「エグジステンス・プルーフ」
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#1
(これまでのあらすじ:鹿屋に着任した新任提督リカルドとその麾下吹雪は、舞鶴の古豪ザハ提督と共に沖ノ島への調査に赴いた。その途上、吹雪の船魂は暴走の兆候を見せ、余命幾ばくもないと宣告される。失意のまま沖ノ島に辿り着いた吹雪は、仲間を守り、凶弾に倒れてしまう……)
2016-02-10 18:45:51沖ノ島。九州本土から約60キロメートル離れた玄界灘の真っ只中に浮かぶ周囲4キロメートルの孤島。彼の島は「神の島」と呼ばれ、社が置かれ、人の出入りが制限される神域とされてきた。だが、十数年前に出現した深海棲艦達は、この地を制圧した後、日本への攻撃前線基地へと“改造”した。 1
2016-02-10 18:49:57その後、現在は宿毛湾泊地に籍を置く英雄の活躍によって解放されるまで、彼の島は深海棲艦達の巣窟として、踏み荒らされ、破壊された。沖ノ島への定期的な調査は、深海棲艦攻略の鍵を得る為と再び深海棲艦にこの地を征服させない為の警邏という二つの側面がある。 2
2016-02-10 18:53:30「……」リカルドと3人の調査員は更地となった沖ノ島を進む。荒涼とした景色だ。草木は一本たりとも生えておらず、ぽつぽつと深海棲艦達が持ち込んだであろう壊れた建材が野晒にされているばかり。「不気味だな」そう呟くリカルドの脳裏に過るのは、故郷ロックラックと大砂漠。 3
2016-02-10 18:56:45だが、脳裏に過る光景とは決定的に違うのは、この地には生命の気配が全く感じ取れないと言う事だ。大砂漠には大砂漠に適応した生物が生息していた。だが、この島はどうだ?嘗ては豊かな森であったはず山は、今はただの砂利の塊だ。風化し、消え去るのも時間の問題だろう。 4
2016-02-10 19:00:03「成程」リカルドは納得し、頷いた。「確かに閑職だ。何も無い」「……ん?」一人の調査員が何かに気付いた。リカルドが振り向く。「どうした」「いや、あそこなんですけど」調査員が指差す。その方向に視線を向ければ、洞窟があった。何の変哲もない。「アレがどうした?」リカルドは問う。 5
2016-02-10 19:04:48「いえ、実は…」他の調査員達が機材を取り出し始める。「前回の調査で、あんな洞窟無かったんですよ」「ほう?」リカルドはもう一度洞窟を見た。人一人が通れそうな大きさの入り口だ。これを見逃すとは思えない。「前の調査で、あそこには何があった?」「岩壁です」地図を持った調査員が答える。 6
2016-02-10 19:08:55「あの場所だけ崩落したのでしょうか?」カメラを構えた調査員が呟く。「どうだかなぁ…ともあれ、調べておかないとな」「勿論です」最初に洞窟を発見した調査員は懐中電灯の電源を確認し、答えた。4人は大規模な崩落の危険性を考え、慎重に接近。その時。リーン…リーン…「何だ?」「鈴の音?」 7
2016-02-10 19:18:17リーン……リーン……鈴の音を思わせる涼やかな音が、4人の耳に入る。リカルドのハンター聴覚は、その音が洞窟から聞こえてくるのを突き止めた。「何だ…」「誰か居るのか…?」懐中電灯を持った調査員が、護身用の拳銃を抜いた。セツナ、CLAAASH!CLAAASH!鈴の音は破滅的に変貌! 8
2016-02-10 19:23:28CLAAASH!CLAAASH!「グワーッ!?」突如銃を取り落し、調査員の一人が頭を抱えた!「どうした!?」「グワーッ!あ、頭が!頭が割れる!」調査員の目鼻から夥しい量の血が流れだす!「グワーッ!アバーッ!」「何だ、攻撃か!?」地図を持った調査員も銃を抜いた。CLAAASH! 9
2016-02-10 19:27:32「アバーッ!?」おお、ナムサン!この調査員もまた銃を取り落し、頭を抱える!「い、痛い!?頭が割れちまう!アバーッ!」「あ、アイエエエエ…」カメラを持った調査員も銃を抜こうとするが、リカルドがそれを制する。「おい、待て」「えっ、ですが」「銃を抜くのは、何か拙い」 10
