉って何の役に立つのってきいたなら」「私は答えるだろう。やんだ土を肥やすんだと」「お前はきく、冬はなぜ必要なの?」「すると、私は答えるだろう。新しい葉を生み出すためさ」

2015-11-27 02:46:30
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

「お前はきく、葉っぱはなんであんな緑なの」「そこで、私は答える。なぜって、やつらは命の力にあふれてるからだ」「お前はまたきく、夏が終わらなければいけないわけは」「私は答える、葉っぱどもがみんな死んでいけるようにさ」

2015-11-27 02:47:04
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

「お前は最後にきく、隣のあの子はどこにいったの?」「すると私は答えるだろう。もう見えないよ。なぜなら、お前の中にいるからさ。お前の脚はあの子の脚だ」 pic.twitter.com/QVoB87NmzQ

2015-11-27 02:47:31
拡大
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

そして、17年も目の前において執着してきた彼女の灰を、陸上部だった彼女のスタートラインから、風にのせて散骨する、といった感じのシーンがラスト。禅問答のような詩人の彼女が空(くう)にかえるという。 pic.twitter.com/ZHzBys4awg

2015-11-27 02:53:57
拡大
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

第一話で、彼女が詩人になるシーン。生物の先生の葬式で、生徒代表で、こう弔辞を述べて、さっきの詩の前半を読み上げている時に、スコールが降ってきて、主人公が傘をさして振り返るのが、禅問答への応答になっているのだが、その前口上は~ pic.twitter.com/T6fjkwiV7M

2015-11-27 03:18:03
拡大
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

「生命の誕生、植物を育てる意味、食物連鎖の仕組み、生物の授業を通し、この世に存在するものに、何一つ無駄なものはないと、教えていただたような気がします。言葉がありません。私にはこの気持を伝える言葉ありません。だから今日は、先生に詩を送りたいと思います。」と前口上をして

2015-11-27 03:19:09
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

そして、彼女が遺書として遺したソラノウタの前半の禅問答、つまり形あるものの歌の「お前はきく、冬はなぜあるのだろう」と朗読した瞬間に、傘を差し伸べた主人公を振り返る。それが形あるものの歌から、ソラノウタになる物語。シナリオうますぎ。 pic.twitter.com/G8i1mtsUjU

2015-11-27 03:24:57
拡大
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

セカチュウ。彼女の「形あるものの歌」に応答した主人公が、彼女の骨(灰)を17年も眼の前に置き続け「ソラノウタ」を受取り損なう物語というわけだ。久々に見応えがあるドラマだった。10年前にブームになったわけだ。私が掻き乱されたからな。hulu.jp/crying-out-lov…

2015-11-27 03:45:56
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

セカチュウ特別編という後日談もあるのね。今度みるが。本編は主人公が一人称ナレーションするのだが、後日談は、古典の先生 twitter.com/sunamajiri/sta… が17年間卒業できなかった二人の生徒のためにナレーターになるのね。hulu.jp/watch/857584

2015-11-27 03:57:53
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

お爺ちゃんは文学書に囲まれて写真館を営んでいたが、男子は灰に気を取られているが、壁に貼ってあった結ばれなかった彼女の写真の裏にある詩に気づくのも彼女、それを図書室で担任の古典の先生が、物語にして聴かせるのよね。 pic.twitter.com/Ww9eRntIMe

2015-11-26 20:33:51
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

ところで、セカチュウは西伊豆の松崎がロケ地だが、彼女が抗癌剤を打ち切られ、病院を脱走してオーストラリアにいこうと、痛々しい姿で上る駅の階段は伊豆長岡駅がロケ地だそうだ。loca.ash.jp/cgi/search_rou…

2015-11-27 04:07:05
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

それにしても、「形あるものの歌」という禅問答に、つい応答してしまったら、ソラノウタを受け取り損なって、生命を眼前存在者と執着し続ける、というセカチュウ、これ当分、尾を引くな。まあ、ハイデガー読んでるから大丈夫だが(^-^)/ twitter.com/sunamajiri/sta…

2015-11-27 04:11:41
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

2004年に観てた口? 私当時からテレビはあまりみてなかったのと、ブームと言われると観たくなくなるというのがあったのだが、今回はHULUで海外ドラマに食傷になり、レンタルより通しで観れて厭離だから和ドラマを観始めた、というだけだけどね。@08child

2015-11-27 06:03:42
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

というより、2004年は『彼女が死んじゃった。』にはまっていて、他のドラマ眼中になったというのが、あったのを思い出した。みんなセカチュウというのに、ヒットしなかった『彼女が死んじゃった。』にはまっていた。音楽的ループ再生状態。湘南だったし。@08child

2015-11-27 06:05:51
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

映画版を観たってこと? どうも日本のドラマは映画化されると、色あせて見えることがあって苦手なことがあるのだが。@08child ドラマは独自の展開らしいですね

2015-11-27 06:24:21
大本薫 Kaoru Ohmoto @sunamajiri

私はどうしても物語の作為性を読む。特に当時は物語の終焉と刷り込まれていたから、なおさらメタフィクを読もうとしてしまう。なぜ不治の病を敢えて語るのか、とかね。twitter.com/sunamajiri/sta… 物語作家は、ある詩情を表現したい時、設定を色々模索するものだからだ。

2015-11-27 06:27:34
前へ 1 2 ・・ 8 次へ