2021年6月23日

1600年頃のキリシタン資料ではハ行子音がf音で表記されるが感嘆詞ではhで記された例があるという。

戦国時代までの日本語のハ行音が実は「ファ」「フィ」「フ」「フェ」「フォ」だったことは知られているが溜息などの感嘆詞「はあ~」の音は今の「ハ行」と同じhだったことが分かったという。 昔の文献に出て来る馬の鳴き声は「ヒヒーン」ではなく「いんいん」と書き表していて、嘶(いなな)くという言葉はその擬声語を基にしたものだった。
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田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

鎌倉時代の説話作品に、笑いの描写を「は」「はあ」と記したものがある。一見違和感ないが、この時代の「は」の発音は[ha]でなく[ɸa(ふぁ)]だったことが知られている。 このことに思い至って以来、古典で笑いの描写を見ると明石家さんまの「ファー!」という笑い声が脳裏に響くようになってしまった。 pic.twitter.com/rgxqMuinqb

2021-06-07 20:57:07
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田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

大学教員。専門は日本語史。古文・漢文の歴史(文語史)に関心を持っています。研究等の詳細は下記リンク(researchmap)をご参照下さい。 文語文ブログも始めました。bungobun.hatenadiary.jp

researchmap.jp/soTANAKA/

リンク 文語文 練習帳 文語文 練習帳 文語文を用ゐてエッセイ的の文章をつづる練習帳。
田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

なお亀井孝はこの「は」を笑い声そのものではなく擬態語(”どっ”と笑いが起こる、のような)と見なすが(「中世の日本語として、この、わらひごゑそのものを「は」の文字でうつすことには、わたくしとしては、期待をよせがたい」)、「ほほ」という例もあることをどう解釈するかについては説明がない。 pic.twitter.com/gPqTcnirOq

2021-06-07 21:05:16
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田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

亀井孝「古代人のわらひごゑ」(『亀井孝論文集3:日本語のすがたとこころ1』吉川弘文館、 1984年)。 ※『お馬ひんひん:語源を探る愉しみ』(朝日選書、1998年)にも収録

2021-06-07 21:07:25
田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

「ふぉっふぉっふぉっ」という唇音の笑い声が "老人" の笑い声として(役割語的に)知られている点も気になる。

2021-06-07 21:11:06
Nesapa (jan pi toki pona) @TPonian

@_sotanaka 当時から笑い声は[ha]であったが、近似音として表記上は「は」を用いた可能性もありますね。 感嘆詞だと、[ɴ]が「うん」と表記されるように、発音と表記に揺れが生じることもあります。 (すみません、私自身はど素人なので完全に憶測です)

2021-06-09 06:05:38
田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

#本日の発見 1600年ごろのキリシタン資料ではハ行子音f で表記されているというのは日本語史の常識だけども、感嘆詞には"ha" "hum" のように h で記した例がある。今まで知らなかった。 つまり[ɸ]の時代にも音声的には[h]はあった。昔の人もため息は [ha:] だったかも。 twitter.com/_sotanaka/stat… pic.twitter.com/YAcnr76juF

2021-06-09 21:24:40
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田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

@TPonian ありがとうございます。近似音という考え方は重要だと思います。 ただ、馬の鳴き声(今はヒヒーン)を古くは「イ」で記したように、音声的には[ha]に近いのは当時のハ行よりはア行かと思われます。なのでこの「は」が[ha]であると見なすには、何か傍証がほしいところです。

2021-06-09 21:32:26
So Miyagawa/宮川 創@エジプト学、言語学、言語資源開発 @So_Miyagawa

@_sotanaka 面白いですね。ポルトガル語やスペイン語のhは、当時も今とおなじように黙字か、声門閉鎖音[ʔ]だと思うので、haは[ʔa]ではなく[ha]であると言い切れるのはなぜでしょうか。やはり、ローマ字キリシタン資料では/a/始まりの単語はhなしで書かれているけれど、ここだけh付きで書かれているからですよね。

2021-06-09 22:10:41
田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

@So_Miyagawa 仰るとおり h なしで母音から綴りが始まる語がある(そちらが普通)なので、この ha の h が黙字とは考えがたいですね。

2021-06-09 22:41:31
田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

@So_Miyagawa 音価の特定については詳しくないのですが、[ʔ]ではなく[h]であるということは積極的には実証しがたいのではないかと思います。

2021-06-09 22:42:41
So Miyagawa/宮川 創@エジプト学、言語学、言語資源開発 @So_Miyagawa

@_sotanaka そうですよね。ローマ字キリシタン資料との比較としてコンカニ語やトゥピナンバ語などのイエズス会が確立させたラテン文字音写法で[h]と[ʔ]の音がどのように表されているか大変興味があります([h]の音をhで表す言語があっても、ローマ字キリシタン資料のhには状況証拠にしかならないと思いますが)。

2021-06-09 22:53:02
九州大学下地理則ゼミ @shimojizemi

@_sotanaka 宮古語は/p/が保持されていますが(/pana/「花」,/puni/「骨」,/yapa/「柔らか」),感嘆詞には/h/が散見され,/p/との最小対もあるので,音素として/h/と/p/を立てる必要があります。 /hatto/(昔話で「終わり」を意味する呼びかけ語) /hira/「ねえ」(/pira/「へら」と最小対) /ahaa/「ああ」

2021-06-09 23:14:37
yhkondo @yhkondo

@_sotanaka 意外ですね。存じませんでした。しかし、だとすると、古代語のオノマトペのハ行音表記の音価は全部再検討が必要なのではないでしょうかね。「はた」(戸が閉じる音)「はらはら」(髪の毛の描写)「ほろほろ」(涙が落ちる)などなど。よろしくお願いします。

2021-06-09 23:29:56
xofei @xofei1

@_sotanaka 引いておきながらこの論文だったか忘れてるんですが、ポルトガル語表記ではhの綴りは無音なので、近年ではこれは「アア!」と見るべきだといわれます。

2021-06-09 23:39:13
yhkondo @yhkondo

@_sotanaka もちろん、ローマ字表記があるものはいいですが。

2021-06-09 23:43:20
田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

@xofei1 ご教示まことにありがとうございます。そのものズバリの論考があったのですね。 その場合、これらの感嘆詞の表記において例外的にh字が足されていることの理由が必要になりますよね。おそらくご教示の論考で議論されていることとは思いますが。

2021-06-10 00:02:45
田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

@yhkondo ハ行の仮名が[h]を表す場合があったということではなく、仮名には書きがたいが[h]があった、ということなので、問題になるのは「はらはら」の類よりはむしろ「ああ」(=音声的には[ha:]かも知れない)の類ではないでしょうか? 論点を誤解しておりましたらすみません。

2021-06-10 00:05:29
田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

@yhkondo もちろん、他のかたのリプライにありますように、このhaのhが黙字だとすると、話はまったく変わってきますが・・・。

2021-06-10 00:06:32
xofei @xofei1

@_sotanaka 読んだのが随分前だったのですが、自分の理解では正書法上の、感嘆詞のマーカみたいな位置づけと考えてました。

2021-06-10 00:08:14
田中 草大 (たなか そうた) @_sotanaka

@shimojizemi ご教示ありがとうございます。たいへん勉強になります。/h/は感嘆詞に限って見られるということでしょうか? また、最小対もあるとのことですが、感嘆詞では/pira/となることはない、ということでしょうか。

2021-06-10 00:10:05
yhkondo @yhkondo

@_sotanaka なるほど。理解できました。むしろ、ア行音表記の感嘆詞の類が問題になるわけですね。ご教示ありがとうございます。

2021-06-10 00:15:10
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