お好み焼きの歴史解説 なぜ広島は「重ね焼き」で大阪は「混ぜ焼き」なのか キーワードは「エロ」?!

秘密のケンミンSHOWにおいて拙著『お好み焼きの物語』が映りましたが、番組の内容と本の内容が異なっていたため、間違った知識が広がらないようあらためてお好み焼きの歴史を解説します
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近代食文化研究会@新刊『なぜアジはフライでとんかつはカツか?』発売中 @ksk18681912

京都に関しては事例が少ないのでなんとも言えませんが、広島と同じく屋台がそのまま店舗化したので、「乗せ焼き」=「重ね焼き」が主流になったのかもしれません。 ところが大阪の場合は他県と異なり、屋台では乗せ焼き、店舗では混ぜ焼きが主流となっていきます。

2020-03-07 05:00:26

3.大正時代の東京で大人向けのお好み焼き店舗が誕生 そこでの焼き方は「混ぜ焼き」だった

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東京の「天もの」と広島の一銭洋食の違いは、東京においては「混ぜ焼き」「乗せ焼き=重ね焼き」2つの手法が混在したのに対し、広島にはなぜか後者の「乗せ焼き=重ね焼き」の手法しか伝播しなかったことです。

2020-03-08 05:14:45
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この「乗せ焼き=重ね焼き」の屋台手法がそのまま店舗化したために、広島の店舗においても「乗せ焼き=重ね焼き」が主流となったのですところが、染太郎のような東京のお好み焼き店舗の成り立ちは、広島とは異なるものでした。

2020-03-08 05:14:46
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お好み焼き発祥の地東京では、全国に先駆けて大正時代には大人向けのお好み焼き店舗が誕生します。 しかしそれは、子供向け屋台のお好み焼き(どんどん焼)とも、それを店舗化した広島の一銭洋食店舗とも異なる性格を持っていました。

2020-03-08 05:14:46
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現存する店の中では東京で一番古いお好み焼き店、浅草染太郎。 風情のある店構えです。 暖簾に「風流 お好み焼 染太郎」とあります。 pic.twitter.com/L7fHib3sbN

2020-03-08 05:14:43
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高見順の小説『如何なる星の下に』には、この浅草染太郎をモデルにした「惚太郎」が登場します。 この小説によって、我々は昭和10年代の染太郎の雰囲気を知ることができます。 pic.twitter.com/DLrlLTKCdw

2020-03-08 05:14:44
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『如何なる星の下に』で、主人公がお好み焼きを焼く場面です。 ”お好み焼の「ビフテキ」である。その「ビフテキ」というような、(中略)ちょっと複雑な操作を必要とするものは、私は美佐子に調理を頼んだ。(中略)それは、焼き方が難しいから未熟な私の手に若干負えないせいもあるけど”

2020-03-08 05:14:46
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主人公と元踊り子の二人が、染太郎(惚太郎)において、”お好み焼の「ビフテキ」”を焼く場面です。 このように、東京の古いお好み焼き屋では店員ではなく客が自分で焼きます。 そしてこの場面のように、お好み焼き屋は「男女の出会いの場」としての性格も持っていました。

2020-03-08 05:14:46
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屋台から発展した広島の店舗では「店員が焼く」「料理・食事」としてのお好み焼きを提供していました。 一方、元祖である東京のお好み焼き店舗は「客が焼く」「男女の出会いの場の遊び」という特徴がありました。

2020-03-08 05:14:46
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この店舗の性格の違いが、焼き方にも反映します。 東京の店舗におけるお好み焼きの「天もの」は、混ぜ焼きが主体となったのです。 そしてこの東京の店舗スタイルが、大阪にコピーされて混ぜ焼き文化が伝わることとなります。 明日に続きます。 pic.twitter.com/GlHvJRtjHt

2020-03-08 05:14:47
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4.東京の「桃色遊戯」お好み焼き店舗ビジネスが、混ぜ焼き方式とともに大阪に伝播、以降大阪のお好み焼きは混ぜ焼きとなった

