お菓子っ子さんの語る、董卓伝３～洛陽放棄まで～

お菓子っ子 @sweets_street

袁術は袁紹が宦官を皆殺しにした時に一緒に兵を率いた人物。袁紹の従兄弟ですが、妾の子なのに反体制知識人に人気がある袁紹のことが嫌いです。袁紹と親しい反体制知識人を「不道徳な連中」と嫌っています。地方と中央の要職を満遍なく経験したエリートで保守的な性格。何から何まで袁紹とは正反対です

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董卓が政権を握ると、後将軍（中央軍司令官。閣僚相当職）に昇進します。兄で汝南袁氏嫡流家の当主の袁基は大僕（軍需大臣）。兄弟共に宰相職である三公を狙える位置です。董卓は連立パートナーの袁隗の一族で保守本流のサラブレッドである袁基・袁術兄弟を相当重視していたのでしょう

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そこまで厚遇された袁術ですが、どういうわけか「禍を畏れて」洛陽から逃げ出してしまいます。袁紹が董卓と対立したとはいえ、何を恐れていたのかさっぱりわからないですが。袁隗・袁基・袁術らの保守派にとっては、過激派の袁紹は跳ねっ返りだし、現政権を覆す理由もないので同調するはずもないです

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とにかくよくわからない理由で洛陽から逃げて孫堅たちとつるむことになった袁術は、孫堅に破虜将軍（方面軍司令官）、豫州刺史（豫州行政管区監察官）のポストに推挙します。孫堅の同盟者劉詳が名乗った蕩寇将軍も袁術が推挙したものでしょう。推挙と言っても、そういうことにして自称しただけですが

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このような「推挙と言う名の自称」は袁紹もやっています。鮑信を破虜将軍（方面軍司令官）、弟の鮑韜を裨将軍（軍司令官）に推挙しています。曹操の奮武将軍も袁紹の「推挙」で箔を付けたのかもしれません。権威がある人間が推挙したという形を取れば、自称でもその人間の支持者の間では通用しますから

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しかし、孫堅が袁術の、鮑信が袁紹の部下というわけではありません。みんな地位の上下はあっても、等しく漢の皇帝の臣下という建前です。手を組んでいる格下の同僚に、官位を推薦してあげる関係。政治家の派閥のようなものですね。派閥領袖は子分にポストを配分するけど、皆同じ議員であるということ

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主従関係にある部下というのは、例えば渤海太守である袁紹にとっては自分の人事権で採用や昇進を決めることができる功曹（人事部長）や主簿（秘書室長）、掾（部長職）などの現地採用スタッフのことです。将軍府の場合は将軍長史（将軍副官）や将軍司馬（参謀長）など

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とにもかくにも、中央のエリートで閣僚相当職の袁術の支持を得た孫堅は豫州刺史（豫州行政管区監察官）として豫州入り。潁川太守（郡【県相当】の知事）李旻など豫州の地方官を傘下に入れます。最初に豫州で挙兵した豫州刺史孔伷はいつの間にか死んでいます

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孫堅は孔伷は死んで宙に浮いていた豫州刺史（豫州行政管区監察官）の地位を手に入れ、孔伷の後任として盟主を失った豫州方面の反董卓勢力を傘下に収めたのでしょうね。このような動きを董卓が見逃すはずもなく、中郎将（近衛司令官）徐栄が孫堅討伐の任を帯びて豫州に出撃しました

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徐栄は孫堅に大勝して壊滅に追い込み、潁川太守（郡【県相当】の知事）李旻を捕虜とし、孫堅もあと少しで討ち取られるところでした。徐栄は袁紹一派最強というか唯一の切り札曹操を破った人物でもあり、その戦上手ぶりが伺えます。孫堅は軍を立て直して、董卓軍に再戦を挑みました

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この時に董卓軍を率いたのは陳郡太守（郡【県相当】の知事）胡軫。陳王（国【県相当】を領土とする皇族の諸侯）劉寵と宰相の陳国相（郡大守【県知事】相当職）許瑒が董卓に背いたため、劉寵の陳王国を廃止して、実力で接収に向かったのでしょう。胡軫の副将は勇猛で名高い中郎将（近衛司令官）呂布です

