再論・2013年8月8日夜の報道ステーションの特集でとりあげられた広島大・鎌田七男名誉教授の研究とその続報

例年6月初めに開催される原子爆弾後障害研究会で続報が発表されるのを待って情報を追加してから公開するつもりで準備していたまとめですが、あまりに情報が出てこないのでしびれを切らして公開に切り替えました。 第1報)鎌田七男、田代聡、木村昭郎、三原圭一郎、大瀧滋、星正治、川上秀史、神谷研二 「広島県内被爆者の子供数」 長崎医学会雑誌 85 (特集号), 300-303, 2010 続きを読む
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nao @parasite2006

このグラフpic.twitter.com/Irggzgboxv から見ると、広島の爆心地から2 km以内で直接被爆した人は遮蔽なしの場合全身に少なくとも100 mGy程度のγ線を浴びる一方、鎌田名誉教授の研究対象となった被爆二世の白血病患者の親の全身被爆量の上限は700 mGy近くか

2016-05-31 02:38:18
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nao @parasite2006

遮蔽なしのγ線の全身線量が100-700 mGyの範囲pic.twitter.com/Irggzgboxv なら、全身急性被爆の50%致死量より明らかに下です pic.twitter.com/4Db5283jwT

2016-05-31 02:51:59
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nao @parasite2006

とはいえ、(たとえ両親とも被爆線量の推定値がある被爆二世が全体の2.5%でも)1946年6月1日-1960年5月24日生まれの白血病二世55例(父親の被爆の影響あり)の父親と1960年5月25日-1973年12月31日生まれの23例の父親の被爆線量の範囲ぐらい示してよと言いたい

2016-05-31 03:03:46

(↑とはいっても上で計算した通り、2010年の時点で被爆二世の7人に一人しか父親の被曝線量の推定ができていない状況では、線量の大小に基づいた定量的な研究に持ち込むのはかなり難しそうです)

nao @parasite2006

広島原爆による被曝線量推定値(青四角が遮蔽なしの空気カーマ、一瞬の被曝量)pic.twitter.com/Irggzgboxv と福島県民健康調査の外部被曝線量推定値(3/11-7/11の4ヶ月分)の最新結果(最大値25mSvpref.fukushima.lg.jp/uploaded/attac… の差は歴然

2016-05-31 03:29:51
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(理由の考察)

nao @parasite2006

2013年8月8日夜の報ステが伝えた広島大・鎌田七男名誉教授の研究togetter.com/li/549170 の続報(長崎医学会雑誌 89(特別号)272-275, 2014)では、広島の被爆二世の白血病の発症リスクが父親の被爆状況と出生時期の影響を受ける理由を2つあげている

2016-06-05 09:57:01
nao @parasite2006

1つは卵子と精子の放射線影響の受けやすさの違い。精子は精原細胞の段階では放射線によるDNA損傷を修復する機能があるけれど、完成品の精子の段階ではDNA修復機能がなくなります。一方卵子は卵母細胞から精子を受け入れて受精卵となるまでの全段階でDNA修復機能を保持しています。

2016-06-05 10:06:28
nao @parasite2006

もう一つは、著者の表現によれば「被爆男性の子孫への関与が大きかった可能性」ですが、実態はこの図(出典は鎌田名誉教授が2014年6月に札幌で行った講演のスライドrenree.blogspot.jp/2016/01/20146.…pic.twitter.com/6gsb3l8JFd

2016-06-05 10:11:54
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nao @parasite2006

この図pic.twitter.com/6gsb3l8JFd は父親被爆/母親非被爆と母親被爆/父親非被爆の家族について、出生数のOE比(Observed/Expected比=実測値/期待値比。期待値の算出法は不明)の時間変化を見たもの。

2016-06-05 10:22:41
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nao @parasite2006

著者は「被爆男性の子孫への関与が大きかった可能性」と表現していますが、この図はむしろ「被爆者が子供を持つ事に対する抵抗が男性より女性に対してより強かった」ことを示すものだと私は思います(子供に関する問題となると矛先はまず女性に向かう)pic.twitter.com/6gsb3l8JFd

2016-06-05 10:45:52
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2012年の鎌田名誉教授の講演の説明では「父親は被爆していても子どもを持つことに対しあまり頓着がないが、母親は非常に用心深かったということで、それが解消されるのが昭和38􏰆􏰄年である。」となります。
あわせて「子どもが生まれてくる状況を分析するためには「空白の􏰁􏰇10年」と呼ばれている状況を加味しないといけない。すなわち、被爆者を支援する環境が整ってきたのは昭和32􏰆􏰀年で、それまで被爆者は置き去りにされ、被爆者は子どもを産むことに危機感を感じていた。」とも述べています。昭和32􏰆􏰀年=1957年は、現行の「被爆者援護法」(1994年12月制定)の前の「原子爆弾被爆者の医療等に関する法律」が制定された年にあたります。
(広島県医師会速報第2151号
http://www.hiroshima.med.or.jp/ippnw/sokuho/docs/2151_006.pdf
p.14)

nao @parasite2006

広島の被爆二世の白血病発症リスクpic.twitter.com/JWOMn3BFBB と父親のみ被爆と母親のみ被爆の家族の出生数OE比の時間変化pic.twitter.com/6gsb3l8JFd 1955年までは成人で被爆した親、1966年以降は子供時代に被爆した親が子供を持った時期

