尾崎将也の脚本に関するつぶやきをまとめました(2022年版)

twitterに昨年一年間に書いた脚本の書き方・勉強の仕方についてのつぶやきをまとめました。 noteで「尾崎将也の<全部入り>脚本講座」の連載をしています。https://note.com/ozakimasaya 書籍『3年でプロになれる脚本術』も合わせてお読みください。https://www.amazon.co.jp/dp/4309277845/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_AuxkCbWV6N63T
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尾崎将也/小説『パラレル・パスポート』発売中 @ozakimasaya

脚本を書いていて、例えば「ここで泣くのはありきたりだな」と思うのはある意味作者の都合で、人物としてはそこで泣くのが自然な気持ちかもしれません。こういう場合はシチュエーションに変化を持たせるなどすることで、両者の折り合いをつけることができます。

2022-09-22 12:12:06
尾崎将也/小説『パラレル・パスポート』発売中 @ozakimasaya

脚本の直しには、電車に例えると「①同じ線路を走りながら車両を改善する」と「②走る線路自体を変える」の二種類があります。一般的に①の方が手間が少ないので、出来るだけ①で対応しようとするのですが、それでは無理だとなれば思い切って②に変更する必要があります。

2022-09-23 12:39:54
尾崎将也/小説『パラレル・パスポート』発売中 @ozakimasaya

(続き)うまく行っていなかった脚本が「ずいぶん良くなったね」と言われるのは②の直しをした場合が多いです。そして前の線路と変更後の線路は割と近くを並行して走っているのに、読んだ印象が全然違ったりするのです。

2022-09-23 12:43:19
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生徒で「自分は面白いと思って書いているのになぜ評価されないのだろう」と悩む人がいます。しかしその作品は、例えばカップ麺にお湯が入っていないようなものかもしれません。「お湯が必要」ということを当人はまだ知らないのです。面白いと言われないには理由があり、それを知る過程が勉強です。

2022-10-02 14:54:15
尾崎将也/小説『パラレル・パスポート』発売中 @ozakimasaya

脚本の初心者のよくある質問に「シーン数はどれくらいがいいんですか?」というのがありますが、シーン数は単なる結果で、いくつが正解とかいうものではありません。作品のタイプによっても変わります。会話主体の人間ドラマなら少なくなるだろうし、サスペンスものなら多くなるでしょう。

2022-10-03 12:11:29
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ドラマには、葛藤の構造がはっきりした作品と、そこは緩くてもキャラやセリフの面白さで見せる作品があります。どちらが正解ということではなく自分の資質に合う方をやればいいのですが、初心者にはどちらかというと後者の方がハードルが高く、プロットできっちり葛藤を作って書く方がいい気がします。

2022-10-13 12:58:05
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初心者のときに全然うまく書けなかった人が、同じ作品を何度も書き直すうちに最終審査に残るレベルまで来たというのを、複数のコンクール最終審査で目撃しました。この人たちがそこまで行けた一番の理由は「諦めなかった」ことです。

2022-10-16 13:06:42
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脚本家には「作家」と「職人」という二つの側面があります。百かゼロかではなく、人によってどちらか片方が強い人がいるし、作品によって変わる場合もあります。僕は作品によって変わるタイプで、「結婚できない男」は作家性が強く出た作品で、「特命係長・只野仁」はほぼ職人性だけで書いた作品です。

2022-10-25 12:34:43
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(続き)脚本を学ぶ人がこの点をどう考えればいいかというと、作家性は自然と出てくるものなので、勉強としては職人的な人を楽しませるテクニックやノウハウの習得に全力を傾けていいのではないかと思います。ただその間も「自分がどんな人間か」という観点を忘れないことです。

2022-10-25 12:41:17
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僕が生徒に勧めることが多いのが #小津安二郎 監督の作品。面白くするには特殊なことや派手なことは必要はなく、普通の人の普通の話でも傑作になること。でもそれを成立させるには高度で緻密な計算が必要であることを学べます。まずは『東京物語』『晩春』『彼岸花』『秋刀魚の味』などから。 pic.twitter.com/B7K9dRXMgL

2022-10-27 11:56:52
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若い人は小津安二郎の映画を見て「何が面白いかわからない」と思うかもしれませんがご安心ください。年を取って人生経験を重ねるほどに面白く、味わい深くなっていきます。僕は若い頃は「勉強のため」に小津作品を見ていましたが、今はただ楽しむために見ています。

2022-10-27 12:19:23
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脚本の初心者の悩みのひとつに「テーマをどう考えるか?」ということがありますが、結論を言うと「テーマは考えなくていい」と思います。ストーリーやキャラクターを突き詰めていけばテーマは自然と生まれてくるものです。実際、僕は30年脚本家をやってきて、テーマを考えたことは一度もありません。

