示準化石と示相化石のはなし
- gervillaria
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さて、次に「示相化石」について(言葉の概略は>twitter.com/gervillaria/st…)。 出てきた化石を使って環境を決める。こっちはね、ぶっちゃけ現実的ではない。というか、化石を含んでいる地層の方がよっぽど情報量がある。もちろん、研究が進んだからそう言えるのだけれど。
2019-02-14 20:34:43中学校の理科の地質単元で出てくる「示準化石・示相化石」(簡単な説明:benesse.jp/teikitest/chu/… , 難しい説明:kahaku.go.jp/research/db/bo… )って実際はどんなもんか、って話desu
2019-02-14 19:27:29例えば日本の恐竜化石の多くは、海成層(海底に堆積した土砂からなる地層)から見つかる。これは日本で見つかる恐竜が海に行きていたとか、泳いでいたとか言うわけではない。流されてきたんだよね、陸から川へ、川から海へと。
2019-02-14 20:39:26ひとつの海成層に見つかる貝化石の種類が生きていた環境が、浅瀬、汽水、砂浜、岩礁全部混ぜこぜ、なんてことも珍しくはない。セメテリー(共同墓地)化石群って言うんだけど、長年かけて海底のくぼみにどんどん貝殻が溜まり続け、それがある時に土砂に埋もれて、なんていう風にできた化石層。
2019-02-14 20:43:12だから、化石で出てくる種類、それも一種類、一つの化石から、「ここはこんな環境だったんだ!」なんて言えることはないし、地層の方に残された流れの強さや地層を構成する物質などから堆積された環境(堆積相)を読み解くことをスルーすることはもはや有り得ないのですよ。
2019-02-14 20:45:39この辺についてのガチの論文として、ウチの師匠の論文があるので参考にご紹介>jstage.jst.go.jp/article/kaseki…
2019-02-14 20:47:13堆積相解析とタフォノミー、ここいらがいわゆる「示相化石」的なことをやる研究手法になりますね。なお、「示準化石」の方は、古生物界隈だと生層序学、ってやつになります。
2019-02-14 20:48:49出てくる化石がどうやって化石になったのか、ってのを考えなければ、当時の環境は論じられません。木の葉っぱが出てきたらそこは昔陸地だったのだ、なんて言える訳ないわけで。
2019-02-14 20:50:34そしてもう一つ、化石から古環境を推定する際に気をつけないといけないこと。それは「トートロジーに陥らないこと」です。私の専門である二枚貝などは、今も生きている仲間が多く、また、同じグループの貝は今も昔も同じような暮らしであることが多いので、それを手がかりにすることもあります。
2019-02-14 20:54:09しかし、「この種類はこういう環境に暮らしている」「この種類が出たからこの地層はこういう環境なんだ」という説明になってはいけないわけです。理由と要因がループしてるでしょ? 例え同じグループの貝でも、その貝が今も昔も同じ環境で暮らしていたかどうか、なんてのは誰も保証してくれない。
2019-02-14 20:57:27化石として出てくる生物がどんな環境で暮らしていたか、っていうのは、本来は化石で出てくる生物の種類以外のところから導き出さなきゃいけないのです。具体的には地層とか。そこに堆積相解析を踏まえて。
2019-02-14 20:59:48「示相化石」というのは、そういう意味では古典的で素朴な原理だけど、現実的には使いどころが非常に狭い。今生きていない種類が出てくる古い地層なんかでは原則的には使うべきでないとすら言えるわけですよ。それでも、テストに出てきたら教科書の通りに回答すること。そうしないと点は取れない。
2019-02-14 21:04:34@GEorz1tired ですです。全国はおろか、世界規模で、人類知の拡大を目指して進んでゆくわけです。そのネットワークを構築してきた先人の遺産を受け継いで。
2019-02-14 21:09:43@rex_toyo ですです。産状観察、堆積相解析は不可欠です。たとえ恐竜であろうと二枚貝であろうと。骨にカキがくっついた恐竜化石は干潟で白骨化したものですし、両殻が揃って閉じて地層面に垂直に刺さっていればそれはその場で生き埋めになった二枚貝なわけで。
2019-02-14 21:24:40@gervillaria 実際問題、 古環境解析…古生物のフィールド系 は廃れかけてるみたいですから大変ですよね。 古生物やってるとかいって、 機能形態が増えた印象です。
2019-02-14 21:13:36@GEorz1tired 機能形態が増えたこと自体は悪いことではないと思います。パソコンの性能の向上によってできることが増えたことが要因として大きいのと、堆積相解析やタフォノミー、生層序のようなフィールドメインの研究は地道にコツコツ蓄積を増やして行く地味ィな分野であるってだけかなって。
2019-02-14 21:19:54@GEorz1tired 現場の知識、背景の知識ですからねえ。恐竜展で注目されるような華々しさとはちょっと縁が遠いわけで。でもそれはそういうものであって、ひっくり返ることはないと思います。
2019-02-14 21:21:08さて、まとめ。示準化石も示相化石も教科書にふさわしい原理原則としては良いのだけれど、「この種類は示準化石、この種類は示相化石」みたいな覚え方は、テストで点を取るためにしか使えません。しかしそれを使わなければ点はとれません。学校のテストは現場で使える知識を問うものではないからです。
2019-02-14 21:15:58@gervillaria そうなんですけど、 ・論文数重視 ・地質屋減少 ・新規開拓鈍化 とかありますし、 極めつけに、 サンプリングジオロジー同様の悪影響が、 機能形態重視にも共通項と思ってます。 例 ・悪質採集で露頭破壊 ・上記による採集禁止 ・具体的場所に関して疑心暗鬼 業界の発展に悪影響と考えてます。
2019-02-14 21:31:09