2018年7月25日のラジオ第1「NHKジャーナル」の特集「福島の甲状腺検査　医師たちの葛藤」をめぐって

nao @parasite2006

（実際には1巡目、2巡目、3巡目と回を重ねるに連れて、悪性（癌）または疑いと診断される人は絶対数、受検者に対する割合（=無症状の段階で見つかっているので発見率という）ともに減ってきている） pic.twitter.com/Qno7n8jh9m

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nao @parasite2006

問題点3：罹患率（症状が出てから検査を受け診断された割合）と発見率（症状が出ないうちに診断された割合）の違いを理解していない。福島局川崎アナ（00:02:25）の「子供の甲状腺癌は100万人に年間1人から2人程度」は前者。岩本ニュースデスク（00:04:12）の（続く）

nao @parasite2006

（続き）「38万人で211人は一般に考えられている甲状腺癌の患者に比べまして数十倍」は後者。罹患率（症状が出てから検査を受け診断された割合）と発見率（症状が出ないうちに診断された割合）は全く別物。比較しても意味はない。氷山の水面より上と下の体積を比較すれば、下が大きいのは道理。

nao @parasite2006

岩本ニュースデスクは（Wikipediaで調べた範囲では）法学部を卒業後NHKに記者として入って報道局科学文化部で働き、専門は医療・文化だそうな。薬害エイズ、JCOの東海村臨海事故、日本のがん医療を扱う番組を手がけてきたという人が罹患率と発見率の違いを理解できていないとは驚き入る

nao @parasite2006

そして番組全体の文字起こしdropbox.com/s/lrx297dxzvh9… を作ってみて初めてわかったのは、諏訪中央病院の鎌田實名誉院長のインタビューを取ってきたのが岩本デスクらしいこと（これ以外の取材音声=検査風景、坪倉医師、検討委員会の星座長、患者の家族は福島局川崎アナが担当）

Hira@ビール好きの怪しいオヤヂ（PPMMPM) @hhhira

件のNHKデスクは、恐らく「チェルノブイリ医療貢献のヒーロー・鎌田實」を絶対視してるのではないかなあ＞RTs　そもそも鎌田氏は甲状腺ガンに特段の専門知見を持つ医師じゃないよなあ。

Hira@ビール好きの怪しいオヤヂ（PPMMPM) @hhhira

鎌田氏と来れば菅谷昭氏にも言及しないわけには行かなくて、菅谷氏は要手術状況まで悪化した甲状腺ガンの摘出手術のプロであるけれど、経過観察レベルの腫瘍に関して深い専門知見があるわけではないんだよね。 twitter.com/hhhira/status/…

Hira@ビール好きの怪しいオヤヂ（PPMMPM) @hhhira

医師の発信に関しては「どの科が専門であるか？」という視点でチェックし、他科マターに平気で口出す医師は疑ってかかる姿勢が大事だと思います

nao @parasite2006

岩本デスクは「甲状腺癌、これは死に直結するという癌ではなくて、特段治療をしなくても大丈夫な場合も少なくない、そういう癌なんです」（00:09:34-00:09:44）と言っておいて、これと矛盾する鎌田氏の発言（それも伝聞）（00:10:20-00:10:37）を無批判に伝えている

EARLの医学ツイート @EARL_med_tw

鎌田先生もこの話に関してはなんだかもう残念な方になっちゃいましたねぇ twitter.com/parasite2006/s…

nao @parasite2006

「一方で、先ほどの鎌田實さんは、チェルノブイリの医師から「子供の甲状腺癌は転移する確率が高いのが特徴で、手術をした場合の方が手術をしない子供に比べて寿命が格段に長かった」と伝えられたと話しているんです」archive.fo/WcMUw　岩本氏は『死に直結しない』との矛盾に気づかないのか？

nao @parasite2006

甲状腺癌、特に最大多数派の甲状腺乳頭癌が死に直結しない癌である実例として、他の原因で死亡した後解剖で見つかる「天寿癌」「潜在癌」の多さがある。日本病理学会の剖検データから求めた甲状腺癌の有病率は、国立癌センターによる癌統計の甲状腺癌の罹患率より2桁大きいtogetter.com/li/884989

nao @parasite2006

甲状腺癌、特に最大多数派の甲状腺乳頭癌が死に直結しない癌であるもう一つの実例は、韓国で成人女性の乳癌の超音波検診と抱き合わせの甲状腺の超音波検診が普及した結果甲状腺乳頭癌の診断件数が急増したのに死亡率は改善しなかったこと。NATROMさんによる論文とグラフの紹介d.hatena.ne.jp/NATROM/2015063…

