「ルソー・デューイ問題」、「子供が学校で本を読んでいると先生から外で遊べと言われる理由」……など、学校教員育成の場で使われているらしいテキストを読んだ感想
有斐閣アルマ、やさしい教育原理第三版2016年発行(第一版は1997年発行)を読んだので「感想・思ったこと」を投下していきます。基本的に辛辣な内容になります。
2020-02-16 13:53:34まず「人間の生物としての特徴」の話があるのですが、著者は(現代の)進化論の内容を全く理解しておらず、優生学を喧伝した人たちと五十歩百歩になっている。2016年発行で中立進化すら理解してないのがバレバレで進化を語るのはまずいですよ。
2020-02-16 13:56:11次にツッコんだのは「近代学校制度」が話の主題とは言え、いきなり何の断りもなくヨーロッパのルネッサンスから話を始めたことですね。一般・大学生向けの本でイスラーム文明に触れずにいきなりルネサンスが天から降ってきたような書き方もまずいでしょ。誰か指摘しなかったんですか?
2020-02-16 13:57:52「近代学校教育」を論じるにはヨーロッパ中心になってしまうのは仕方ないのですが、受験制度を批判するというスタンスを取るのであれば(日本にどの程度影響したかは諸説あるが)中国の科挙制は一言触れておくべきだったのではないですか?
2020-02-16 13:59:30でも主要な教育思想家を「ルソーとデューイ」にしてしまうと、フーコーが一番最初に思い浮かびますが、ポストモダン思想について全く触れることが不可能になって現代の教育にアプローチする道具を失うと思うんですが教育(学)関係者は一体どう考えているのか気になります。
2020-02-16 14:01:57ICTの問題など、時代の変化に伴う自然科学の進歩によって誕生した、19世紀的価値観で対処不可能な教育問題、及びそのような問題に「頭ごなしに否定する」以外の対処ができない日本の教育の問題を #ルソー・デューイ問題 と呼ぶことを勧めていきたい。
2020-02-16 14:03:44後半に「1960年代の学校紛争」と「1970年代の校内暴力」 を同列に扱っている個所がありましたが、この二つが同次元に見えるのはたぶん学校教育関係者だけで、哲学的社会学的には全く異なるレベルの問題だと思うんですけど、これも「ポストモダン」を解さないが故の問題ですね。
2020-02-16 14:06:061960年代の学校紛争は「社会主義・共産主義」というオルタナティブな「大きな物語」の産物である一方、1970年代以降の校内暴力・いじめ・不登校問題は「ポストモダンによる多極化・小さな物語の乱立」というのがお決まりの解釈だと思うのですが如何に?
2020-02-16 14:07:371970年代になると「高度経済成長によって物質的にみんなが豊かになり「なんのために生きるのか」という問題に一般大衆が向き合う羽目になった」結果の問題だと認識してもらってもよいでしょう。
2020-02-16 14:08:30#ルソー・デューイ問題 の厄介な問題は「ルソーを肯定する」と「文明化される以前の原始社会を肯定する」ことがセットでついてくることじゃないですかね。
2020-02-16 14:09:32この本だと「学校教育を通して、近代化都市化産業化によって失われた共同体としてのまとまりを取り戻す」という論が展開されている個所が複数あるのですが、これ「文明化される前が理想社会だった」っていうルソーの思想の現出ととらえるのが自然ではないかと思います。
2020-02-16 14:10:50ただ、「文明化される以前の社会」を肯定すると、「人権思想」を擁護するの滅茶苦茶面倒になりませんか?大丈夫?という疑念がわいてきます。「子どもの権利条約」とか散々取り上げているし著者たちはどういう認識なんでしょうか?
2020-02-16 14:12:16後「前近代・文明化される以前の社会」を理想化するのは勝手ですが、物質的に貧しい社会がどんな世の中か分かってます?大丈夫?貧しかったら教育はできないよ?というツッコミが脳から離れなかったのも事実(「貧しいと教育できない」は一応認めていましたが。
2020-02-16 14:15:26受験制度を批判するのは結構なのですが、非常に世俗的な(ニュースなどで大して検証もされず垂れ流されている記事と同次元の意味)内容に留まっていて驚きました。「教育に世俗的な批判をするな」という声は多いですが教育側が世俗と同次元の主張しかできなかったら何の意味もないのでは?
2020-02-16 14:18:27日本における受験競争の激化は「学費の安価な大学を造らず、学生の負担する授業料によって経営される大学が増備されてきた」歴史を持ち出せば終わる話なのに、そこを持ち出さずに「受験競争の激化がー」と言っても何にもならないと私は思うんですよ。
2020-02-16 14:20:00後「能力で与える教育を別にするのはよくないって子供の権利条約にも書いてある」「だから無試験で入学させて教育を受けさせるべき」という議論が目立つのですが、数学とか前の学年の内容を理解していないとついていけないですよね?という視点はありませんでした。
2020-02-16 14:21:36というか「算数数学・理科(後英語もか?)」の教科教育をどうしたらいいのか、という視点が全く欠如していて驚くほかない。というか「全く欠如しているからこういうことが主張できちゃうんだな」と納得するばかり、やはり算数数学の学力以外の学力は信用できない(暴論
2020-02-16 14:22:46デューイあたりにルーツがあるようなのですが、教育の内容は「子供の日常生活に基づいた、身近な経験に題材を求めるべき」という意見が「系統的に内容を教えるべき」という意見より強いようです。
2020-02-16 14:24:20で、授業や実践事例として国語や社会、道徳図工体育音楽などが挙げられており、それはまあ、分かる。そういう「身近な事例」から「一般的な事例」に拡張していける内容になってるし、それで十分「勉強」になる。
2020-02-16 14:25:40ところがですねー「内容を系統的に理解させるより、子供の身近な経験から学ぶ内容を選ぶべきである」という発想とは算数数学と理科が極めて相性が悪い、という当然の疑問は放置されてましたねー。
2020-02-16 14:26:44「子供の身近な経験」に頼っていたら「運動の三法則」や「ベクトル」「デテキントの切断」なんていつ気が付くんですか?という疑問は当然スルーされてましたね。
2020-02-16 14:27:41部活動もそうなんですけど、そこまで系統的な教科教育をやるのが嫌だとお思いなのであれば、もう授業の時間を一日4時間(午前中いっぱい)まで削減して後は学校行事とかで埋め尽くせばいいのでは?と私は思うんですよね。
2020-02-16 14:30:10で、なんでこんなに算数数学・理科教育と相性の悪い主張が大きくクローズアップされるのか、という疑問には終盤で答えが書いてありました。
2020-02-16 14:31:08