お菓子っ子さんが語る、董卓伝７～董卓よ、永遠なれ～

お菓子っ子 @sweets_street

それほどの好漢であった何顒の人気は凄まじく、一介の学生でありながら、太傅（皇帝の師傅）・録尚書事（首相）陳蕃や司隷校尉（首都圏警察長官）李膺のような政界の大物からも友人待遇を受けました。しかし、陳蕃がクーデターに失敗して殺されると、何顒は指名手配を受けて逃亡します

お菓子っ子 @sweets_street

そして、汝南を拠点に荊州（湖北省）・豫州（河南省）一帯の豪傑（有力豪族）と交際し、強力なネットワークを作り上げました。そして、指名手配の身でありながら、親友袁紹の洛陽の屋敷を拠点として、袁紹と共に反宦官派の人々を援助し、逮捕された政治犯の救出まで行いました。実に大胆不敵です

お菓子っ子 @sweets_street

人物評論でも名を馳せ、若き日の曹操を「漢はまさに滅ぼうとしているが、乱れた天下を安定させるのは彼だろうな」と褒め、荀彧を「王佐の才」と評したのも何顒です。「漢はまさに滅ぼうとしている」とか、「王者を補佐する才能」とか、漢帝国が健在なのにいちいち言うことが物騒です

お菓子っ子 @sweets_street

指名手配が解けると仕官して袁紹とともに何進の派閥に所属し、腹心となります。董卓が政権を握ると、長史（官房長）に就任。長史というのは腹心中の腹心を任命するポストなので、董卓が何顒をいかに信頼したかが伺えます。そんな何顒が暗殺計画を練ったのです。董卓の求心力の低下ぶりが伺えますね

お菓子っ子 @sweets_street

そんな何顒が練った計画でしたが、あっさりと露見してしまい、何顒と荀攸は逮捕され、鄭泰は長安を脱出しました。こうして、董卓側近グループによる暗殺計画は失敗に終わります

お菓子っ子 @sweets_street

董卓が長安入りして自ら政治を執るようになって影響力を失っていた司徒（副首相）王允は、何顒らとは別に計画を練っていました。同志は司隷校尉（首都圏警察長官）黄琬、護羌校尉（対羌族軍団司令官）楊瓚、執金吾（首都治安軍司令官）の士孫瑞など。治安機関や軍部を味方にしてるあたり、実に巧妙です

お菓子っ子 @sweets_street

王允の計画は、袁術討伐計画をでっち上げ、楊瓚を行左将軍事（左将軍【中央軍司令官・閣僚相当】代行）、士孫瑞を南陽太守（郡【県相当】知事）として、指揮下に収めた袁術討伐軍の兵力を使って董卓を打倒するというものでしたが、董卓の疑惑を招いたために未遂に終わりました

お菓子っ子 @sweets_street

次に王允は董卓の身辺を警護している中郎将（近衛軍団司令官）呂布の抱き込みにかかります。呂布は董卓の侍女との密通が露見するのを恐れる余り、被害妄想に陥って「董卓に殺されるかもしれない」と同じ州の先輩である王允に相談したのです。そこで王允は董卓暗殺計画を打ち明けて仲間に引き入れました

お菓子っ子 @sweets_street

呂布は并州（山西省）の出身で、并州刺史（并州行政管区監察官）丁原の部下で、主簿（秘書室長）・司馬（幕僚長）を歴任した腹心中の腹心でした。何進が死んで洛陽が混乱していた時に丁原を殺し、并州の軍勢をまとめて董卓に味方した功績によって中郎将（近衛軍団司令官）に任命された人物です

お菓子っ子 @sweets_street

主簿は秘書室長にあたるポストで、文書を扱う性質上、教養ある士大夫が就くポスト。司馬も軍事を担当する幕僚のトップ（丁原軍をまとめて董卓に帰参させてるから、おそらく軍司馬や別部司馬ではない）。それでいて弓術や馬術の達人としても有名でした。呂布は文武両道の秀才だったのです

お菓子っ子 @sweets_street

地位は董卓が最も信頼する娘婿の牛輔や、董卓配下随一の名将徐栄と同格の中郎将（近衛軍団司令官）。牛輔や徐栄は万を越える軍勢を指揮していたと思われるので、呂布もそれぐらいの兵力を持っていたのでしょう。丁原が率いていた并州の軍勢の指揮をそっくり引き継いだと思われます

お菓子っ子 @sweets_street

董卓は涼州出身で配下にも涼州人が多いので、涼州に地盤があるように思われがちですが、実は董卓は并州方面のほうに強い縁があります。并州刺史（并州行政管区監察官）や、并州と地理的に一体となっている河東郡の太守（郡【県相当】知事）を歴任し、洛陽に進軍する直前まで河東に駐屯していました

