「基準(ガイドライン)としての手術適応あり」と「実際の手術の有効性、緊急性」、「過剰診断」の関係
早期発見された癌は一般には手術適応だが、甲状腺癌では検査技術の進歩で生命に関わらなさそうな癌がみつかるようになり、経過観察の適応を検討するようになった。経過観察の適応は、万が一大きくなってもそれから手術すれば確実に治せると見込まれるかどうか。少しでも心配なものは最初から手術適応。
2015-12-21 23:19:38手術適応と経過観察の線引きは、過剰な治療を防ぐことよりも早期発見した癌を確実に治すことが優先されるので、手術適応側にずっと後まで手術する必要のないものが含まれる。全体的におとなしい性質のものが多い甲状腺癌ではその割合が高くなる。
2015-12-21 23:32:14経過観察を勧める条件は、1㎝以下、エコー所見でおとなしい顔をしている、リンパ節転移なし、被膜や気管に近接していない等で、一つでも欠くと手術適応だろう。線引きはクリアカットだが、今手術しなければ術式や予後などの結果に差が出るものの割合は、リスク因子の増加に従って徐々に高くなる。
2015-12-22 12:46:02リスク因子と手術適応、手術の必要性の関係を図にするとこんな感じ。手術の必要性というのは、すぐに手術するかどうかで結果にどの程度影響するか、或いは結果が変わるものの割合がどのくらいか。 pic.twitter.com/A03WijULWS
2015-12-23 00:18:43手術適応の検討で過剰な治療を防ぐには限界があるし、適応を変えるためのエビデンスの蓄積には時間もかかるので、高精度な検査法よる早期癌の見つけすぎには慎重に。
2015-12-23 23:28:00少し補足すると、一般的な癌の手術適応あり、無しの線引きは進行癌との間にあるのでこんな感じ。 pic.twitter.com/k2gEW5nciy
2015-12-24 07:37:58以前の図を少し補足すると、色をつけた部分が手術適応があるのに過剰診断やもっと後からの診断治療でも結果の変わらないものに相当。 pic.twitter.com/dgnXUMdKkm
2016-01-06 00:06:51それに対して、医療過誤のニュアンスを含む過剰治療は、一般的な手術適応から逸脱して治療を行なった場合で、図の左側の斜線部分に相当。(但し、癌であることは確かなので、ガイドラインから逸脱しているとまでは言えないし、インフォームドコンセントの結果の判断であれば手術しても問題ない)
2016-01-27 15:44:10以下の道草クー太郎さんのツイートがわかりやすい
医師がいくら優秀でも、神様でない限り挙動不詳の小さな小児甲状腺癌のどれが将来害をなし、どれが無害のまま推移するかなんて白か黒かに区分けできるわけがない。だから白か黒か分からない多くの「灰色」を手術適応にしている。潜在的な白が含まれるから灰色と言うんだ。
2016-03-19 19:02:23その癌の性質について豊かな知見蓄積があるほど「灰色」のものは少なくなる。小児甲状腺癌は知見が乏しい代表的な癌であるために「灰色」のものが多い。知見が乏しいのは発症者そのものが稀な存在だからだ。
2016-03-19 19:04:35発症者が稀なのに「手術適応」の者が大量に見つかったのは、黒か白か判断しかねる大量の灰色を見つけてしまったからだ。優秀な医師が正しく「灰色」と判断して手術適応になってるだけ。
2016-03-19 19:06:07癌発症を回避することを「優先すべき安全」と考え、安全サイドに立った判断下では、灰色に含まれる潜在的白は潜在的黒よりも多くなるはずだ。それが「安全サイド」の意味だから。(これは直感的には分かり難いかもしれないが、よく考えれば分かる)
2016-03-19 19:10:42経過観察推奨は白か黒か見極める余裕があるような、比較的リスクの小さそうな癌ですね。仮に終生経過観察するのなら見つけない方が絶対に良い(過剰診断典型)。医大が経過観察を推奨した例が2件ほどあったと思うが、被検査者の意向で手術に至った。
2016-03-19 19:20:51灰色という診断でもリスク(発症確率×発症した場合の被害の大きさとイメージされるもの)を考えて切らざるを得ないのだから、その限りにおいては正しい手術。同時に、確率の要素がある以上、そのなかには放置しても害をなさずに推移した癌もある。未知度が大きければその割合も大きい。
2016-03-19 19:54:20