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しかし、この胡軫という人は将軍としての才能に欠けていたので、反感を持った呂布や部隊長たちが胡軫を失敗させるために偽情報で軍を混乱させ、慌てた胡軫が兵を引いたところで、孫堅が浮き足立った胡軫を攻撃して大勝すると言う、自滅としか言いようがない無様な敗北を喫してしまいます

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まさかの敗北に慌てた董卓は孫堅に和議を申し込みますが拒絶され、進撃してくる孫堅を自ら迎撃するも敗北します。孫堅は洛陽城外で呂布を撃破して、洛陽に入城します。董卓は東中郎将（近衛司令官）董越、中郎将段煨、中郎将牛輔を配置して東方への防御に当たらせ、自らは長安に退きました

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この時の政界の情勢はどうなっているかと言えば、連立政権を組んでいた太傅（皇帝の師傅）・録尚書事（首相）袁隗が一族もろとも処刑されました。常に風向きが良い方に付いて権力を握ってきた袁隗が、苦境にある自分を見限って新たなパートナーを捜すのを恐れたのでしょう

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さらに遷都に反対した太尉の黄琬、司徒の楊彪（ともに副首相）を罷免して、光禄勲（近衛軍担当大臣）趙謙を太尉に、太僕（軍需大臣）兼尚書令（皇帝官房長官）王允を司徒にそれぞれ任命しました。趙謙は車騎将軍（国軍副司令官）を兼ね、王允は引き続き尚書令を兼ねます

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軍事担当の趙謙と、袁隗に変わって政務担当となった王允の上に、唯一の政権首班となった董卓が君臨するという構図です。この二人は腹心中の腹心といって良いほど董卓に重用された人物で、趙謙は軍事や治安で、王允は実務でそれぞれ活躍しました

お菓子っ子 @sweets_street

董卓のブレーンだった周珌、伍瓊、許靖、鄭泰、何顒のうち、周珌と伍瓊は袁紹に有利な動きをし過ぎたせいで怒りを買って殺され、許靖は従兄弟の陳国相（郡大守【県知事】相当職）許瑒が董卓に造反したことから、処罰を恐れて逃亡。残った鄭泰と何顒は袁紹の友人であるために精彩を欠いています

お菓子っ子 @sweets_street

代わりに尚書（皇帝官房秘書官）から侍中（皇帝の顧問官）に昇進した蔡邕が董卓が最も信任するブレーンになります。この人はこれまでのブレーンと異なり、袁紹一派とはつながりが無い人物です。宦官批判で名を馳せた硬骨の士であり、学者としても高名。政治色の薄さが気に入られたのかもしれません

お菓子っ子 @sweets_street

ここまで、董卓は人事以外の政策はあまり行っていません。政権獲得直後は人事の刷新に、袁紹一派の造反からは戦争にそれぞれ忙しく、政策に力を入れる暇がなかったのです。董卓の色が見えるのは、長安に退いてからです。その後の話に関しては夜も遅いので、またの機会にしましょう

Ugata @ugata_noto

@sweets_street 興味深く拝見しています。よろしいでしょうか。董卓政権における、不遇名士や旧何進派についてはよく分かりましたが、董卓の子飼いやブレーン、演義ベースでは、李儒、リカク、カクシ、華雄らの立ち位置はどうでしょうか

お菓子っ子 @sweets_street

@ugata_noto 李傕や郭汜らが登場するのはこれからですので楽しみにお待ち下さい

お菓子っ子 @sweets_street

ここ数日の荒れたTLにイラッとしてたけど、三国志オンリーの一日で気が晴れた気がします。まだ残りがあるけど。政策や戦略における董卓の独自性が見えてくるのは長安に逃げてからだから、これからが一番内容があるかもですね

お菓子っ子 @sweets_street

董卓についての質問受付中、といってもこの時間はみんなおねむかしら（´・ω・｀）

浅緋(あさひ)＠ヮ＜)ﾉ @asahi_4

@sweets_street 蒼天航路以外では、デブでダメなおじさんのイメージが多い気がしますが、どっちが史実には近いのでしょうか？　蒼天航路のは無双してて悪役としてはカッコイイですけど。

お菓子っ子 @sweets_street

@asahi_4 神経質でクソ真面目な人なのかなあと思います