「マズローの欲求ピラミッド」はもう古い。これからは「ケンリックの欲求ピラミッド」

まあたしかに上の方がよーわからんとは思ってた>マズロー
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サピエンスの生態観察 @Sapiensism

このことを日頃から思い出すためには、人間に対してふつうわれわれが適用する説明を、生物学的な理由という進化心理学のフレームによって解釈し直していこうとする態度が役に立つ。

2020-11-27 21:50:21
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

人間に対してふつうわれわれが適用する説明とは、インタープリターをつかってでっち上げられた人文学的な理由だ。たとえば文豪たちは「あの子とセックスがしたい」と自分が感じることの理由についてカッコいい説明や文章表現をいくつも考えついてきた。それはアートだがサイエンスではない(と思う)。

2020-11-27 21:52:18
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

この態度を意識するためには、他の種との比較が大切だ。 「母ブタは子ブタをなぜ育てるのか?」という話について考えてみよう。 そこで誰かが「ブタの母親としての誇りと価値観を満たすためだ」と言ったなら、あなたはどう思うだろうか。 pic.twitter.com/n2NCgJHb3X

2020-11-27 21:53:01
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“ ブタの母親としての誇りと価値観を満たすために、母ブタは子ブタを育てる、だって?” :きっとわれわれはバカバカしい理由の説明に笑ったあと、「ハッ」とするだろう。

2020-11-27 21:53:55
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

われわれはなぜ、ブタの行動の説明については「それは科学的な説明になっていない」とツッコミを入れようとするのに、人間の行動の説明にはそういうことをせず、「フムフム、この母親は、自らの母親としての誇りと価値観を満たすために子を育ててるのだな」などと納得してしまうのか?

2020-11-27 21:54:14
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

進化論哲学者のダニエルデネットは、その納得感自体が進化によって心にそなわった、人間の脳の特徴だと主張する:われわれは “理由を提供しあうゲーム” を行う種なのだ。

2020-11-27 21:55:37
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

そういうわけで、進化心理学では、人間が口で説明する「理由」は耳半分にして、本当の理由───すなわち "隠れた生物学的動機"(hidden motives) のほうに注目する。

2020-11-27 21:56:18
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

つまり、われわれ人間の行動の説明にも、他の種と同じく 〈生物学の物差し〉 を使うということだ。 pic.twitter.com/YJ1gExSWo9

2020-11-27 21:56:51
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サピエンスの生態観察 @Sapiensism

なぜなら、人間の心に備わっている“隠れた生物学的動機”とは、他の動物たちと同じように、種の生息環境(=人間の場合は先史時代の部族社会環境)において生じた自然淘汰(=進化)によって、あたかも戦略的にデザインされているものだからだ。

2020-11-27 21:57:13
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

〈マズローの欲求理論がヤバイ点❷〉: 規範(norm)と事実(fact)の区別がなされていないこと さて、マズロー理論のヤバイ点二つだ。なぜこの点を強調するのかというと、ホモ・サピエンスという動物は、規範的な正しさと事実としての正しさを認知的に混同するように進化してきた種だからだ。 pic.twitter.com/TzqlHeYDA3

2020-11-27 22:00:02
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サピエンスの生態観察 @Sapiensism

規範とは「こうあるべき」ということだ。事実とは「実際こうである」というファクトだ。 なぜその二つをアタマで混同するようにヒトは進化してきたのか?:キーとなるのは「正しさ」という感覚になる。

2020-11-27 22:00:33
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

────ここで「正しい」という用語をデジタル大辞泉で引いてみよう。 >ただし・い【正しい】 pic.twitter.com/6zo4sl8FAF

2020-11-27 22:01:25
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サピエンスの生態観察 @Sapiensism

────お分かりだろうか?「正しい」という形容詞には、ファクトとしての正しさと、規範としての正しさの両方の意味が含まれているpic.twitter.com/5jBcMDPDEF

2020-11-27 22:02:10
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サピエンスの生態観察 @Sapiensism

じつは、この「二つのタイプの正しさの混同」は、世界中の言語に共通に確認される現象だ。

2020-11-27 22:03:20
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

「進化とは淘汰である」ということを思い出してほしい。ハーバード大の進化人類学者リチャード=ランガムの主張によれば、われわれホモ=サピエンスは、先史時代の部族社会環境において「正しくない者を淘汰する」という淘汰圧を作用させてきた。 twitter.com/sapiensism/sta…

