光武帝・袁術・曹丕・鄭玄らが信じた讖緯は、ただの予言・迷信なのか? 後漢王朝建国の原動力となり、社会全体に大きな影響を与え続けた重大な儒教思想。

三国志などでよく語られ、意味を理解しにくい言葉に「讖緯」(緯書・図讖とも)、主に後漢王朝を建国した光武帝、後漢末の群雄・袁術、魏王朝を建国した曹丕が皇帝に即位するために信じた(あるいは利用した)ことで知られています。しかし、中国史の様々な思想が融合したものであり、さらに政治的意図・宗教的概念が含まれるため、非常に理解しにくいものとなっています。そこで、今回、讖緯研究で知られる安居香山の学説を中心に、まとめてみました。讖緯は複雑な概念ですが、表などをつけましたので、皆さんの理解の一助になれば幸いです。
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まめ @mamesiba195

讖緯について、論じたいと思います。なお、敬称については文字数の調整から省略しています。また、論文の読解や引用については、全て、私の責任に帰依しますので、ご了承ください。誤り等がありましたら、ご指摘いただけると助かります。 #はじまりの後漢

2016-11-06 00:51:21

1.はじめに

まめ @mamesiba195

讖緯という言葉があります。中国史や三国志では、後漢末の群雄で知られる袁術が、讖緯にある「代漢者当塗高」を自分のことと信じ、皇帝を名乗ったことでご存じの方が多いと思います。

2016-11-06 00:54:26
まめ @mamesiba195

また、魏の文帝で知られる曹丕が同じ讖緯を根拠に、漢王朝の皇帝からその地位を(実際は強要して)譲り受け、魏王朝を建国しています。

2016-11-06 00:54:57
まめ @mamesiba195

この讖緯とはなんなのか? 現代人からただの迷信に見えますが、当時はどのような存在であったのか、これを調べてみました。

2016-11-06 00:55:31
まめ @mamesiba195

まず、讖緯とはwkipediaに拠りますと、2016年11月現在で、『古代中国で行われた予言』とされています。図讖と呼ぶことも分かります。 ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AE%96…

2016-11-06 00:56:43
リンク Wikipedia 讖緯 讖緯(しんい)とは、古代中国で行われた予言のことであり、讖緯の説、讖緯思想、図讖などと呼ばれている。 元来は、讖と緯とは別のものである。讖とは、未来を予言することを意味しており、予言書のことを「讖記」などと呼んでいる。それに対して、緯とは、儒教の経典に対応する「緯書」と呼ばれる書物群を指すものである。しかし、後には、この二者はともに予言を指す言葉と、それを記した書物として、併せて用いられるようになり、「讖緯」という用語が予言を指すようになった。 『隋書』「経籍志」には、 と見えている。 讖緯説が著しく発展
まめ @mamesiba195

また、関連語句として、緯書という語句もあります。2016年11月現在wkipediaに拠りますと、『儒家の経書を神秘主義的に解釈した書物』とされています。 ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B7%AF…

2016-11-06 01:00:20
リンク Wikipedia 緯書 緯書(いしょ)とは漢代、儒家の経書を神秘主義的に解釈した書物。「緯」とは「経」(たて糸)に対する「よこ糸」であり、経書に対応する書物(群)を指して緯書と称している。 七経(『詩』『書』『礼』『楽』『易』『春秋』『孝経』)に対して緯書が作られ、これを七緯(しちい)と総称する。 狭義の緯書は、経書の注釈として、経書の内容に従って書かれた書物を指しているが、緯書は、天文占など未来記としての讖記(しんき)と同様の内容を含むものも含んでいる。よって、広義では、緯と讖とを総称して緯書と呼んでいる。また、讖緯(しんい)
まめ @mamesiba195

後漢時代や三国時代の解説に度々でてくる讖緯とは、こういった理解でいいでしょうか?

2016-11-06 01:00:50

2.出典資料と注意点

まめ @mamesiba195

なお、紹介の根拠とする出典は安居香山『緯書と中国の神秘思想』(1988年)です。これは、図書館などでも手に入りやすく、2016年11月現在、市販されています。 amazon.co.jp/%E7%B7%AF%E6%9…

2016-11-06 01:02:05
リンク www.amazon.co.jp 緯書と中国の神秘思想 | 安居 香山 |本 | 通販 | Amazon Amazonで安居 香山の緯書と中国の神秘思想。アマゾンならポイント還元本が多数。安居 香山作品ほか、お急ぎ便対象商品は当日お届けも可能。また緯書と中国の神秘思想もアマゾン配送商品なら通常配送無料。
まめ @mamesiba195

これを肉付けする形で、安居香山、中村 璋八『緯書の基礎的研究』(1976年)も参照しています。 amazon.co.jp/%E7%B7%AF%E6%9…

2016-11-06 01:03:03
リンク www.amazon.co.jp Amazon.co.jp: 緯書の基礎的研究 (1976年): 安居 香山, 中村 璋八: 本 Amazon.co.jp: 緯書の基礎的研究 (1976年): 安居 香山, 中村 璋八: 本
まめ @mamesiba195

安居香山のみを選んだのは、資料の入手が比較的容易であること、学説によって見解の違いがあるため、その相違を紹介することは煩雑になるばかりであるためです。 ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89…

