2018-03-23のまとめ
労働分配率の低下が続いたことと、労働生産性の伸びが鈍化したことが、今回局面の実質賃金上昇率を主に抑制する要因となったことが確認できる。
2018-03-23 21:56:19米国の労働分配率は1950年代から緩やかな低下傾向にあったが、2000年代に入って急に低下ペースが加速した(図表3)。米国の労働分配率が急速に低下した背景について、これまで、ITなど機械の技術進歩による労働者の代替や、
2018-03-23 21:56:20労働集約的な産業における輸入の増加といった観点からの説明が試みられてきたが、足元で新たな説として注目されているのが、Autor, et al.(2017)が提唱した「スーパースター企業」仮説である。
2018-03-23 21:56:21Autor, et al.(2017)は、製造、金融、サービス、公益・運輸、小売、卸売といった米国の幅広い産業において、少数の「スーパースター企業」に市場シェアが集中していることを示し、市場シェアの集中度が高まった産業ほど、労働分配率が低下したことを明らかにした2。
2018-03-23 21:56:21米国商務省センサス局が公表する経済センサスのデータを用い、各産業における上位50社の市場シェアの変化(2002~2012年)を売上高ベースでみたものである。運輸・倉庫を筆頭に、ほぼ全ての産業で上位50社の市場シェアが拡大していることが確認できる
2018-03-23 21:56:22(。 ・ω・))フムフム 「スーパースター企業」仮説から示唆されるのは、一部のスーパースター企業への市場シェア集中をもたらした産業構造の変化と、スーパースター企業によるITや業務アウトソーシングの活用を通じた労働コストの抑制であると考えられる。
2018-03-23 21:56:222000年代前半以降、実質賃金の牽引役となるはずの労働生産性の上昇ペースが大幅に鈍化し、2010年代に入ってからは低迷が続いている(図表5)。 労働生産性は、労働者1人当たりの設備の量を表す「資本集約度」、技術水準を表す「全要素生産性(TFP)」、
2018-03-23 21:56:24労働者の能力を表す「労働スキル」の3つの要素から構成される。筆者のこれまでの分析を踏まえると、労働生産性の低迷は主に、設備投資不足による資本集約度の低下(服部(2013))と、IT産業の技術進歩の鈍化によるTFPの減速(服部(2017b))で説明することができる
2018-03-23 21:56:24労働スキルの動きをみると、今回の景気拡大局面に急速に低下した6(図表6)。足元では前年比マイナス圏での推移が定着しており、過去2回の景気拡大局面における伸びと比較しても低迷が際立っている。
2018-03-23 21:56:25服部(2016)では、主に今回の景気拡大局面における労働スキルの急低下の背景について、人口構成の変化と若年層の不完全雇用を指摘した。
2018-03-23 21:56:25所得格差の拡大は、低所得層における人的資本投資を阻害し7、米国全体の労働スキル向上を阻害すると考えられる8。米国の所得格差の度合いを表す指標として、所得上位10%層の税引前所得シェアをみると、所得格差は1940年代に急速に縮小した後、
2018-03-23 21:56:271950~1970年代にかけて概ね低位で安定していた(図表7)。しかし、1980年代に入って再び所得格差が拡大しはじめ、足元では過去100年間のピークである1930年代とほぼ同じ水準に達している。
2018-03-23 21:56:27ジニ係数をみると、所得再分配政策を実施した後のベースでも、所得格差が拡大傾向を続けている(図表8)。こうした所得格差の拡大が、人的資本投資の阻害を通じて、労働生産性の上昇に対する構造的な抑制要因となる可能性がある。
2018-03-23 21:56:28ラトガース大学のThe National Institute for Early Education Researchによれば、米国の4歳児人口に占める無償就学前教育の利用者の割合は2002年時点で14%であったが、2016年には32%まで増加した(図表9)。
2018-03-23 21:56:30ただし、州別にみると、ワシントンDCが81.2%、フロリダ州、オクラホマ州、ウィスコンシン州が70%超となった一方、アイダホ州、モンタナ州、ニューハンプシャー州、ノースダコタ州、サウスダコタ州、ユタ州、ワイオミング州が0%と、州によって大きなばらつきがある。
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