2020-11-27 22:04:42
🐒 @Sapiensism

「それを"間違える" と、致命的なことになりかねない。この危険な世界を上手く交渉し生き延びてきたのは、私たちの先祖であり、それを正しく理解していた人たちだったのだ」。 ─ R.Wrangham(2019)『The Goodness Paradox』, The Evolution of Right and Wrong(ただしさとあやまちの進化)

2020-10-15 23:38:57
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

「規範から逸脱したものを処刑にして遺伝子プールから除外する」という人類社会のみで生じたこの特殊な淘汰圧によって、ホモサピエンスの脳では、"ファクトとしての正しさ" と "規範としての正しさ" の認知的混同が生じたと考えられている。 twitter.com/sapiensism/sta…

2020-11-27 22:06:38
🐒 @Sapiensism

なぜ人類は規範を守る動物として進化したのか?:先史社会ではどこも、進化人類学者R.ボイドの表現を借りれば「気味の悪いカルト宗教」的コミュニティが形成されていた。そこにはJustice、つまり裁きがあり、掟破りは簡単に告発の対象となった。究極の制裁(エクストリームサンクション)を誰もが恐れた pic.twitter.com/ZXZQVOnVkD

2020-10-30 10:15:35
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

────たとえば、先史時代の部族社会環境に付き物の「タブー」について考えてみよう。 pic.twitter.com/VtQEDdxS8f

2020-11-27 22:07:19
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サピエンスの生態観察 @Sapiensism

サピエンス社会においては、モラルやルールの真実(=ファクト)を暴こうとする者や、宗教的タブーを暴こうとする者は、社会的な淘汰圧によって消え去ってしまう。かつて地動説を唱えたジョルダーノブルーノは火炙りになった。同様の淘汰圧がはるか昔から人類の先史社会には存在していた。

2020-11-27 22:09:54
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

サピエンス社会においては、モラルやルールの真実(=ファクト)を暴こうとする者や、宗教的タブーを暴こうとする者は、社会的な淘汰圧によって消え去ってしまう。映画『ミッドサマー』は悪い冗談ではない。人類の先史社会はどこもあのようなカルトが社会を支配していた。 pic.twitter.com/doeapgm7eT

2020-11-27 22:12:02
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「なぜそんなタブーやルール(規範)があるのか?」と問う行為自体が、我々が進化してきた環境:部族社会では非常に危険な行いだった。

2020-11-27 22:12:44
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

史実に残る人類の歴史上においても、宗教的タブーに「なぜ」を問う者は適応度を引き下げられてきた───"問いかける"という行為自体に淘汰圧が強くかかるのだ。 なぜならその"疑問を呈する"という行為自体が、部族集団全体に対する裏切りの態度や意図を示すことにあたるからだ。 pic.twitter.com/9WpiNA1XJk

2020-11-27 22:13:50
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サピエンスの生態観察 @Sapiensism

たとえばイスラム過激派の社会で「ムハンマドは本当に預言者なのか?」と疑問を投げかける人を想像してほしい。その人は殺されたり、社会的評判を引き下げられたり、ゴシップによって侮辱されたり、結婚相手として避けられたりせず、うまく後世に自分の遺伝子を残していけるだろうか?: 答えはノーだ

2020-11-27 22:14:20
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

それゆえ、身の安全と生命維持の確保のために、われわれの脳には進化的に"正しさ"に関してバイアスがかかるように進化していて、〈規範的な正しさ〉をあたかも〈ファクト〉のように扱ってしまう。

2020-11-27 22:15:09
サピエンスの生態観察 @Sapiensism

ダン=デネットは、『はだかの王様』の童話を引用した上でこう述べている: “ 嘘と神話が、「万人の知恵」として、際限なく生き残り続けることがある。理由は簡単で、正体が暴かれる可能性それ自体が、〔美徳につきものの〕タブーによって、抑え込まれるからなのだ ” (Dennett 2006 『解明される宗教』) pic.twitter.com/39qY5NW4uT

2020-11-27 22:17:00
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サピエンスの生態観察 @Sapiensism

さて、諸君に問おう、王様は裸か? :教師の投げかけた質問に対する答えを「間違った」生徒は、叱りつけられる。それは "道徳的な誤り" なのか、"ファクトではないという意味での誤り" なのか、という点をまったく区別せずに────だ。 pic.twitter.com/aj0S1Dl8zV

2020-11-27 22:17:41
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