現代に於ける伝統を考える上で、私の中に新伝統と似非伝統という区別があったのだけど、それは実は本質的に同じもので、好ましいものを新伝統と言い、好ましくないものを似非伝統と言っているのに過ぎないのだと気付いたのだった。だいぶ前のことでした。悩んだような吹っ切れたような感じがしました。
2017-08-29 00:10:10私の中で新伝統というのは箏を近代化改修した三木稔の日本音楽集団だったし、似非伝統というのは江戸しぐさとか恵方巻きとかだったのだった。
2017-08-29 00:11:26大体に於いてアカデミックなものは新伝統として称揚し、世俗的なものは似非伝統として非難していた。それは今も変わらない。
2017-08-29 00:13:04変わったのは、新伝統と似非伝統は同一のもので、それを私の主観が仕分けている、と私が気付いたことだった。
2017-08-29 00:14:09江戸時代からやってれば伝統だろう、明治時代も良いのではないか、大正も、昭和だって戦前は、いや戦後だって半世紀以上前だ、などと言っているうちに伝統の範囲は過去から現在へ迫って来ている。
2017-08-29 00:16:34私は音楽をやっていて、現代音楽が好きで、伊福部昭や三木稔も好きで、そういう私の主観からすれば、近代的な二十絃箏だって、従来の文化的位相の垣根を越えた邦楽合奏だって、好ましい新伝統ということになるのだった。宮城道雄なんてまごうことなき古典。近代とは、もはや伝統的過去なのだ。
2017-08-29 00:20:40一方で似非伝統はというと、てめえ伝統ヅラしてんじゃねえ! と殴りたくなるような忌まわしい新造習慣。あの江戸しぐさはちゃんと下火になっただろうか。学術的裏付けが無ければ唾棄すべきものだ。
2017-08-29 00:24:23現代音楽の中で、新作雅楽という流行りがあって、これは国立劇場や伶楽舎がやっているのだが、余りにも非伝統的すぎる。雅楽を知らない人々は、これを伝統的雅楽だと思ってしまう。今度サントリーサマーフェスティバルで武満徹と黛敏郎をやる。一応楽しみだが、伝統を滅ぼし兼ねないという危惧もある。
2017-08-29 00:28:06雅楽は大体に於いて平安時代に完成された形態を持つが、正倉院復原楽器は奈良時代の遺物が明治・昭和時代に突然現れたもので、雅楽にとっては1000年潜伏していたものだった。これを突然一緒にしても、チグハグにしかならない。
2017-08-29 00:31:16しかしこれも私の主観による操作が左右する。俗楽は位相を越えた合奏を認めるのに、雅楽は認めないのか、という話になる。そこは正直に言って苦悩している。私の先生はバリバリの伝統雅楽派で、新作雅楽は好ましく思っていない。だが私は、実はこっそり現代雅楽を好んでいたりするのだった。
2017-08-29 00:34:02私が東方自作アレンジで邦楽合奏を推しているのは、100年後から見た伝統を、私の主観による新伝統によって作り上げようという企図によるもので、まあ大それた趣味だなと思う。如何にして未来の伝統を今から作り上げるか。今からやっておかなくては間に合わない。
2017-08-29 00:41:16