【立ちどまった恋・完全版】福間健二 fukuma10b

一日一回ずつ10回完結でtweetされる、福間健二さんの詩tweetをまとめていきます。今回は【立ちどまった恋】の完全版。 「少しずつ死んでゆく人々と木々の青い影に囲まれ、よくわかった。ほとんど何もわかっていないことが。」──『立ちどまった恋3』より
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福間健二 @acasaazul

流れに乗る。流れに運ばれる。気持ちいいし、考える必要もなくてよかったが、いまは乗れない。ノース・ホスピタル、最後の呼吸をするきみの閉じられた目が見る線を横切ってしまったから。(立ちどまった恋1)

2011-05-19 06:35:49
福間健二 @acasaazul

熱に苦しむ斜面。どんな滑り方が許されるのか。自分で考えろ、ということなのだろう。コントロールできない夢のなかの小さな爆発に一喜一憂してたりしないで。考える。たとえば、雨という装置を信じないために。(立ちどまった恋2)

2011-05-20 06:15:49
福間健二 @acasaazul

少しずつ死んでゆく人々と木々の青い影に囲まれ、よくわかった。ほとんど何もわかっていないことが。この自由は、体の奥に隠すものがない。汗ばみながらのぼってきた病棟の屋上の、光に洗われた空。そこにも、もちろん、隠すものはない。(立ちどまった恋3)

2011-05-21 09:06:38
福間健二 @acasaazul

線路の向こう側の、行くべきレストランには、メールも電話も通じない。いまいるここでは、顔見知りのママたちが、なにか、ぼくが旧世界でしたことを問いつめている。それぞれ、ちがった溶け方をする唇と探求心。雨の夜の、怖い夢だ。でも、書いてみると、たいして怖くないね。(立ちどまった恋4)

2011-05-22 08:56:50
福間健二 @acasaazul

魔女たちの委員会。どうしてなのか。どの質問にも答えられない。言えそうなことでも、それを言ったらまずいという気がしてしまう。そして、まちがって、ここにいる、と思う。それがまちがっている。頭のなかには、きみのショートパンツ姿。ごめん、びしょぬれにさせて。(立ちどまった恋5)

2011-05-23 06:39:57
福間健二 @acasaazul

夜から夜へ。進行中の病気と修理。元どおりにならない北の現場。いちばん静かな蕾のきみを救いだせない。でも、拒否する。いかなる裁きも。どう動くかの選択はできない。命令に従うのでもない。決めないで、はじめる。決めないで、進んでゆくだけだ。(立ちどまった恋6)

2011-05-24 07:40:35
福間健二 @acasaazul

きのうのメモ。「歩くことは、まだできる」。つまり、生きることは、まだできる。歌うことも、まだできる。エロティックな絵、大きなお尻の絵を描くことも。で、きょうのメモ。「階段。キス。靴。毛糸の屑。魂胆を見破られる。」(立ちどまった恋7)

2011-05-25 07:58:26
福間健二 @acasaazul

飲む場所、食べる場所。言われること、書かれることを、ただの立ち上がるアクションで批評する者たちには距離をおいて、ぼくはここで痛みから自由になる。そしてイメージ、北。洗濯機に着ているものを全部放り込んで、きみはたぶん「まだ生まれていない」。(立ちどまった恋8)

2011-05-26 07:04:58
福間健二 @acasaazul

一日がすぎ、一週間がすぎ、ひと月がすぎ、さらに季節がめぐって、温度と湿度が競争してあがってくる、ひと晩何度でもの、廊下の恋。でも、この夜からきみのいる夜へどうしても行けない、と言えるほどの努力をぼくはまだしていない。(立ちどまった恋9)

2011-05-27 06:37:33
福間健二 @acasaazul

「死んでるみたいだけど、大丈夫よ。わたしたちが責任をもつわ」。だれのことだろう。声はしても、だれの姿も見えない夜の公園。ぼくの行く手には、北斗七星。そしてポールスター。きみの戻らない食堂のテーブルには、きっと、食べようとすると目がさめるごちそうが並ぶ。(立ちどまった恋10)

2011-05-28 06:13:07