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2016年3月9日

江戸時代の来日外国人の文献に見る日本

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武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

ちょっとある文献を引用する。「(外国人に)少しでも敬意や友情を持っていそうな日本人は、概して道徳と真の愛国心に欠ける者と見なされる。この法則は以下の原理に基づいたものである。(続く)

2016-03-02 00:10:11
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

(引用続き)「すなわち、外国人に少しでも好意を示すことは、国益を完全に損ない、主君の意向に背き、さらには宗教的な信条に照らしても神の至高の意志とみずからの良心の導きにも反している、というものだ。

2016-03-02 00:11:08
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

(引用続き)「しかも彼らはこの誤った推論をさらに推し進め、外国人の友は必然的に国家の敵であり、主君への反逆者だと決めつけるのである。」これはケンペル『日本誌』における、鎖国下の日本人を批判した一節。冒頭だけ、原文で「オランダ人」となっていたのを「外国人」に改変した。

2016-03-02 00:14:39
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

ケンペルは江戸時代に医師として来日し、日本に2年ほど滞在、将軍綱吉にも謁見して西洋のダンスを披露したというが、その主著『日本誌』が刊行されたのは1727年のこと。没後にドイツ語で書かれた草稿を英訳したものが最初に出版された。

2016-03-02 00:18:44
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

しかし先ほど引用した一節、現在の外国の新聞に掲載された社説だと言われても、うっかり信じてしまいそうだ。やはり精神的な鎖国が復活しているらしい。

2016-03-02 00:25:00
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

1744年にイギリスで出版された日本を紹介する文章を読んだら、日本の呼称のひとつとして"Sin Kokf, and Camino Cuni, or the Abode of the Gods"が紹介されていた。「神の国」って言い方は江戸時代にもあったのね。

2016-03-05 02:50:18
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

そして「神の国」など日本人が自国を呼ぶ「派手な」(pompous)名称を皮肉っぽく紹介しているのが、かつて台湾出身の日本人のフリをして贋の『台湾誌』を書いたサルマナザールであるらしい。匿名記事だが、台湾の記述箇所で「サルマナザール」の虚偽について弁明しているので推測可能。

2016-03-05 02:54:03
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

一代で卑しい身分から国王に上りつめた男が、一子フィデーリの後見を寵臣オンゴスキオに託して逝去する。しかしオンゴスキオは秘かに王位簒奪の機会を窺っており、不当な言いがかりによってフィデーリを弾劾し、その壮麗な城を包囲する。炎上する城と共に儚くも滅びるフィデーリの一族。(続く)

2016-03-06 23:29:59
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

(続き)イタリアかスペインを舞台にした悲劇のようだが、これはれっきとした日本史の一場面である。フィデーリ(Fideri)は豊臣秀頼、オンゴスキオ(Ongoschio)は徳川家康のことだ。17世紀後半にイギリスで刊行された日本関連の文献では、しばしばこういう表記がみられる。(続く)

2016-03-06 23:33:36
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

なぜFideriが秀頼なのか?これは当時の日本でハ行の音が語頭に来るとファ、フィ、フ、フェ、フォと発音していたためと、おそらく「ヨ」の音が弱くて聞き取れなかったからだろう。問題は「オンゴスキオ」(OngoschioあるいはOngosschio)だが、なぜこれが家康なのか?(続く)

2016-03-06 23:44:33
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

まずOngoschioの読みを考えると、この時代g音には鼻濁音が用いられていたこと、"schio"は"sschio"とも書かれていることから「ショ」と発音すると推測すれば、現代の発音で「オゴショ」、「オーゴショ」と読むことが分かる。(続く)

2016-03-06 23:50:38
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

大御所、すなわち秀忠に将軍職を譲った後の家康への尊称が、あたかも固有名詞のように扱われていたのだ。同じように秀吉はしばしばTayko, Taicosamaと呼ばれる。ちなみに信長はNobunanga。これも鼻濁音のためだが、よりワイルドさが増している気がする。(連投終わり)