2016-02-10 19:30:40「グワーッ!」「グワーッ!」二人の調査員が転げまわり悶絶する。リカルドは無事な調査員の怯えた目を見て言った。「この二人が倒れて、俺達が無事なのは何故だ?」「それは…」彼は己が抜きかけた拳銃を見、ハッとした。「まさか、銃を抜いたから?」「もしくは攻撃の意志を見せたから、かだ」 11
2016-02-10 19:34:19「お前さん、この二人を連れて船に戻れ」「リカルド提督は?」「俺の任務はお前さん等の護衛だ」リカルドは洞窟を睨む。「原因を探してくる」「…お気を付けて」「お前さんもな」調査員は素早く状況判断し、蹲る二人を起こし、船へと歩き出した。リカルドは洞窟目掛け走り出す。リーン…リーン… 12
2016-02-10 19:38:36鈴の音は元の涼やかな音に戻っていた。リカルドは支給された懐中電灯のスイッチを入れ、洞窟内を照らす。奥に続く道が見えた。「思ったより深いな…」リカルドは左手で腰に佩いた軍刀を叩いた。これは彼の持ち物ではない。調査に赴く前に、ザハから渡されたものだ。 13
2016-02-10 19:41:13曰く、さる高名な陰陽師によって清められた鉄を刃の形に加工したもの。だが、所詮は人の道具。深海棲艦の装甲に擦過傷を残すのが精々であるとも。「まぁ、深海棲艦じゃねぇことを祈るしかねぇな」リカルドはそう呟き、闇の中へ歩を進める。纏う蒼黒の鎧が闇に解ける。 14
2016-02-10 19:45:30リーン…リーン…リーン…リーン…鈴の音と砂利を踏みしめる音だけが闇の中で響く。リカルドは歩き続ける。有害ガスなどを警戒したが、その兆候はない。リーン…リーン…リーン…リーン…やがて、リカルドは開けた場所に出た。懐中電灯で周囲を照らせば、ドーム状になっているのが見て取れた。 15
2016-02-10 19:48:56「なんだこりゃ」リカルドはくまなく灯りを巡らせる。深海棲艦が持ち込んだと思わしきものは何一つない。だが、それにしては岩肌から人工的に削り取った痕跡が感じ取れる。「建設しようとして放棄したか?それなら別の入り口が…」リカルドは正面に灯りを向ける。人影が見えた。「あン?」 16
2016-02-10 19:52:01リカルドはカラテ警戒し歩み寄る。「コイツは……」それは、黒い服を着た白骨死体であった。服は所々虫に食われており、ともすれば襤褸布めいていた。果たしてどれ程昔に死んだのだろうか?リカルドは学んだ作法に従い、両手を合わせ、祈った。「ナムアミダブツ…」『ヤメヨ』 17
2016-02-10 19:56:38リカルドは咄嗟に跳び下がった。『イヤーッ!』おぉ見よ!決して動かぬはずの白骨死体がチョップ突きを繰り出してきたではないか!コワイ!「何だ、こりゃあ…ッ!」リカルドは一筋冷や汗をかいた。「もしやオバケとか言うんじゃねぇだろうな」『否』力強い否定の声。白骨死体が立ち上がった。 18
2016-02-10 19:59:14『私ハ死体デハナイ』「じゃあ何だってんだよ」リカルドはカラテを構え、問うた。白骨死体は眼球の無い顔でリカルドを見、言った。『私ハ、提督ダ』 19
2016-02-10 20:01:28「吹雪!おい、吹雪!」隼鷹が倒れ伏した吹雪の肩を揺する。吹雪は目覚めない。抉られた左脇腹から止めどなく血が流れる。「クソ…完全に気絶してる!」「どうすんのよ!」飛鷹が悲鳴を上げた。彼女ら以外の艦娘は敵の迎撃に向かった。「兎に角止血しないと!」隼鷹は己のハカマを裂いた。 21
2016-02-10 20:04:39右脚のハカマ布の殆どを使い、隼鷹は吹雪の吹雪に圧迫するように巻き付けた。「これでちったぁマシになるだろ…飛鷹!」「分かってる!今の内にその子を!」「ありがてぇ!」隼鷹は吹雪を抱きかかえ、「よほろ」の出撃ハッチ目掛け駆けだす!そして「よほろ」から離れた洋上では!「イヤーッ!」 22
2016-02-10 20:09:14