2022-11-10 12:07:29
尾崎将也/小説『パラレル・パスポート』発売中 @ozakimasaya

テーマを考える必要があるとすれば、書いていて煮詰まってしまい方向性が見えなくなった場合です。そんなとき「テーマは何か、自分は何のためにこの作品を書いているか」を考えることで光明が見えることがあるでしょう。

2022-11-10 12:11:32
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まだテクニックが身についていない初心者がテーマを考えすぎることによる弊害は、「作品が観念的、説明的になること」です。例えばテーマをそのままセリフで喋ってしまうとか。それよりはストーリーやキャラクターをどう面白くするかを考える方が上達につながる気がします。

2022-11-10 12:33:31
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例えば「弁護士が仕事する様子を書けますか?」と聞かれたら「知らないので書けない(取材すれば書ける)」と誰でも答えるでしょう。では「人間を書けるか?」という質問に対しては? 人間を書くなら、自分がどれほど人間を知っているか、もっと知るにはどうすればいいか考える必要があるでしょう。

2022-11-12 12:02:29
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ドラマは簡単に言えば「問題提起」➡︎「葛藤」➡︎「浄化(解決)」の過程を描くもの。だとすると自分が問題だと思うことをことを題材に選び、主人公と一緒に浄化(解決)する方法を模索するのがドラマを書くことだと言えます。最初から解決法がわかっていなくても、主人公と一緒に探せばいいのです。

2022-11-13 12:59:10
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脚本では「ト書きに書いた物や事柄が映像になる」と考えていいと思います。だからセリフで「その赤い鞄は私のよ」と言ってもまだ映像にはならず、ト書きに「赤い鞄が置いてある」と書いて初めて映像になります。セリフに書いたからト書きには書かなくていい、ということはありません。

2022-11-16 14:07:00
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スタッフはト書きに書いてある物を用意しようとしますので、ト書きに「何々がある」と書くと「それを用意してね」という「発注」の意味を持ちます。逆に必要ない物までごちゃごちゃ書くと現場は混乱します。「ト書きはどれくらい詳しく書くべきか?」のひとつの答えです。

2022-11-16 14:25:16
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脚本において、質的、量的な特徴を強調する場合、同じようなものを並べても強調になりません。例えば天才ばかりの中に天才を入れても強調にならず、凡人たちの中に入れる必要があります。または楽譜通りの演奏をする天才たちの中に我流で素晴らしい演奏をする人を入れれば質的な特徴の強調になります。

2022-11-16 14:47:12
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脚本の初心者でよくある間違いは、ト書きに映像には見えない事柄を書いてしまうこと。例えばマンションに入るのを「内覧に来る」と書くのは間違いで、正しくは(映像に映るのは)「マンションに入っていく」です。空室に入って説明を受けたりする様子を描写して初めて内覧だとわかります。

2022-11-16 18:13:37
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脚本のト書きを書くとき、上に二文字空けるか三文字空けるか教室によって教えることが違うと初めて知りました。結論としてはどっちでもいいということでしょう。プロになると原稿用紙ではなく台本のフォーマットで書くようになるのでその問題は関係なくなります。

2022-11-25 17:08:28
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脚本の初心者の原稿を見ると「黒い」と感じることが多いです。ひとつのセリフが長くびっしりと書いてあるので黒く見えるのです。セリフを人と人の対話として捉え、このセリフを聞いた人はどう思うか、どんなセリフを返すかを考えていくと、短めのセリフの応酬が増えていき、黒くなくなっていきます。

2022-11-27 12:40:57
尾崎将也/小説『パラレル・パスポート』発売中 @ozakimasaya

「セリフを書く」と考えると、その人が言いたいことだけを必死に書いてしまうのでは? だとすると「会話を書く」と考えた方がいいかもしれません。人と人がそれぞれの感情や考えをぶつけ合うことでさらに感情や葛藤を生み、ドラマになっていくのです。

2022-11-27 13:03:35
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脚本を面白くするテクニックの多くは、流れの中に織り込まれていて、普通に観客の立場で見ていても「ここにテクニックがある」とは気づきにくいです。勉強のためには意識して「どこにテクニックがあるか」を読み解いて言語化する「分析」の作業が必要です。

2022-12-05 13:03:40
尾崎将也/小説『パラレル・パスポート』発売中 @ozakimasaya

脚本に限らず、何かを勉強するときには、基礎として早い段階で理解すべきこともあれば、もっと先に進んだ段階で理解すればいい高度なこともあります。三幕構成とかミッドポイントなどはかなり高度な部類で、それより先に理解しなくてはいけないことが色々あります。

2022-12-15 11:32:06