2016-03-06 23:55:35
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

(ちょっと訂正)語中のガ行の鼻濁音は、現代でも「正しい」発音のひとつとされていますね。さっきの説明を補足・訂正すると、OngoschioやNobunangaのngはガ行の鼻濁音を表記したもので、カタカナでは「オーゴショ」や「ノブナガ」になる、ということです。

2016-03-07 01:00:02
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

昨日ご紹介したフィデーリとオンゴスキオの物語ですが、François CaronのA True Description of the Mighty Kingdom of Japan and Siam (1663)の32-34ページに載っています。(続く)

2016-03-08 13:32:23
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

Caronはブリュッセル生まれですがオランダに亡命し、オランダ東インド会社で働きました。船のコックの手伝いから初めて日本のオランダ商館長にまで出世した人物。22年ほど日本に滞在し、日本人と結婚しています。将軍家光に献上した銅製の灯籠が、いまも日光東照宮にあるそうです。

2016-03-08 14:03:53
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

なお、カロンの日本に関する著作は最初オランダ語で発表されているので、先ほど名前を挙げた本は英訳版です。日本滞在が長く、日本語に堪能だった彼の記録は、ケンペルの『日本誌』(1727)でも高い評価を受けています。(続く)

2016-03-08 14:10:36
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

カロンの記録では将軍家光が"Sodomy"(原文ママ)に入れあげて女性に興味を示さず、周囲が困惑したことも紹介されています。他には切腹の作法、殉死の習慣やキリシタンへの拷問も詳しく語られています。

2016-03-08 14:32:02
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

カロンは日本を離れた後もアジアで活躍しますが、後にフランスが新設した東インド会社の長官に引き抜かれ、オランダから裏切り者と呼ばれることに。最後はヨーロッパに戻る途中、ポルトガル沖で船が沈没し、73歳で亡くなりました。

2016-03-08 14:33:59
りおかんぽす @riocampos

この章の終わりのほうに載ってました。英語も古いので読みづらい…。|A true description of the mighty kingdoms of Japan and Siam quod.lib.umich.edu/e/eebo/A34454.… twitter.com/swiftiana/stat…

2016-03-08 21:54:40
坂本葵 @aoi_skmt

もう、きのうからフィデーリ(秀頼)とオンゴスキオ(家康)のせいでごはんがおいしいです…! カロンの著作、日文研のサイトで原典読めるんですね。 shinku.nichibun.ac.jp/kichosho/new/b… pic.twitter.com/TWegYMCyku

2016-03-08 22:53:04
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武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

さらに補足。CaronのA True Description of the Mighty Kingdom of Japan and Siamですが、F. カロン『日本大王国志』(1967年刊、東洋文庫)というタイトルで日本語に訳されています。訳者の幸田成友は幸田露伴の弟です。

2016-03-09 00:05:36
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

カロン『日本大王国志』東洋文庫版の125ページにフィデーリとオンゴスキオの物語が登場しますが、当然ながら「秀頼」と「大御所」と訳されているので全くエキゾチックではありません。しかし訳者幸田氏によるカロンの生涯の解説は無駄を削ぎ落とした名文で、さすが露伴の弟と思わせます。

2016-03-09 00:11:35
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

フィデーリとオンゴスキオの悲劇は、昔の英語の本に出てくる日本人の名前が現代のローマ字表記とあまりに違うので、いっそ外国語風に読み替えたら面白いんじゃないか、というお遊びです。学問的な議論というより、息抜き程度に楽しんでもらえれば嬉しいです。(続く)

2016-03-09 12:22:19
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

みなさんの反応を拝見すると、シェイクスピアを思い出す方がいるようですが、オンゴスキオこと徳川家康とシェイクスピアは同じ年に亡くなっているので、(家康の方が年上ですが)同時代人といってよいでしょう。(続く)

2016-03-09 12:24:19
武田将明/Masaaki Takeda @swiftiana

それから、フィデーリという名の人物はシェイクスピアの晩年の作品『シンベリン』に登場します(ただしスペルはFidele)。(続く)

2016-03-09 12:25:08
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