お好み焼きの歴史解説 なぜ広島は「重ね焼き」で大阪は「混ぜ焼き」なのか キーワードは「エロ」?!

秘密のケンミンSHOWにおいて拙著『お好み焼きの物語』が映りましたが、番組の内容と本の内容が異なっていたため、間違った知識が広がらないようあらためてお好み焼きの歴史を解説します
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近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

広島風の、店員が焼く重ね焼きですとこういう問題は起こりません。 具材や生地の容器は、店員の横にまとめておいていけばよいのですから。 材料を一人前ずつ分配して自分で焼かせる東京のお好み焼き店舗では、スペース効率的に混ぜ焼きが便利なんです。

2020-03-11 04:56:42
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他にも混ぜ焼きには、素人でも失敗が少ないという利点があります。 なにせ混ぜて焼くだけですから。 生地と具材の投入タイミングが違う乗せ焼き=重ね焼きは、火力や時間を間違えると、生地は黒焦げ、具材は生焼けといった事になりかねません。

2020-03-11 04:56:42
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さらに、混ぜ焼き方式は人件費の節約にもなります。 乗せ焼き=重ね焼きだと複数の皿やコップを配膳し、回収し、洗わなければなりません。 それが混ぜ焼きだとコップ一つですみます。

2020-03-11 04:56:42
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このような様々な理由があって、自分で焼く東京のお好み焼き店舗では、混ぜ焼きが主流になっていったのだと思います。 明日は、なぜ大阪だけが自分で焼く東京の混ぜ焼きスタイルを継承し、他の地方には伝わらなかったor伝わったが廃れたのか、その理由を考えてみます。

2020-03-11 04:56:42

6.大阪に「桃色遊戯」の混ぜ焼きスタイルが伝わったのは、大阪人がエロ好きだから?

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それでは、なぜ大阪だけが東京の店舗方式=桃色遊戯モデルを輸入、発展させたのでしょうか? 『お好み焼きの戦前史』およびその物理書籍『お好み焼きの物語』にはその理由が書いてありません。 amazon.co.jp/dp/B0794GC6TX なぜなら、わからないからです。

2020-03-12 05:17:13
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ただ、「証拠のない推論」ならばあります。 なので以下の話は話半分に聞いてください。 ヒントは「カフェー」と「回転寿司」にあります。

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明治時代末の銀座において、女給が西洋料理を提供する「カフェー」が生まれ、その流行は全国に広がりました。 カフェーの歴史については2018年8月26日から9月4日、11月28日から12月19日に書きましたので、twilogを参照してください。 twilog.org/ksk18681912/da…

2020-03-12 05:17:13
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初期のカフェーシーンを牽引した銀座のライオンでは、若く美しい女給が食べ物や飲み物を運ぶだけの健全な店でした。 このカフェーが大阪に上陸すると、エロサービスが過激化し、今日のキャバクラのようになり、昭和初期に東京に逆輸入されます。 pic.twitter.com/r9ows3Z71G

2020-03-12 05:17:13
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『明治・大正・昭和食生活世相史』(加藤秀俊)には次のように書かれています。 ”大阪のカフェーは、東京のカフェーがインテリ向きの社交サロン的なのであったのに比べて、全く違った形をとった。” pic.twitter.com/Ch6b2cHJ0H

2020-03-12 05:17:14
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”競争がはげしくなると、エプロンをとった女給たちは、胸元のあいた洋服などを着るようになり、店の中も、うすぐらいボックス席を設け、エロサービスをするようになった。”

2020-03-12 05:17:14
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”こんな、エゲツない大阪流のカフェーは、昭和五(一九三〇)年には銀座に進出し、それからのカフェーはすべて、この大阪流となってしまうのである。

2020-03-12 05:17:14
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”銀座は今や大阪カフェ、大阪娘、大阪エロの洪水である。" "大阪カフェの特色はまず第一にエロだ。大阪女給はエロ工場での熟練工である。” 使いこなしたいパワーワード「エロ工場での熟練工」。 昭和6年に発行された「銀座細見」における、当時の銀座のカフェーシーンを描いた一節です。 pic.twitter.com/q792QBDk3z

2020-03-12 05:17:14
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月刊食道楽昭和6年11月号にも、こうあります。 ”曾つて大阪のカフェー獨特のエロサーヴイスを以って銀座街頭に亂舞し銀座オンパレードの道化役者として東京人に大阪カフェーの持つて居る絢爛痴情の獵奇的な一幕を演じて東京人をアツと云はして勝ち誇ったのはついこの間の事である” pic.twitter.com/bMvCmSC1nd

