哲学院生のアライさんによる哲学話

哲学史に関する「新発見」や「最新の研究」、「常識と異なる実情」などを紹介しているのだ!読んだ人が哲学書や解説書、論文などを読んで哲学に触れることが目的なのでぜひ気になった参考文献を読んで欲しいのだ! もしアライさんの言ってることに間違いがあったり、疑問に思うところがあったらコメントや質問箱、リプで教えてほしいのだ!(引用は気づかないことがあるのだ) ※基本的には、日本語の文献を紹介していくスタイルなので、アライさんの思想を発表しているわけではないのだ。 続きを読む
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哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑤【役割】 決まった仕方で選ばれた裁判役で一定期間だけ裁判所をつくることでこの恐怖を解消することができるそうなのだ。ちなみにMの想定する「判決」は裁判役の個人的意見ではなく、法律の文面を伝えることなのだ。ただ、法律が厳しすぎる場合には貴族院が出てきて緩和することも容認しているのだ。 pic.twitter.com/ndiuxWTGva

2021-08-21 18:57:23
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⑥【例外】 その他にも貴族が裁判を受ける場合や弾劾の裁判などでは、例外的に貴族院や庶民院が裁判に関わることも認めているのだ。以上は『法の精神』11編6章に載っている事だけど、2編4章では、「法の保管庫」という役割も主張されているのだ。この部分について詳しく見ていくのだ。

2021-08-21 18:57:23
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⑦【法の保管庫】 「法の保管庫」とは、「法が作られたときに法を宣言し、法が忘れられたときに法を想起させる」役割のことなのだ。これによって、変な法律をつくる君主を制限することができるのだ。そして驚くべきことにこの「法の保管庫」は常設でなければならないとMは考えているのだ。 pic.twitter.com/Tv8NwTaJ3G

2021-08-21 18:57:25
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⑧【君主政】 とはいえ、この「法の保管庫」は君主政に関する議論でしか登場しないのだ。というのも、君主政では「裁判役」の役割が共和政よりも重要だったからなのだ。THE君主政だった当時のフランスでは、裁判役はしっかり意見交換や調査をして判決に関わる形になっていたのだ。

2021-08-21 18:57:26
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⑨【共和政の陪審制】 これに対し、当時、より共和政っぽかったイングランドでは、「陪審」が有罪か無罪か判断し、そのあと「裁判役」が法律に載っている刑罰を伝えるという手順なのだけど、これなら裁判役(裁判所)は法律を読んで伝えるだけなのでらくちんなのだ。 pic.twitter.com/8VhEudkk41

2021-08-21 18:57:27
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⑩【高等法院】 そうすると、裁判役・裁判権力が強い裁判所はあくまで君主政の場合に限るのかもしれないのだ。実際の18世紀前半のフランスの高等法院(裁判所)では、最終審としての役割、王の立法を調査して修正要求をする力、書物の発禁処分などの公共の福祉を守る機能などをもっていたのだ。

2021-08-21 18:57:27
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⑪【高等法院2】 そのため、11編6章で言われる常設でない裁判所は高等法院とは違うのだ。高等法院は立法権力や執行権力のような力を持っていたのだ。とはいえMは、この高等法院の機能の中で「君主は裁判を行わない」という点を重視していたようで、その部分は権力分立論にとっておそらく重要なのだ。

2021-08-21 18:57:28
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⑫【高等法院3】 さらに、高等法院も初めは常設ではなく、必要に駆られて常設しなければならなくなった、とMも理解しているのだ。そのため、高等法院もかつては「常設ではない裁判権力」だったと言えるかもしれないのだ。

2021-08-21 18:57:28
哲学院生のアライさん(哲ライさん) @tetsugaku_arai

⑬【ミックス】 以上を踏まえると、『法の精神』全体における裁判権力には法の保管庫としての役割や王権の制限といったフランス高等法院の特徴、常設ではなく、諸個人の裁判を担うイングランド陪審制の両方の裁判権力の在り方が絡み合っていたと考えられるのだ。 pic.twitter.com/5YZ5Fn7ep2

2021-08-21 18:57:30
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⑭【ミックス2】 理論的には違うものが混じっている感じだけど、Mはおそらく矛盾しないものとして成立すると考えていたようなのだ。ただしのちの解釈者は矛盾するものとして理解していくようなのだ…。あとこの二つの裁判権力の理解が今後の歴史に影響を与えていくこともあったようなのだ。

2021-08-21 18:57:30
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⑮【まとめ】 モンテスキューは『法の精神』の中で①裁判権力を常設でない個人を裁くものとして捉えつつ、別の箇所で②「法の保管庫」として君主の権力を制限するものと考えたのだ。これらはフランス高等法院とイングランド陪審制の複雑な絡み合いの産物のようなのだ。 pic.twitter.com/Kmv5AByk0l

2021-08-21 18:57:31
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