くろぐだの奇妙な冒険 第11巻 ～魂の重さ～

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 第三十二話「魂の重さ」 1 「すいません…！怪我人なんです！スマホを貸して貰えませんか…？」 ルロイは路地を歩いて来たゴスロリの女にそう言った。一瞬、ルロイを見る女。だが、ルロイを押し退けてリカルドの方に歩みを進める 「あ、あの！」 女を呼ぶルロイ

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#くろくだの奇妙な冒険 2 だが女は聞こえていないのか、リカルドの直ぐ側に立ち、リカルドを蹴った 「！？」 「…起きろ」 痛みに身体を捩り、目を開けるリカルド。一瞬驚きに染まる表情。だが、直ぐに全てを理解した 「…ぴえろ…ちゃんだよね…」 ぴえろ―鴉はそれには答えず、銃口を突き付ける

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#くろくだの奇妙な冒険 3 「…分かってる。私が虐められていた貴方達を無視した事を…だから…だから貴方達は…」 「黙れ」 一発。銃弾がリカルドの脇腹を貫いた。リカルドは悲鳴を上げる事無く、一瞬身動ぎをして顔を苦痛に歪める。だが、何処か達観した表情でもあった 「な…何するんですか！」

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#くろくだの奇妙な冒険 4 慌てて駆け寄ろうとするルロイの足元に、鴉は鉛玉を撃ち込んだ 「お前は後で殺す。コイツは今殺す」 再び銃口をリカルドに向け、吐き捨てる様に言う鴉。その瞳には、純粋な殺意のみがあった 「…そう…だよね。恨んでるよね…」 「当たり前だ。楽には殺さない…！」

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#くろくだの奇妙な冒険 5 絞り出す様なリカルドの言葉に、鴉は銃弾と共に答える。そして、銃口は肺を撃ち抜こうと― 「…！」 空を切り裂く、ルロイの拳。鴉はそれを避け、自らのスタンドを出現させた 「絶対に…絶対に、殺させない！」 「殺ってみろよ…！」 そう鴉が言った瞬間、スタンドが変化した

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#くろくだの奇妙な冒険 6 それまでスタンドの両手足を縛っていた鎖は引き千切れ、天使は翼を大きく開く。胸元にはメーターが現れ、図上の光輪は更に光を増した それは、天使だった。殺戮と虐殺を司る、死の天使。鴉に似つかわしく、最も似合わないスタンド 「…魂のルフラン。それがオレのスタンドだ」

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#くろくだの奇妙な冒険 7 「フィール・マイ…ハート！」 腰に手を当て、バックルを出現させるルロイ。そして右手を前に出し、気合いを貯めて両腰のスイッチを押した 「変身！」 刹那。ルロイの身体は戦士のそれに変わる。鎧の様な胸当てや両手足の金具、黄金の角が輝く頭。それは、紛れもない英雄の形

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#くろくだの奇妙な冒険 8 ジリジリと近づき、構えのポーズを取る二人。戦端を開いたのは、二人の居る路地の側を通り過ぎた救急車だった 「はぁっ！」 「オラッ！」 互いの拳がぶつかり、空中で脚と脚がせめぎ合う。単純な暴力の競い合いは、直ぐに決着が着いた 「今までのダメージを…返すぜ！」

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#くろくだの奇妙な冒険 9 そう鴉が叫び、手をルロイに当てた。途端、ルロイの身体は面白い様に吹き飛ぶ 「がッ…は…っ！」 「痛ェか？痛ェよなあ…テメェ自身の拳の力はよぉ！」 ルロイは触れられた腹部を触る。装甲がボロボロに崩れ、素肌が雨に濡れていた 「もう一回分あるぜ、テメェの力はよ」

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#くろくだの奇妙な冒険 10 そう言い、ルフランは胸元のメーターを指差した。メーターはほんの少しだけ赤いゲージが貯まっており、それがゆっくり少なくなって来ている 「が…がは…ッ！」 無理矢理起き上がろうとするルロイ。だが、脚はフラつき口からは血が流れ出る。内臓のダメージがあるのだ

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#くろくだの奇妙な冒険 11 スタンドも形を保てず、次第に鎧が溶ける様に消える。そんなルロイを見る、鴉の冷たい視線 「…まずはテメェから殺す…」 その瞳には、憎悪と復讐の炎が揺らめく。そして、ルフランは拳を振り上げ― 「…え？」 ルロイは、死ななかった。否、拳が当たらなかったのだ

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#くろくだの奇妙な冒険 12 「…殺すなら…私だけで…良いでしょ…？」 頭上から降る、リカルドの声。痛む身体を無理矢理起こすと… 「り…リカルド…？」 リカルドの身体を、ルフランの拳が貫いていた。ルフランが引っこ抜くと、リカルドは糸を切った様に崩れ落ちる 「リカルド！おい、リカル―」

