「プレスリリース:一般の熱エンジンの効率とスピードに関する原理的限界の発見」と内燃機関の理論効率の関係
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(1) の路線で考えるにしても「こういう風にしてカルノーサイクル風のものを作ってみたけど、やっぱり効率が最大になると仕事率はゼロだった」という例を積み上げるだけでは証明にならない。もっと賢いやり方があるかもしれない。 (2) の路線なら、なおさらそうだ。
2016-11-02 14:01:38実際、(2) の路線で、色々と物理的に変わった状況を考えると「カルノー効率を達成するが仕事率もゼロでない熱エンジン」が作れるのではないかという理論的な提案はいくつもあった(こういことを考えるのは大事だし、面白い)。
2016-11-02 14:02:09だが、今回の論文で、(1), (2) を含め、何をやっても「カルノー効率を達成しつつ仕事率がゼロでない熱エンジン」は作れないことを証明した。 「夢」を壊してしまった・・・ ただ、それが真実なんだから仕方がない。制限を知った上で、できることを考えるのが正しいやり方だからね。
2016-11-02 14:02:45(もちろん理論だから前提がある。今回は熱エンジンを古典力学で記述できること、熱源のエンジンへの影響をマルコフ過程でモデル化できることが前提。これはほとんどの場合に適切だと考えられるが、たとえば、量子性がものすごい強い極微の「熱エンジン」に今回の理論は適用できない。)
2016-11-02 14:03:34実は、論文ではより踏み込んで、熱エンジンの仕事率と効率のあいだに、 (仕事率)<(定数)η ( ηC - η ) という不等式が成り立つことを証明した。これは、効率 η が上限の ηC に近づくと仕事率が必然的に小さくなるというトレードオフの関係とみることができる。 強い結果だ。
2016-11-02 14:04:01ただし、ここに登場した「定数」は普遍的な定数ではないことに注意。これは具体的な熱源や熱エンジンに依存する量だ(熱伝導率を好きなだけ高くできるなら仕事率も高くできるので、普遍的な定数を使った不等式はあり得ない)。
2016-11-02 14:04:23われわれの証明の要は、熱源とエンジンの間に有限の速さでの熱のやりとりがあると必ず「効率の無駄」が生じると示すことだった。これは平衡に近い系では割と当たり前だけれど、激しい非平衡状態を許す任意のプロセスについてはまったく自明ではない。これを証明してみせたところが「売り」ですね。
2016-11-02 14:04:56証明は数理的に見てもエレガントで、ぼくは気に入っている。ただ、証明の中身をツイートで説明するのは無理なので、ご興味のある方は論文をご覧ください。 【おわりです】 arxiv.org/abs/1605.00356
2016-11-02 14:05:28久世正弘さんの疑問
@Hal_Tasaki とても面白いですね。証明はもちろん追えないのですが、p2の左下の8行の導出の最後で(QH+QL)^2/QH^2のファクターが出てくるように思うのですが、これは1としているのですか。
2016-11-01 13:35:38@mkuze ええと、どの式でしょう? すでに忘れ始めてますが、不等式で抑えたかもしれませんが、書いてない仮定は使ってないつもりでした。
2016-11-01 19:38:42@Hal_Tasaki arXivでいう(3)式の導出なんですが、その2行上で与えられるΔSを、前の段落の最後の不等式に代入しても、(QH+QL)^2/QH^2が残って(3)にならないのですが。
2016-11-01 19:44:12@mkuze @Hal_Tasaki すでに解決したかもしれませんが、 QH^2/(QH+QL)^2 < 1 だと思われます。 大変面白いですね。全部追いきれてないですが。
2016-11-01 20:48:18@tarokotani @Hal_Tasaki ええ、もちろん不等式が成り立つことは変わらないのですが、上限がよりきつくなって、η(ηc-η)というパラボラでなくη(ηc-η)/(2-η)^2という関数になりませんか?
2016-11-01 20:50:54@tarokotani @Hal_Tasaki なので、「最大出力のエンジンはカルノー効率の半分で実現されるんだ、美しい!」と思ったのがそうでもないのかな、と。数値的にはηcがうんと大きくない限り、だいたいパラボラで合ってるみたいなんですが。
2016-11-01 20:56:06@mkuze @tarokotani あの不等式はきれいな形に見せるようにああ変形しました。線形応答であの式が出ていたので、それにあわせたというもあります。いずれにせよ上限なので、あれで最大出力が決まるわけではないです。最大出力についても色々と研究はあります。
2016-11-01 23:28:31私(まとめ人)の拙い考察
へー、田崎晴明氏も加わったグループの研究成果なんですね。それにしても「カルノーサイクル」が実は実用にならないとは知りませんでした。 twitter.com/pc_watch/statu…
2016-11-01 15:01:53慶應大ら、熱エンジンの効率を最大限に上げると出力がほぼゼロになることを証明~熱力学に新たな原理が付加 pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1027… pic.twitter.com/Y3HNYIcvvC
2016-11-01 14:02:05プレスリリースはここらしい。 keio.ac.jp/ja/press-relea… 火力発電等の効率に実用的上限があるのはこれも理由なんですね。ただし内燃機関やコンバインドサイクルエンジンはこの条件で制約されないんでしょうね。ちょっと方式が違うので。
2016-11-01 15:14:54論文はここから読めると。数式だらけで分からないw arxiv.org/abs/1605.00356
2016-11-01 15:19:27まあ、カルノーサイクルは「準静的過程」って大抵の解説に書かれているもんね。つまり「仕事率的にはお話にならない(無限に遅い)」と言うのは自明であり、既知だったわけで。今回の論文はそれをきちんと理論で示したって話なのでしょう。
2016-11-01 15:43:05「熱効率と仕事率の関係がこんな感じになる」と言うのはこれまでは実験的、経験的にのみ知られていた事で、それをきちんとモデル化、数式化できたって事かな。 pc.watch.impress.co.jp/img/pcw/docs/1…
2016-11-01 15:56:45