nao @parasite2006

twitter.com/parasite2006/s… この韓国での超音波検診による甲状腺乳頭癌の急増は、Welch and Black (2010) academic.oup.com/jnci/article/1… による過剰診断の定義「診断されずに放置されたとしても自覚症状を引き起こすことも死亡の原因となることもないような病状が診断された場合」に該当

nao @parasite2006

twitter.com/parasite2006/s… 余談ながらこの韓国の成人の甲状腺乳頭癌の過剰診断ケースは、医師のグループが過剰診断の問題を警告し、小さな癌は手術せず経過観察するよう勧めた結果、新規患者が3年で半減し、患者数も2位に転落archive.fo/l848j

nao @parasite2006

韓国で超音波検診による甲状腺癌の過剰診断が2014年に論文報告された後d.hatena.ne.jp/NATROM/2015063… 米国甲状腺学会は過剰診断の害を避けるため2016年1月に成人用の「甲状腺結節と甲状腺分化癌患者の取り扱いガイドライン』を改訂twitter.com/parasite2006/s… 「1 cm未満の結節の診断治療は益より害が大きい」

nao @parasite2006

2016年1月公表の米国甲状腺学会の成人用の「甲状腺結節と甲状腺分化癌患者の取り扱いガイドライン』online.liebertpub.com/doi/pdf/10.108… p.10の甲状腺結節取り扱いガイドライン「直径1 cmを超える結節だけを評価すべし。1 cm未満の結節の診断治療は益より害が大きい」

2016-08-27 05:29:03

nao @parasite2006

「そういうことなら子供の場合も小さい甲状腺乳頭癌なら経過観察すればいいではないか」と考えるのは簡単だが、実際には10代から20代の初めまでは甲状腺乳頭癌の成長速度が最大になる時期でtwitter.com/parasite2006/s… 「一定期間に何%以上成長したら手術」というガイドラインの下では手術の回避は難しい

nao @parasite2006

「こどもの甲状腺がんはある程度大きくなったら多くは冬眠してしまう」とはこういう状況（出典は2018.4.14の大阪大学・高野徹先生の講演スライドshiminshakai.net/post/3292#3 実線が甲状腺癌の最大多数派、乳頭癌の成長パターン）。成長スピードは実は一定ではなく10代から20代に入るまでが最大。 pic.twitter.com/ffXBRO6T80

2018-07-27 12:06:00

nao @parasite2006

問題点4：（両論併記の一方ではあるにせよ）NHKが2017年11月のBS1（「原発事故７年目　甲状腺検査はいま」nhk.or.jp/docudocu/progr… ）に続いてラジオ第1で「過剰診断」という言葉を取り上げたのは評価できるが、説明が圧倒的に不足している（例、天寿癌や韓国の甲状腺検診にふれない）。（続く）

nao @parasite2006

（続き）特に甲状腺癌と診断されるとどのような治療が行われるかの説明が足りず、過剰診断の害が具体的に視聴者に伝わらない（番組で紹介の女性のように甲状腺を全摘すると甲状腺ホルモン剤を生涯飲み続けることになる。子供のうちに診断され治療を受けた場合生涯の大半を癌患者として送ることになる）

nao @parasite2006

問題点5：番組中では「検査を大規模に実施したから甲状腺癌が多く見つかっている（可能性）」と繰り返し言っているが（文字起こしdropbox.com/s/lrx297dxzvh9… ）「高精度の超音波検査を無症状の人に対して大規模に実施したから」が正しい。超音波検査は触診（直径1.5 cm以上を検出）の約10倍見つけている pic.twitter.com/AmHM8skVEH

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nao @parasite2006

（成人の甲状腺結節の発見率（=無症状の段階で発見され診断される割合）でも触診1.2-1.9%、超音波検診7-23%、甲状腺癌の場合触診0.08~0.23%、超音波検診0.38-1.3% という報告がありjstage.jst.go.jp/article/ningen… 超音波は触診の数倍から1桁余計に見つけていることがわかる）

nao @parasite2006

問題点6：両論併記で甲状腺検査見直し（過剰診断の害を避けるため）と甲状腺検査継続（放射線の影響の可能性がある）を取り上げているものの、文字起こしdropbox.com/s/lrx297dxzvh9… で番組構成を見ると実際は後者に傾いていることがわかる。（続く）