お好み焼きの歴史解説 なぜ広島は「重ね焼き」で大阪は「混ぜ焼き」なのか キーワードは「エロ」?!

秘密のケンミンSHOWにおいて拙著『お好み焼きの物語』が映りましたが、番組の内容と本の内容が異なっていたため、間違った知識が広がらないようあらためてお好み焼きの歴史を解説します
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近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

作家の吉村昭は昭和2年東京生まれ。 同世代の東京下町っ子がそうであったように、吉村の子供の頃のお出かけ先と言えば、浅草でした。 pic.twitter.com/Yw2Czr0LY1

2020-03-10 05:02:00
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吉村は浅草で、お好み焼き屋に入ることがありました。 ”お好み焼屋で食べるものは、もんじゃ焼き、どんどん焼きと同じであるが、しゃれた店がまえで、出されるものも清潔で、味もよかった” pic.twitter.com/PUFcNQScn2

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”客に連れられた芸者や半玉の姿もあった”と語るように、当時の浅草のお好み焼き屋は男女のデートの場として機能していました。 確認されている中では大阪最古の店、昭和12年開業の以登屋(現在は閉店)もまた、この東京モデルを大阪に移入した店でした。

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dancyu1991年12月号において、以登屋二代目女将は次のように証言しています。 ”「最近のお客さんはお好み焼きを食べるために来はりますけど、その昔は違うて、お遊びが目的やったんですよ」” pic.twitter.com/7sNGgXbSkt

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子供の頃の二代目女将は”芸者と旦那衆の不思議なやり取りを盗み見ていた” ”「いろはのいの字はこう書くのん?」”と可憐な芸者が薄い生地の上に紅生姜をそっと置く” ”「そや。そや。目玉を添えたら、おまえの顔や」若い旦那はグリン・ピースを2個落とす ”

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以登屋のシステムは珍しいシステムで、焼台の横にねぎやこんにゃくが置いてあり、客はそれを自由に乗せたり混ぜたりできたようです。なので、混ぜ焼きか乗せ焼きかはお客さん次第です。

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以登屋以外の事例を見ると、東京も大阪も、生地と具材を一つのカップに入れてそれを混ぜて焼く混ぜ焼きです。 吉村昭が体験したお好み焼き屋も、このシステムでした。

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”現在のようにごてごてと大盛りにされた無粋なものではなく、ホーローびきのカップに、牛のひき肉、キャベツ、干しえび、さきいか、餡などがそれぞれ入ったものを註文し、鉄板で焼く”

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写真は横浜市日の出町のお好み焼き屋「みかさ」の「いかてん」です。 昭和初期の浅草のお好み焼き屋と同じく、ホーロー引きのカップに生地とスルメ(さきいか)が入って提供されます。 みかさの創業者は銀座で修行したので、東京の伝統を引き継いでいるわけです。 pic.twitter.com/9LlBkmwA9n

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このカップの中身をスプーンで混ぜて、焼きます。 写真がブレブレでもうしわけない。 pic.twitter.com/2FyEhq1OR1

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作家の大谷晃一が昭和14年に体験した大阪のお好み焼き屋も、カップに生地と具材をいれて混ぜて焼く方式でした。 pic.twitter.com/bphjscJE2x

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”名が変わって、お好み焼きという。卵を入れて溶いてある。エビ、イカ、牛肉、それに山芋やキャベツなどと具が増えて上物になっている。溶いた小麦粉と具をみんな一つのアルマイト・カップに初めから混ぜて出てくる。具を自分で置く作業がない”

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”みな、つい立てや仕切りをした。大阪の食べ物屋はあまりしないのだが、これだけは別であった。小間に暖簾をかけ、個室もできた。男女がしんねこを決めこむ。これは飲食店ではなくて風俗営業だと、警察がうるさく取り締まりをすることになった”

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”大阪の食べ物屋はあまりしないのだが”というのも当然で、このビジネススタイルは東京のお好み焼き屋の桃色遊戯モデルをそっくりそのまま移入したものだからです。 こうして大阪に「男女がデートする」「自分で焼く」「遊びの」「混ぜ焼きのお好み焼き」が広がって行きました。

2020-03-10 05:02:03
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明日は、なぜ自分で焼くお好み焼きは混ぜ焼きになるのか、そしてこの東京スタイルがなぜ大阪にだけ広まったのかを考えます。

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5.なぜ東京のお好み焼き店舗は、混ぜ焼きとなったのか。その3つの理由。

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この写真は昭和11年の東京神田にあったお好み焼き店の写真 半玉(芸者見習い)のお姉さんたちが焼台を囲んでお好み焼きを焼いています。 白衣の男は店主。この白衣、当時の割烹着なんだそうです。 pic.twitter.com/RHU6bc3ac2

2020-03-11 04:56:39
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焼台を拡大してみましょう。 右のソース瓶の右隣に、スプーンが入ったコップがあります ここに生地と具材をいれて、スプーンで撹拌し混ぜ焼きにするのです。 pic.twitter.com/HPR0zP0VjG

2020-03-11 04:56:40
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これは昭和10年、靖国神社近くにあったお好み焼き屋の焼台写真。 男性の左側にお盆があり、やはりスプーンが入ったコップがあります。 神田のお好み焼き屋もそうでしたが、焼台の鉄板周りのスペースが狭くて、ごちゃごちゃしがちです。 pic.twitter.com/zqMi44Hso0

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これは現在のお好み焼き店「みかさ」の焼台。やはり物を置くスペースが狭いです。 焼台といいコップといい、昭和10年代から変わっていないことがわかります。 コップに入っているのは紅生姜をいれた「しょうがてん」。実際に手に取ると、このカップかなり小さいです。 pic.twitter.com/qzqB3nkAaq

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これは現在のお好み焼き店「松浪」の焼台。 物を置くスペースが狭くて、皿がはみ出してしまいます。 このように、東京の自分で焼くお好み焼き屋の焼台は、物を置くスペースが狭いのです。 pic.twitter.com/IC4NX7gxvm

2020-03-11 04:56:41
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実際に店に行ってみるとわかりますが、焼台周りのスペースの狭さは、かなり不便です。 じゃあ広くすればいいかというと、そうも行きません。 広くした分鉄板との距離が遠くなるので、今度は焼くときに不便になるのです。

2020-03-11 04:56:41
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鉄板との距離は縮めたい、しかし物を置くスペースは広いほうがいい。 この相対する条件の妥協点を探すと、写真のようなやや狭い焼台周りのスペースにたどり着くのだと思います。

2020-03-11 04:56:41
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焼台周りのスペースの狭さ。 これが東京のお好み焼き屋が混ぜ焼き方式になった理由の一つだと思います。 なにせ混ぜ焼きならば、コップを一つだけ置けばよいわけですから。 pic.twitter.com/R3e7YQOYwI

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これが乗せ焼き=重ね焼きとなると、生地と具材を別々の皿やコップに入れて提供しなければならないので、焼台周りのスペースがごちゃごちゃして混乱するわけです。 自分で焼く→焼台周りのスペースが狭くなる→スペースを節約できる混ぜ焼きになる となるわけです。

2020-03-11 04:56:41