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日本の水族館をめぐる論点2019

大人から子供まで、国民的な人気のある水族館ですが、イルカの飼育・ショーを巡る議論や恒常的な赤字体制など、たくさんの問題点・課題も抱えています。 水族館経営を研究する立場から、日本の水族館における論点に関する一連のツイートをまとめました。 なお、元となった「いきものAZ」がサービス停止によりツイート内のURLリンクが全て切れています。 以下に全文バージョンを掲載していますので参考にしてください。 https://aquarium-japan.jp/aquarium-issue2019/
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Harasawa.K @AaarcherK

具体的には、水族館はほぼ半々の割合で、可視領域と不可視領域がある。展示水槽に至っては10%程度の面積しかないということ。これは、装置産業としての水族館の特徴を表しているし、より生産性を高めるためには、不可視領域の活用が有効となることを示唆する。見えない部分の見える化がカギ。

2019-06-08 21:29:45
Harasawa.K @AaarcherK

代表的な方法は「バックヤードツアー」で、これはここ数年でかなり定着してきたと思う。ただ、多くは「楽しい」にとどまっていて、情報の伝え方や収益に繋げる仕組みとしてはまだまだ未熟に感じる。ブランディングを意識して、サポーター制度などへ誘導するステップアップが課題だ。

2019-06-08 21:31:09
Harasawa.K @AaarcherK

「見えない部分」の代表的なものが、以前の回でご紹介しているような、研究だったり保全だったりするので、水族館が長期的に目指すビジョンとも方向性は一致する。展示やイベントを企画するに当たっては、既存の展示の延長線だけでなく、水族館全体の経営資源を見渡し、目的を意識することが大切。

2019-06-08 21:38:02
Harasawa.K @AaarcherK

第12回の『日米の事例から考えるイルカショーのこれから』は、イルカショーをいくつかのタイプに分類。そして、媒体の特性を踏まえ、ここでは「ショーのあり方」に焦点を当てた上で、多様なマーケティング・経営スタイルの可能性に触れるにとどめた。 ikimonoaz.ikimonopal.jp/article/43238

2019-06-19 21:59:21
Harasawa.K @AaarcherK

さて、水族館におけるイルカ(鯨類)飼育に関する主な論点は、主に①飼育の是非、②ショーの是非、③調達方法の是非の3つにあると考えています。これらは関連しているのですが、混線すると議論が進まなくなるので、それぞれ区別しながら議論すべきと思います。

2019-06-19 22:00:03
Harasawa.K @AaarcherK

水族館でのイルカ飼育に関する考え方のポジションを簡単にまとめたマップがこちらです。かなり単純化してはいますが、どの問題についてどの方向へ向かうべきか、どの点について理論武装が必要か、といった大きな論点を整理する際の参考になればと思います。皆さんは①〜⑧のどのスタンスでしょうか?? pic.twitter.com/tbXfjVlvvJ

2019-06-19 22:01:30
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Harasawa.K @AaarcherK

togetter用に、イルカに関する論点整理のツイートを別途まとめました。 togetter.com/li/1371110 ”水族館におけるイルカの飼育に関する論点整理”

2019-06-29 13:22:04
Harasawa.K @AaarcherK

最後の第13回では『水族館を通じていきもの達のために何ができるか』をテーマに、生き物や自然環境のために水族館が何をするか、という一般論ではなく、ボランティアや寄付など、利用者側の感情や行動の変化に着目した。 ikimonoaz.ikimonopal.jp/article/43377

2019-06-29 11:26:06
Harasawa.K @AaarcherK

TLでも動物園水族館における入館料の問題が度々論点になるが、価格を引き上げることが社会的にも政治的にも難しい中で、繁殖施設の投資などに向け、置きっ放しの募金箱方式ではない、施設全体のビジョンや戦略と結びついた資金調達の仕組みが重要になる。来館者数至上主義の転換も必須だろう。

2019-06-29 11:27:53
Harasawa.K @AaarcherK

私の研究の根本にあるテーマがこれ。端的に言えば、水族館が研究だとか保全をするのはある意味では当然で、それが世の中にどんなインパクトを与え、世論の行動を喚起できるか(もっと言えばそれをどう収益に結びつけるか)を重視している。これからの水族館の本質はここにある、というのが私見です。

2019-06-29 11:26:53
Harasawa.K @AaarcherK

日本では、経営学の立場からこうした研究が全くされてこなかったこともあり、厳しめに言えば、日本の水族館では「参画」を訴えるメッセージは皆無に近い。世界中の水族館がかなり力を入れるプラゴミ問題ですら、日本の水族館で印象的に展開したケースは今に至っても、ほぼ無いように思う。

2019-06-29 11:27:19
Harasawa.K @AaarcherK

人間と生き物との健全な共存のためには、動物園や水族館だけでできることには限界があるし、活動領域を生息地(域内保全)に広げることも必須になる。これからの動物園水族館に、教育や研究は不要という考えはナンセンスだし、エンタメ要素を全否定する態度も非現実的。持続可能な発展を考え続けたい。

2019-06-29 11:28:06
Harasawa.K @AaarcherK

過去12回で主たる論点は出ていることもあり、最終回はアッサリ。ただ、かなり考え方の転換を要するし、理論的にまだ整理され切っていないところなので、納得感はまだ無いかもしれない。とりあえずこのロジックでの論文を書かねばだし、実際の施設での検証も必須と思っています。

2019-06-29 11:29:58