トリチウムは生物濃縮すると誤解している人が多いのには理由がある。生物濃縮は1960年代、レイチェル・カーソンが著書『沈黙の春』でDDTの事例を取り上げたことで知られるようになった。同時期に水俣病の原因が有機水銀の生物濃縮であることが明らかになっている。 続く
2023-08-26 22:12:11承前 社会的な関心が高くて、こういう経緯を知っており、また自分の知性にも自信を持っている人たちがDDTや有機水銀のような「化学物質」は生物濃縮するものだと短絡的に思い込むのは無理からぬことなのだ。そして、トリチウム水は化学物質であるから当然、生物濃縮するに違いないと結論する。続く
2023-08-26 22:21:25承前 親油性とは逆に、水に溶けやすい性質を親水性という。水は二つの水素原子が一つの酸素原子と結合したもので、簡略化して書くとH-O-H、さらに略すとH2Oになる。トリチウムというのは化学的には水素原子と同じ三重水素原子のことで、違いは重さと放射能の有無しかない。続く
2023-08-27 01:09:06承前 しかし、生物濃縮の原因は化学物質かどうかではなく、その物質が親油性かどうかによる。DDTも有機水銀も油に溶け易いから体内の脂肪組織に入り込み、なかなか代謝されない。そして食物連鎖によって濃縮されてゆく。これが生物濃縮。続く
2023-08-27 00:56:47承前 トリチウムが普通の水素と置き換わったものがトリチウム水であり、トリチウムをTとするとT-O-H 、あるいはTOHになる。つまり、化学的にはトリチウム水は水そのものといえる。水も水とはよく混じるので、親水性だから体内の脂肪組織に溶けて溜まることはない。 続く
2023-08-27 01:16:44承前 トリチウム水(THOあるいはHTO)も普通の水(H2Oと同じように、飲んだ分の多くはすみやかに体から排出されていく。ここで時々問題になるのが有機結合型トリチウム(OBT )というもの。これは生体内の有機化合物にある炭素と結合したトリチウムの意味。 続く
2023-08-27 01:47:50承前 植物は光合成で二酸化炭素と水から炭水化物を作る。その時、炭素上には水分子の水素が結合することになる。トリチウム水なら炭素にトリチウムが結合する。動物の体内でもいくつかのルートでトリチウムを含んだ有機化合物ができる。しかし、出来やすい結合は壊れやすくもある。 続く
2023-08-27 01:52:44承前 水ほど早くはないが、有機結合型トリチウム(トリチウムを含んだ有機化合物)も代謝されて、体内にはとどまらない。体内で分解されない有機水銀やDDTとはこの点で全く異なる。 続く
2023-08-27 02:01:17承前 繰り返すが、日本での水俣病のインパクトが大きく、化学物質は生物濃縮されて微量でも非常に危険だと刷り込まれている人が多い。そしてトリチウム水も化学物質なら同じだろうと誤った推測をしてしまう。なぜ、どういう機構で生物濃縮が起きるのかを知ってほしい。その上で判断していただきたい。
2023-08-27 02:10:44ついったを見ていると、「トリチウムは生物濃縮しない」という話は原理から話している人ばかりなのだけれども、トリチウムはもう何十年も世界中の原発から流されている上に、それを上回る量が自然に生成されているので、「そうはいってもやったら濃縮されない?」にこたえられるデータが既にある。 twitter.com/29silicon/stat…
2023-08-27 09:31:31kaiseiken.or.jp/publish/report… というわけで、こちらのレビュー論文を読むと、トリチウムにもいくつかの化合物の形態があるけれども、トリチウム水は濃縮しないし、光合成などにより有機物がトリチウムに修飾されることがあるけれども、それらも濃縮しないということが分かっているとのこと。
2023-08-27 09:33:58トリチウムが自然界にあるのは、福島第一からの放出が初めてではないので、どういう影響があるかというのはこれまでの知見で既に分かっているのだよね。
2023-08-27 09:38:08処理水放出に反対する人たちはむやみやたらと「有機結合型トリチウム(OBT)」を持ち出すんですが、どんな形のトリチウムだろうが生物濃縮はしないんです。このスレッドを読んでみて下さい。 twitter.com/chiee007/statu…
2023-09-04 17:32:22たぶんメチル水銀とかとのアナロジーで考えておられて悪意はないのだろうが、生物濃縮という現象に対する浅い理解含めて、ちょっと世間的にデマとなっては危ないので専門的見地から下記スレッドにコメントします。 twitter.com/miyadai/status…
2023-09-03 16:12:01たぶんメチル水銀とかとのアナロジーで考えておられて悪意はないのだろうが、生物濃縮という現象に対する浅い理解含めて、ちょっと世間的にデマとなっては危ないので専門的見地から下記スレッドにコメントします。 twitter.com/miyadai/status…