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#くろくだの奇妙な冒険 13 「騒がしい」 「がッ！」 リカルドを抱き寄せるルロイを、鴉は蹴り上げる。そして、息も絶え絶えなリカルドを掴み上げ― 「ぴえろ…さん…？」 動きを止める鴉。声のした方に視線を向ければ、傘を落として驚愕の表情を浮かべるフニコロの姿が 「な、何してるんですか…？」

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#くろくだの奇妙な冒険 14 ルロイは、リカルドを落とす。そして、フニコロに銃口を向けた 「テメェも…敵だ」 「はぁ…はぁ…お前、固すぎだろ…」 「君も頑丈だね」 片膝を付き、肩で息をするヒトシ。その目前には、若干ボロボロになったバッド・デイが居る 「さ、そろそろ終わりにしようか」

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#くろくだの奇妙な冒険 15 そうブシドーは笑顔で言って、バッド・デイは拳を振り上げる。ヒトシは避けたくても、既に体力の限界で出来ない。そして― 「はい、仕事終わり～！」 バッド・デイの拳は、地面を破壊した。舞い上がる砂煙。だが、それが晴れた時、ブシドーは首を傾げる羽目になった

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#くろくだの奇妙な冒険 16 「あれ？逃げた？」 粉々に砕けた地面。そこにヒトシの破片は無かったのだ 「兄ちゃん、厄介な奴に目を付けられたな…」 兎にそう言われ、ヒトシは不思議そうに身体を見渡す。逃げれた理由が見当たらないからだ 「…もしかして、助けてくれたんすか…？」 「おうよ！」

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#くろくだの奇妙な冒険 17 頷く兎。その肩には、小さく白いウサギが乗っている 「お、兄ちゃんもスタンド使いか」 その視線に気付いた兎は、ヒトシに笑顔で言った。ヒトシも両肩にスタンドを装着する 「アイツ…何なんすか」 一息着いたヒトシは、兎にそう訪ねる。と、兎は半分怯えた表情を浮かべた

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#くろくだの奇妙な冒険 18 「アイツは…本物の死神だよ。後ろ向き同盟って知ってるか？」 神妙そうな兎の言葉に、ヒトシは首を横に振った 「そうか…後ろ向き同盟は、この街を支配してるヤバい奴等だ。で、アレはバッド・デイと言う最悪のスタンドで―」 「酷いなぁ、僕のスタンドを最悪だなんて」

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#くろくだの奇妙な冒険 19 そんな声が、頭上から降り注ぐ。その瞬間、兎はヒトシを連れて横に逃げる 「とお！」 さっきまで二人が居た所に降り立つバッド・デイ。砂煙を巻き上げ、ゆっくりと顔を上げた 「バッド・デイは僕の最高な友達だよ？最悪なんて酷いじゃないか」 そんな事を笑顔で言うブシドー

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#くろくだの奇妙な冒険 20 兎は何も言わず、白いウサギの背中を撫でた。一瞬で姿が掻き消える兎とヒトシ。だが 「二回は通じないかな」 走るバッド・デイ。そして、見えぬ筈の二人の目前に拳を振り下ろした 「な！？」 驚きの余り、姿が露になる兎達。それを見て、ブシドーは笑った

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#くろくだの奇妙な冒険 21 「さて。僕は君を殺したいんだ」 ブシドーは笑顔でヒトシを指差し、兎へと語り掛ける 「差し出してくれるなら、君を見逃しても―」 「嫌だね」 ビクビクとしながらも、兎ははっきりと言い放つ。ブシドーは驚いた顔を見せ、兎の事をマジマジと見た 「君…死ぬの怖くないの？」

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#くろくだの奇妙な冒険 22 「怖ぇに決まってんだろ！だけどなぁ…」 ヒトシを守る様に、兎は一歩前に。そして、高らかに言い放つ 「俺は、俺は自分に嘘をつく方が怖いんだよ！」 「へー、そっかぁ…」 そうブシドーは言い、バッド・デイは拳を振り上げた 「なんかつまんないや。死んじゃえ」

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#くろくだの奇妙な冒険 23 それを見、兎はヒトシを押す 「お前だけでも逃げろ！」 「でも！」 「良いから逃げ―」 その瞬間、ヒトシの身体は宙を舞った。兎に向かって飛んだ拳の風圧が、ヒトシを持ち上げたのだ 「がっ…ゲホッゲホッ！」 地面を転がり、前を見るヒトシ。目の前に広がるのは…

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#くろくだの奇妙な冒険 24 「諦めないで！」 尻餅を付き、驚愕の表情を浮かべる兎。そして― 「く…くろぐだお嬢さん…！？」 バッド・デイの拳を、大鎚の柄で受け止めるくろぐだの姿があった 「兎さん！ヒトシさんを連れて逃げて下さい！」 「そんな事―」 打撃音。二発目の攻撃を、くろぐだは防いだ