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”桃色事件から”お好み燒”恐慌 新しく取締規則” 昭和12年の読売新聞記事です。 ”中學生や女學生を中心の驚くべき桃色クラブ” pic.twitter.com/qa90diYknt

2020-03-09 04:55:58
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””お好み燒”でまた桃色遊戯 チンピラ七人組” これも昭和12年の読売新聞記事。 桃色なんとやらは、今の言葉で言えば不純異性交遊のことです。不純異性交遊って言葉も古いか。 pic.twitter.com/MJUtz7VEWq

2020-03-09 04:55:58
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この桃色遊戯事件の実態がどのようなものであったかは、『お好み焼きの戦前史』を参照してください(宣伝)。 amazon.co.jp/dp/B0794GC6TX

2020-03-09 04:55:58
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大正時代の浅草オペラに、オネエキャラの男性がいました。 浅草オペラの男優、澤マセロです。 イラストは『川越の書生さん』好評発売中の幹本ヤエさん。 bit.ly/39AciYA pic.twitter.com/1wTLpLfOOW

2020-03-09 04:55:59
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『お好み焼きの戦前史』における最古のお好み焼き店舗事例は。この澤マセロとオペラ界のスーパスター田谷力三が、女性ファンとお好み焼きを焼いていたという浅草の事例です。 最初の事例からして、東京のお好み焼き店舗は男女の出会いの場、デートの場だったんです。

2020-03-09 04:55:59
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屋台から進化した広島のお好み焼き店舗では、「男女がしっぽりデート」というわけにはいきません。 広島では店員がお好み焼きを焼きます。 目の前でお母さんが焼いていたり、店員が度々席にやってくる店舗では、男女の秘め事は進行しにくいのです。

2020-03-09 04:55:59
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ところが、東京のお好み焼き店舗は、材料を受け取ったら自分で焼く方式。 最初に注文の品がきたら、後は二人だけの世界。 おまけに個室があったり上がり込みでも衝立があったりするものですから、桃色事件も起きようというものです。 pic.twitter.com/m9ys2lCQFr

2020-03-09 04:55:59
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東京のお好み焼きの店舗は、桃色遊戯を付加価値として生まれたビジネスモデルといえるでしょう。 だから、自分で焼かなければ意味がないのです。 そこが純粋な「食事の場」である、広島のお好み焼き店舗と異なるところです。

2020-03-09 04:55:59
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”なんでも、銀座裏のお好み焼き屋が、密会所みたいになって、風俗上の取り締まりであげられたということがあったのが、昭和六、七年ごろのこと” 大正3年銀座生まれの学者池田彌三郎はこのように回想します。 お好み焼き第一次ブームの際に、桃色遊戯の取り締まりがあったようです。

2020-03-09 04:56:00
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大正時代の東京に生まれた「桃色遊戯+お好み焼き」ビジネスモデルは、大正時代から昭和初期に第一次ブーム、昭和10年代に第二次ブームを引き起こします。 そして第二次ブームのときに、桃色遊戯とともにこのビジネスモデルが大阪に上陸するのです。

2020-03-09 04:56:00
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去年お亡くなりになられた作家の田辺聖子は昭和3年生まれ。 彼女が女学校の生徒だった昭和16、17年に、桃色遊戯のお好み焼き店舗方式が、東京からやってきました。 pic.twitter.com/Q3WRZ3NCu3

2020-03-09 04:56:00
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”私が女学生のころは「お好み焼」という名称が東京からはやり、一軒の店になったりしていた。” ”町のお好み焼き屋に男の子と二人で入ったいうたら、代々いい継がれるぐらいセンセーショナルなことだったんよ。(笑) ”

2020-03-09 04:56:00
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大阪の子供向け屋台における一銭洋食は乗せ焼きでしたが、東京から新たにやってきた「お好み焼き」は、自分で焼く混ぜ焼き方式でした。 以降、大阪では「お好み焼き」という名称と、混ぜ焼き方式が定着することとなります。 明日に続きます。 pic.twitter.com/Izw3uowEaI

2020-03-09 04:56:01
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