『傑作民俗学漫画10選』――平成後期から令和にかけて――
- karaisan123
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四作目 竜と勇者と配達人 /十三世紀ぐらい・ヨーロッパ Amazonリンク: amazon.co.jp/gp/product/B07… 無料公開部分リンク: tonarinoyj.jp/episode/139320…
2020-02-03 16:06:50四作目は、『竜と勇者と配達人』! 今回紹介するどの作品ももちろん大好きなんだけれど、これは中でも個人的なイチオシ作品なのだ。
2020-02-03 16:06:58時代は十三世紀ぐらい・ヨーロッパらへんなのだ。なんで曖昧なのかっていうと、ようはこれ、中世ヨーロッパをモデルに抽象度を上げて、ファンタジー世界として再解釈した作品なのだ。おっもしろいのだ。
2020-02-03 16:07:05「民俗学的漫画」には大体三種類あって、「現実の時代、地域を現実に即して描いているもの」「現実の時代、地域をモデルに架空のファンタジーを通して描いているもの」「架空の時代、地域で民俗学的な研究を行っているもの」の三つなのだ。
2020-02-03 16:07:16『竜と勇者と配達人』は二つ目、「現実の時代、地域をモデルに架空のファンタジーを通して描いているもの」なのだ。ドラゴンも勇者も出てくるし、けれど彼らも時代に即した世知辛くもリアルな文化や経済の中に組み込まれているのだ。 pic.twitter.com/vcvQiwwBU9
2020-02-03 16:08:53カライさんが興味深いと思ったのは、まな板エルフこと主人公兼ヒロインの吉田のギャグだったり熱かったりする奮闘ぶりもだけれど、 「中世から近代への移行」というテーマを扱っていることだったのだ。
2020-02-03 16:09:04これは簡単に言うと「魔法から科学への移行」ってやつなのだ。曖昧さを是とする宗教=神が死に、科学による合理的思考が世界を塗り替えていく過程。 社会学的には人類史は「古代」と「近代」の二つに分けることができるのだ。 その間にあるのが中世で、近代の最先端が現代なのだ。
2020-02-03 16:09:22「英雄を殺す(不要にする)ための画一化と近代軍隊」、「路地の名前・住所とは政府が土地と個人を管理するために生まれた」、などなど。 コミカルだったり漫画的ファンタジーだったりの軽妙な描写で描かれていながらも、そこには人類の歴史上最大のパラダイムシフトが厳然と描き出されているのだ。
2020-02-03 16:09:32「浪漫を殺す時代のロマン」。そうとでも呼ぶべき、ゾクゾクするような時代の大きなうねりが、愉快な作風の奥底に渦巻いているのだ。
2020-02-03 16:09:38古代とは、人間が自然の一部、獣の一つであった時代なのだ。中世とは、人間が自然と自らを区切り始めた時代なのだ。近代とは、人間が世界を管理するようになった時代なのだ。
2020-02-03 16:09:44もちろん現代だって、人間なんて宇宙っていうでっかい自然の一部に過ぎないのだ? 文明だとか科学だとか、そういうものが「自然の外」にあるだなんて考えはおこがましいとも言えるのだ。 人間という動物による文明の発達だって、立派な自然の営みなのだ。
2020-02-03 16:09:55とはいえ、やはり我々は主観的な生き物なので、「自分達にとってどう考えるか」がやっぱり大事なのだ。 そういう意味において、中世から近代への移行は歴史的に最も重要なテーマの一つであり、それを描く『竜と勇者と配達人』は稀代の傑作と言えるのだ。
2020-02-03 16:10:03五作目 千年狐 ~干宝「捜神記」より~ /~四世紀・中国
五作目 千年狐 ~干宝「捜神記」より~ /~四世紀・中国 Amazonリンク: amazon.co.jp/gp/product/B07… 無料公開部分リンク: comic-walker.com/contents/detai… seiga.nicovideo.jp/comic/33974(感想多め)
2020-02-03 16:10:14五作目は『千年狐 ~干宝「捜神記」より~』なのだ。こちらも『配達人』と同じく史実をファンタジー解釈入れつつ描いているのだけれど、今度は原作があるのだ。 原作は千七百年前、古代中国四世紀に書かれた志怪小説集である『捜神記』。完全に古典なのだ。
2020-02-03 16:10:24ただ、『封神演義』みたいなもんだよって言うと伝わる人がいるかもなのだ。あれも中国の古典を小説化して、さらに漫画化したものなのだ。(え、アニメ? ここでは余白が狭すぎる……) 内容が変わる事も含めて、翻案作品のジャンルと言えるかもしれないのだ。
2020-02-03 16:10:39原作に合わせてオムニバス形式でもあるけど、メインの主人公は妖狐の廣天(こうてん)。 人間モードだと人を化かす超越的な妖異なのに、狐モードだとただの尻尾の多い毛むくじゃらのアホ気味な小動物なのだ。他の面子もそうだけど、ギャップが凄いのだ。 pic.twitter.com/LGLZHxIzMS
2020-02-03 16:12:08非常にコミカルな作風で、読んでみればわかるのだけどめちゃめちゃ笑えるのだ。 でもシリアス部分の深さは本当に千七百年分の歴史の重みがあるし、作者さんのギャグとシリアスの書き分けも本当に上手いのだ。……毎回言ってる気もするけど、要するにカライさんの好みがそういうやつなのだ。
2020-02-03 16:12:28例えば世界史に出てくる十三世紀のボッカチオによる『デカメロン』とか、「デカいメロンの話かな?」という大方の予想とテンションが大して変わらず、 「(堕落しまくってて)教会はクソ」「神父クソ」「みんなで集まってパーリーしようぜ!」「恋バナ」みたいなくだらなくて笑える内容が一杯なのだ。
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