『傑作民俗学漫画10選』――平成後期から令和にかけて――
- karaisan123
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そして、徹底的な取材・調査と研究の上で描かれる、極めてリアルなアイヌ文化及び日露戦争軍人やマタギなど、多岐に渡る「民俗学的魅力」なのだ。 道具の名前一つ、料理や調理法一つとっても詳細かつ魅力的に描かれ、当時を生きた人々の風俗が生き生きと描かれているのだ。
2020-02-03 15:58:19例えば「チタタプ チタタプ」と言いながら小刀で挽肉を作る料理、チタタプはメインヒロインのアイヌ少女アシリパさんが大好きで、作品の代名詞的なものともなっているのだ。 ……あとそのうん、「ウプチャヌプコロ」とか……。 pic.twitter.com/rjN9GJfbGf
2020-02-03 16:00:29作者の祖父が日露戦争に従軍した元軍人であり、哀れな歴史の犠牲者としての側面よりも「誇り高く強き人々」として描かれる軍人達はそうした作者自身が祖父に見た人物像をモチーフにしているそうなのだ。
2020-02-03 16:00:38まぁでもわりと軍人以外もメンタル&フィジカル化け物揃いなので、かなり過酷な半生を送ってきたらしい作者さんの根性と気迫が現れてる感もあるのだ。 この漫画のモブ、どいつもこいつも一筋縄じゃ死なねぇ……! ていうかモブという概念がねぇのだ……!
2020-02-03 16:00:47そしてアイヌについては、北海道で取材をする中で応じてくれたアイヌの人々から「可哀想なアイヌではなく、強いアイヌ」を描いて欲しいと期待されたことからも。 この作品における生き生きとした「その時代を生きた人々」らしいアイヌ像が生まれたそうなのだ。
2020-02-03 16:01:05フィールドワークの過程から製作背景に至るまで、間違いなくこの漫画は『民俗学的漫画』と呼べると思うのだ。そして言うまでもなく、大傑作なのだ。
2020-02-03 16:01:12三作目 乙嫁語り /十九世紀・中央アジア
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2020-02-03 16:01:22三作目は、『乙嫁語り』! こちらも知名度の高い作品なのだ。ただアニメ化もした金カムに比べると、民俗学系漫画好き界隈での知名度になるのかな? 当然傑作なのだ。
2020-02-03 16:01:36舞台は中央アジアと珍しく、一番イメージしやすいのは「モンゴル系遊牧民」みたいなくくりなのだ? でも多分、それともちょっと違ってくるのだ。
2020-02-03 16:01:48天真爛漫な狩人系ヒロインな辺りはアシリパさんっぽいのだ。二十歳年上奥さん、夫は十二歳のショタ、ただし史実通り。という中々ニッチな部分を初手で攻めてくる意欲作なのだ。 pic.twitter.com/0ftPpNNClk
2020-02-03 16:03:20夫婦モノなので、『未熟なふたりでございますが』『お酒は夫婦になってから』『スイようび』なんかの仲の良い夫婦系漫画が好きな方にもお勧めなのだ。 旦那が十二歳だからって舐めたもんじゃないのだ。この時代、この地域の十二歳とはほぼ成人男性であり、覚悟も据わっているのだ。
2020-02-03 16:03:39この漫画も「キャラが魅力的」という傑作漫画の前提を当然クリアしているのだけど、まず何よりもヤバいのが「刺繍の書き込み」なのだ。 作者さんが単行本あとがきでも書いているように、「刺繍の模様書いてる時が一番幸せ」という変態さんなのだ。 pic.twitter.com/BEsTBFuRu4
2020-02-03 16:05:27アニメ化して欲しいけど、最大のネックは間違いなくこの刺繍なのだ。ペルシャ絨毯、でググってもらえるとイメージしやすいのだ? 厳密にはペルシャでも絨毯でもないのだけれど、日本人的にはそれが一番伝わると思うのだ。
2020-02-03 16:05:37この地域では、「(家屋から衣服まで生活のすべてを構成する)布が最大の財産」であり、「生涯を通じて嫁入り道具としての布を、意匠を凝らした複雑な模様(刺繍)で織り上げていく」のだ。
2020-02-03 16:05:46なので現代人である我々からは考えられないほど、日常の中で「非常に凝った複雑な模様の布」が常に登場するのだ。
2020-02-03 16:05:58日本でも和服は何度も仕立て直して上等な着物から部屋着、子供服、手ぬぐい、おしめ、最後は雑巾と布を大切に再利用する文化はあったけれど、ここまで精緻な模様を誰もが縫い上げる文化は無かったのだ。
2020-02-03 16:06:00当然、世界的に見てもこの地域だけと言っていい特色なのだ。人類史規模の文化の独自性。すごいのだ。古代ペルシャにまで遡れる、中央アジア独特の文化みたいなのだ。
2020-02-03 16:06:10つまり、彼らはそのそれぞれ意味のある意匠を施した刺繍に、世界を見て、精神を写したのだ。 仏教における曼荼羅のように、刀鍛冶における日本刀のように、料理人にとっての料理のように、漫画家にとっての漫画のように。 人生を賭ける価値が、そこにはあったのだ。
2020-02-03 16:06:20そんな世界を生きる人々の、現代の我々とは違う、けれどだからこそ美しく愛おしい生き様をぜひ目にしてみて欲しいのだ。 ちなみにこの刺繍文化は現在も一部で続いているものなので、中央アジアに旅行に行ってみると現代でも実際に触れることができるのだ。
2020-02-03 16:06:29中央アジア、中東と言えばここ百年余りでは(どこぞの二枚舌国家さんとかのやらかしのせいだったりで)テロと紛争のイメージが強くなってしまって悲しいことだけれど、今も千年を超える文化と歴史が息づく素晴らしい地域でもあるのだ。
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