2016-06-05 11:08:59
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もう1つ申し添えますと、広島の被曝二世の出生数OE比の時間変化グラフを見ると、青い線で示した1960年のあたりから「母親のみ被爆」の家庭で出生数OE比の上昇が始まっている、すなわち被爆した母親がこどもを持つことにようやく積極的になったのがわかりますが、この青い線の左側は父親側の被爆状況がこどもの白血病発症リスクに統計上有意に影響している時期です。この線の右側では父母いずれの被爆状況もこどもの白血病リスクに影響しません。

あえて話を単純化して思い切ったことを言わせていただければ、現在あるデータから健康状態に親の被爆状況の影響を受けている可能性がありうると言うにしても、それは広島の被爆二世でもせいぜい原爆投下後10年か15年以内に生まれた人までで、これ以後に生まれた人は話が別です。

その4:放射線影響研究所の被爆二世研究

nao @parasite2006

原爆被爆者の二世の研究は放射線影響研究所も行っており、2003年には論文bit.ly/1bHbhtT も出ています。(続く)

2016-06-05 18:29:27
nao @parasite2006

(続き)放射線影響研究所(放影研)の論文では1946-1984年に生まれ、1958年時点でがんを発症していなかった広島と長崎の被爆二世40487例(約2/3が広島の被爆者から生まれた)を対象とし、1958-1997年のがん(固形がんと血液がん)の発症状況を検討しています。

2016-06-05 18:31:34

(↑より正確には1946年5月1日-1984年12月31日に生まれた人。鎌田七男・広島大名誉教授の研究対象となった被曝二世が1946年6月1日-1973年12月31日生まれなのと比較すると、より長い期間をカバーしていることになります。次の項でとりあげる広島の被爆者梶野さんは被曝当時妊娠7ヶ月でしたが、このときお腹にいた息子さんが生まれたのはどう考えても1945年中なので、どちらの研究の対象からもはずれます)

nao @parasite2006

放影研論文bit.ly/1bHbhtT では対象となった被爆二世を出生時期別にグループ分けした検討は行わず、また年齢区分も1-19歳までと20歳以上の2つに分けているだけ。片親被爆と両親被爆の場合の比較もなし pic.twitter.com/7TbCVIamju

2016-06-05 18:34:19
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放影研論文bit.ly/1bHbhtT の対象となった広島と長崎の被爆二世40487例の両親の被爆状況のまとめ。括弧内の数字は平均値。両親とも被爆線量の推定値が出ている被爆二世は2474例で全体の6.1% pic.twitter.com/YQ2LFACSQi

2016-06-05 18:45:30
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2014年6月の第55回原子爆弾後障害研究会(長崎大)の鎌田七男・広島大名誉教授の発表で、広島の被爆二世の白血病の発症リスクが父親の被爆状況により影響を受け、また原爆投下からの時間とともに急激に低下することが判明したあとpic.twitter.com/JWOMn3BFBB (続く)

2016-06-05 18:51:44
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(続き)全国被爆二世団体連絡協議会(二世協)は2015年2月17日に放影研に対し、4年に一度の被爆二世の検診結果の解析を強化するよう文書で申し入れ。8項目の要望の中に「原爆投下5年以内に生まれた人に絞ったデータの解析hiroshimapeacemedia.jp/?p=40995 (続く)

2016-06-05 18:59:31

「原爆投下後5年以内」とは、一つ前のツイートに貼り付けた被曝二世の白血病発症リスク(同じ親から生まれた白血病でない兄弟姉妹と比較、1946年生まれを100として表示)のグラフが横軸から明らかに離れている範囲に相当します。原爆投下から5年を超えるとリスクの値は1946年生まれの10%を下回り(6年後は9.2%)、10年を超えると1%を切ります(11年後は0.8%)。

nao @parasite2006

(続き)放影研は2015年5月11日に二世協に回答書を手渡し「「親の被曝線量ごとの解析を行う予定」原爆投下5年以内に生まれた人に絞った解析の要望についても、「出生時期を考慮に入れたい。両親の被爆状況や被爆2世の性別の解析も検討する」」hiroshimapeacemedia.jp/?p=40995

2016-06-05 19:04:41

上のツイートは間違った記事を引用していました。正しくはこちらです。
http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=44185
この時の放影研回答書の内容は、二世協ホームページの2015年の活動報告コーナーに公開されているのを見つけました。
http://www.c-able.ne.jp/~hibaku2/g-houkoku/g-houkoku15.htm#20150511
このページを見ると、二世協は放影研の被爆二世臨床調査科学倫理委員会(年1回開催)に自分たちが推薦した委員(全部で9人からなる委員会のうち5人)を送り込んでおり、会合当日にも会員がオブザーバーとして参加していることがわかります。

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