2023-09-03 16:12:01貴殿は有機結合トリチウムを見逃している。生体内でトリチウム水のままなら短時間(4日以内)で代謝されて生体濃縮の機会がないが、それを構成するトリチウム原子が有機物(蛋白や脂肪や核酸)と結合すると生体内に長く留まる間に(大部分は生物半減期40日で一部は1年)捕食されて生体濃縮されうる。 有機結合化のメカニズムは水素置換。植物の光合成過程や動物の消化過程で、有機物内の水素原子が他の水素原子に置換されるので、トリチウム原子にも置換される。このメカニズムを前提とした生体濃縮についての論文は以下。植物(植物性プランクトン)から動物へという過程の蓋然性が最も高いとされる。 Andrew Turner, Geoffrey E Millward, Martin Stemp 2009 "Distribution of tritium in estuarine waters:the role of organic matter" Benedict C Jaeschke, Clare Bradshaw 2012 "Bioaccumulation of tritiated water in phytoplankton and trophic transfer of organically bound tritium to the blue mussel, Mytilus edulis" これらを参照したと思われる良記事が以下である。 https://t.co/x9FQcYUhz1 その前編も良記事だが記事内のリンクから飛べる。トリチウムβ崩壊のβ線は弱いものの、「薄めようが薄めまいが」結果的に膨大量のトリチウムを海洋投棄することによる帰結の未規定性を問題視する。
2023-09-02 02:04:03生物濃縮で悪名高いのは水俣病のメチル水銀と沈黙の春のDDTでしょう。 これらの例を見ながら、生物濃縮とはいかなる条件で起こるのか見ていきましょう。 まず、メチル水銀。これは主にMeHg+という陽イオンとして存在します。この物質自体は水溶性ですが、生体内で起こる化学反応に問題があります。
2023-09-03 16:15:37メチル水銀はアミノ酸の一種のシステインに含まれる硫黄と高効率で強く結合します。そうするとタンパク質に結合してしまい蓄積性になるわけです。 DDTの場合は強い脂溶性と難分解性を持つため脂肪組織に蓄積します。
2023-09-03 16:17:56ではトリチウムはどうでしょう? HTOのTが代謝経路で有機物に取り込まれることを考えます。 普通の水素も含めて取り込まれる確率の方が圧倒的に低いですが、運が良かった?とします。Tの反応速度はHより低いため、ここで大部分がHに先を越されます。
2023-09-03 16:23:37ここを乗り越えたとして、Hを取り込む反応は大抵酸性度の高いOHやNHなど活性プロトン基で起こります。これは外部のHと常に交換(平衡)してるので、周りが99%Hなのであっという間に交換されます。
2023-09-03 16:26:21ここも乗り越えて晴れて有機物の一部になれたとして、どんな有機物になるかはランダムです。糖かもタンパク質か、水溶性か、脂溶性かも。 つまり水銀やDDTのようにどこかの細胞や臓器に狙って蓄積するということができません。
2023-09-03 16:29:12我々は毎日雑多な有機物と無機物を食べてますが、そのうち生物濃縮性があるものはわずかです。塩のNaもブドウ糖も蓄積されません。 生物濃縮とは脂溶性や難分解性など細かな条件を満たした時に発現する性質であり、ただでさえ有機物に入りにくいTがそういう物質になれる確率は極めて低い。
2023-09-03 16:33:45ちなみに放射性セシウムも、汚染された魚をきれいな水で育てたら観測限界以下まで抜けていきます。CsにはHgのようにタンパク質への結合能がないためです。 逆に、放射性ストロンチウムはCaと同様に骨を構成するため蓄積されます。
2023-09-03 16:45:37このように生物濃縮は分子やイオンの生化学的性質に強く依存するので、生物は水素で出来てるから三重水素なら取り込まれるはず、みたいな乱暴な話ではないのです。
2023-09-03 16:47:45濃縮されなくても取り込まれる可能性自体はあるんだろ?という人もいらっしゃるでしょう。 毒性は濃度と毒性の掛け算です。 皆さんが食べているマグロにも水銀が入ってますが妊婦でもない限り神経質になる必要がないのと同じです。
2023-09-03 20:52:23ちなみにトリチウムは有史以前から自然に存在するものです。太陽から降り注ぐ中性子線が大気中の酸素や窒素に当たって生成しており、この量は7京ベクレル/年。 このため100京ベクレルほどが世界(ほとんど海)に溜まってます。 そのため、我々の身体にも10ベクレルほどのトリチウムが存在します。
2023-09-03 21:01:12