2020-03-12 05:17:14
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食道楽昭和7年10月号では、なぜ大阪においてカフェーのエロサービスが過激化したのか、その理由を大阪人の気質に求め考察しています。 要約すると大阪人はエロと金儲けが好きだからだという、元も子もない分析なんですが pic.twitter.com/MKXOYvQRIJ

2020-03-12 05:17:15
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大正時代に東京で生まれたお好み焼き店舗は男女の出会いの場であり、風俗上問題がある桃色遊戯の場として、度々当局から手入れを受けます。 大谷晃一によると大阪にもこの桃色遊戯モデルが導入され、やはり当局から取締を受けたそうです。 pic.twitter.com/mMgp81Zxgl

2020-03-12 05:17:15
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大阪人のエロ好き。 それが、東京の桃色遊戯モデルが導入され、発展した一つの理由ではないかと思います。 そしてこの桃色遊戯モデルとともに、自分で焼く混ぜ焼き方式の「天もの」が「お好み焼き」として普及したのです。

2020-03-12 05:17:15
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明日は回転寿司を取り上げ、大阪人の「新しい仕掛け好き」について考察しようと思います。

2020-03-12 05:17:15

7.自分で焼く東京スタイルのお好み焼きは、新しいカラクリ好きの大阪人にアピールした?

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大阪で生まれ、世界に広がった発明に回転寿司がありますが、同じく大阪で生まれた発明に「回転天ぷら」があります。皿にのった天ぷらがレーンを廻るのではありません。天ぷらを揚げる料理人が回転するのです。 pic.twitter.com/tGdpQ9anJu

2020-03-13 04:48:34
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料理人がお客の正面で天ぷらを揚げると、揚げ場ごとモーターで回転し、隣のお客の正面に移動してまた天ぷらを揚げます。くるくると回りながらこれを繰り返していくのです。 (今回は過去の発言の再掲が多いです) twitter.com/ksk18681912/st…

2020-03-13 04:48:34
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料理人がお客の正面で天ぷらを揚げると、揚げ場ごとモーターで回転し、隣のお客の正面に移動してまた天ぷらを揚げます。くるくると回りながらこれを繰り返していくのです。

2018-03-15 03:01:53
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大阪には「ケレン味のある」「見た目にインパクトがある」「それでいて実用性がある」新しいカラクリを生み出すことに長けている文化があると思います。 回転寿司がそのいい事例ですね。 年寄りの皆さん、生まれて初めて回転寿司に出会ったときの、あのインパクトおぼえていますか?

2020-03-13 04:48:34
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回転天ぷらも見た目のインパクトだけでなく、「皆平等に揚げたてを食べることができる」という実用性も兼ね備えていました。 回転天ぷらは残念ながら広まらなかったのですが、回転寿司と同じように、インパクトと実用性、ケレン味を兼ねた大阪発の発明があります。

2020-03-13 04:48:35
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板前割烹です 写真はミシュラン2つ星のおかもと 今ではおなじみのこのカウンター方式の和食店、大正時代に大阪で生まれたシステムなんです。 pic.twitter.com/hfSz9s8ssu

2020-03-13 04:48:35
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詳しくは過去の発言をたどっていただきたいのですが。 twitter.com/ksk18681912/st… twitter.com/ksk18681912/st… twitter.com/ksk18681912/st… 板前割烹は大正時代の先端テクノロジーを活用した、大胆な創意工夫が生んだ大阪人の発明だったのです。

2020-03-13 04:48:35
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これは菱川師宣が描いた、17世紀の吉原の厨房(吉原の躰 東京国立博物館蔵)。現在の飲食店の厨房とは大きく異なりますが、パッと見て一番異なる点は、料理人が全員座ったり中腰で、床面で調理していることです。 pic.twitter.com/wOCRqTod56

2018-03-30 03:06:41
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これは女諸礼集二巻(1660年)に描かれた、武家の台所(国会図書館蔵)。大きなかまどが2つ、小さなかまどが5つあります。よく見て下さい。かまどに煙突がありません。なぜかわからないのですが、江戸から明治の台所って、排煙に無頓着な場合が多いのですよね。 pic.twitter.com/6qHOHCZs7r

2018-03-31 08:51:32
近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

これは貝塚発見で有名なモース博士が描いた、明治時代の日本の魚屋の簡易な生け簀。海水を右の大樽に入れ、竹のパイプに穴を開け、桶に入った活魚に海水をかけます。日本橋魚河岸には、巨大水槽を使ったもっと大がかりな生け簀もありました。 pic.twitter.com/jHpLTvfAmM

2018-04-01 03:22:00
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