お菓子っ子 @sweets_street

董卓は涼州方面の地方官を経験したことがないので、地方官として個人的に取り立てた故吏（元部下）がいる并州・河東方面が董卓の最有力の地盤なのです。だから、董卓は并州兵のまとめ役である呂布をとても大事にしました。父子の契りを結び、貴族の爵位を授け、常に身近に置いて身辺を警護させました

お菓子っ子 @sweets_street

文武の才能が抜群で、董卓が最も頼りにしている地盤の軍勢を率いる高級将官で、寵愛を受けている呂布の前途はきわめて明るいように見えますが、１つだけ大きな問題がありました。性格がものすごく身勝手なのです

お菓子っ子 @sweets_street

当時においては、挙主（個人スタッフとして雇ってくれた人。たいていは出身地の刺史【広域行政管区監察官】や太守【郡知事】）の恩は絶対的なものとされ、最も強力なコネとして作用しました。挙主の仇討ちをする人もいたぐらいです。それなのに呂布は出世に目が眩んで挙主の丁原を殺害しています

お菓子っ子 @sweets_street

さらに胡軫の副将として孫堅討伐に向かった時に、胡軫の拙劣な指揮ぶりに腹を立て、味方に偽情報を流して混乱させて胡軫をわざと負けさせるというお話にならない幼稚なことをしています。董卓の機嫌を損ねて手戟を投げつけられたのをネチネチと恨むなど、本当にどうしようもない性格です

お菓子っ子 @sweets_street

あげくの果てに董卓の侍女に手を付けて、バレるのを恐れるあまり、司徒（副首相）を務める政界の大物をわざわざ訪ねて「殺されるかも」と被害妄想をぶちまけるのだから、人間の小ささもここまで来れば芸術の域ですね

お菓子っ子 @sweets_street

王允はあまり融通がきかない人ですが、それでも呂布を言いくるめるのは朝飯前でした。王允が呂布の被害妄想を信じるふりをして、「殺されて死ぬかもしれないのに、董卓との間に父子の情なんてあるんですかね？」と言うと、呂布は納得して董卓暗殺計画に加わったのです

お菓子っ子 @sweets_street

病気で寝込んでいた皇帝が治ったからお祝いをするために、宮中で宴会が開かれることになりました。ずっと自分の府（オフィス）で執務していて、滅多に宮中に顔を出さない董卓も出席することになりました。呂布とともに宮殿に向かう董卓。呂布は王允が受けた董卓誅殺の詔を懐に入れています

お菓子っ子 @sweets_street

董卓が入る門には、并州軍の騎都尉（予備旅団長）李粛の兵が伏せてあります。騎都尉は呂布の配下では最高位。秘密厳守が必要な場面で起用されたのだから、呂布の片腕だったのでしょうね

お菓子っ子 @sweets_street

董卓の乗った車が門に入ると、李粛の兵が襲いかかりました。李粛に戟で刺された董卓は車から転げ落ち、あたりを見回して「呂布はどこにいるんだー！」と叫びます。すると、呂布は「詔により、逆賊董卓を討つ！」と答えました

お菓子っ子 @sweets_street

驚いた董卓は「バカ犬！どういうことだ！」と叫びますが、呂布は矛で董卓を突き刺して殺しました。呂布は董卓が死んだことを内外に発表し、兵士は万歳を唱え、民衆は喜びの余り狂喜乱舞したと言われています

お菓子っ子 @sweets_street

長安が董卓の恐怖政治から解放された喜びに沸く中、征西将軍（方面軍司令官）に任命された皇甫嵩が長安の軍隊を率いて、董卓一族の居城郿塢に篭る董卓一族を攻撃しました。弟の左将軍（中央軍司令官・閣僚相当）董旻以下、老若男女を問わず郿塢の董卓一族は皆殺しにあいました

お菓子っ子 @sweets_street

長安では董卓の屍が晒されました。肥満体の董卓の屍が腐って脂が溶け出したところで見張りの兵士が臍に火をつけると、何日もの間燃え続けたそうです。董卓に皆殺しにされた袁氏の関係者が、董卓一族の死体を集めて焼いて、灰を道路にバラまいて溜飲を下げました

お菓子っ子 @sweets_street

董卓の恐怖政治の下でたまった鬱憤が爆発して、ひたすら復讐の喜びに酔いしれていた長安っ子でしたが、お祭りムードにに水を差す事件が起きます。董卓が重用していた大学者で侍中（宮中顧問官）・左中郎将（近衛軍団司令官）蔡邕が処刑されたのです