2016-11-06 01:04:07
リンク Wikipedia 安居香山 安居 香山(やすい こうざん、1921年7月24日 - 1989年7月20日)は、日本の中国文化学者。讖緯思想の研究で知られる。また、大正大学の学長を務めた。 滋賀県出身。1944年大正大学哲学科を卒業。1977年「緯書成立の研究」で大正大学文学博士。大正大学文学部助教授を経て、1971年に教授。1984年に文学部長、1987年に学長に就任した。
まめ @mamesiba195

事前に二つだけ注意点があります。

2016-11-06 01:06:11
まめ @mamesiba195

安居香山は緯書を史書等による用例から、緯書と讖緯を同一と捉えていますが、字義的に混乱を生みやすいため、今回の紹介では、wkipediaにあわせる形で、讖緯等の用例のうちの、『書物』をあらわすものを指す言葉として扱います。これはあくまで便宜上の定義と考えて下さい。

2016-11-06 01:08:12
まめ @mamesiba195

もう一つは、安居香山は、緯書と対比をなす経書を『儒家が経典にあたる四書五経の類』と定義していますが、これは簡略で曖昧に過ぎ、対比をなす緯書の紹介には不適当です。また、wikipediaを根拠にするわけにはいきません。 ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C…

2016-11-06 01:09:00
リンク Wikipedia 経書 経書(けいしょ)は、儒教でとくに重視される文献の総称。経典(儒家経典)ともいう。 もともとは聖人の著作のみを指すが、後世には意味が拡大され、賢人の著作や言行録、一部の注釈類も経書として扱われるようになった。経書は中国の伝統的な図書分類法である四部分類において大分類の1番目に挙げられている。具体的には戦国以来の六経(楽経は早くに亡び、五経となった)、五経・四書(四書五経を参照)・十三経を指す。また経書の注釈を主とする研究を、経学と呼ぶ。 「経」には織物の「たていと」の意味があり、織布を織るとき、経を固定し、
まめ @mamesiba195

また、「天子」の扱いについて、「天」との関係を説明するだけでは、古代の聖王・経書との関連説明が不十分だと思われます。 ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9…

2016-11-06 01:09:23
リンク Wikipedia 天子 天子(てんし)とは、中国や日本で用いられた君主の称号。天命を受けて天下を治める者の意。中国の周王や漢代以降の皇帝、日本の大王・天皇の別号として用いられた。 王は天(天帝)の子であり天命により天下を治めるとする古代中国の思想を起源とする。周代、周公旦によって「天帝がその子として王を認め王位は家系によって継承されていく。王家が徳を失えば新たな家系が天命により定まる」という「天人相関説」が唱えられ、天と君主の関係を表す語として「天子」が用いられるようになったという。秦の始皇帝により、天下を治める者の呼称が神格化
まめ @mamesiba195

そのため、経書の定義・天子の説明については、その解説が詳しく、近年に発表されている浅野裕一『孔子神話』に拠ることにしています。(後で紹介します) ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%85…

2016-11-06 01:10:50
リンク Wikipedia 浅野裕一 浅野 裕一(あさの ゆういち、1946年 - )は、日本の中国哲学研究者、東北大学名誉教授。 宮城県仙台市生まれ。1971年東北大学文学部中国哲学卒、1976年同大学院文学研究科博士課程満期退学、1977年島根大学教育学部助手、1978年講師、1982年助教授、1988年東北大学教養部助教授、1991年教授、「黄老道の研究」で東北大文学博士、1993年同国際文化研究科教授、環境科学研究科教授、2011年定年退任、名誉教授。
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コメント

ろんどん @lawtomol 2016年11月6日
実に興味深いまとめです。じっくり読みたいものです。
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きゃっつ(Kats)⊿ @grayengineer 2016年11月6日
儒教との関連性と同じように、道教(老荘思想、神仙思想も含む)との関連性についての話も見たい
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まめ @mamesiba195 2016年11月6日
コメントありがとうございます。讖緯は内容は複雑ではあります。しかし、当時は多くの人に信じられた、漢代までの中国史における神秘的(オカルト)思想の集大成として、難しいところを飛ばしながら、斜め読みでお読みいただいても、よいのではと考えています。 道教関連では、安居香山『讖緯思想の総合的研究」において、今枝二郎先生が、「道教経典にあらわれた讖緯思想について」という論文がありますので、機会があればご覧いただけたらと考えています。
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大蔵春 @ookuranoharu 2016年11月9日
光武帝にとって(あるいは王莽にとって)の王権神授説的立ち位置だったんだと思いますね、讖緯というのは。劉秀の皇位を正当化し皇帝専制を維持するためのシステム。劉秀辺りまでは偶然の連鎖が起こっておりましたが、皮肉な事に後漢で学問が発達して否定派が興隆したことと、結局讖緯を踏襲して国号を決めた魏が天下を取れなかったことなどで、役割を終えてしまったのかなと。まめさん程、現代の学説を読み込んではおりませんが。
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まめ @mamesiba195 2016年11月10日
ありがとうございます。光武帝の讖緯については板野長八「儒教成立史の研究」第九章図讖と儒教の成立が詳しいです。讖緯の後漢初期における影響力については、井ノ口哲也「後漢経学研究序説」第一章五経と讖緯がよいと思います。讖緯については、「災異」説が豪族や官僚に利用され、皇帝や政府批判に対抗する武器となり、また、その革命思想は、後漢王朝に革命を起こす大義名分を与えています。王朝を正統化することはよくても、権威付けや維持には不向きだったのでしょう。
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