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ゴフマンがLNTモデルと集団線量を用いて放射線による公衆の癌死リスクを見積もった真意を、その著書からひも解いてみる。

集団線量を用いて公衆の被曝リスクを評価してはいけないという考え方があります。それは低線量あるいは極低線量領域の放射線が人体へ与える影響の不確実性によるというリーフさんとマキリンさんの以下のやりとりが大変参考になります。 http://togetter.com/li/238814 ただ「人間と放射線」を読んでいて感じるのは、ゴフマンは細胞レベルの発癌メカニズムから考察してLNTモデルの比例直線が極低線量領域まで成り立つという確信を持っていたという事と、不確実性を理解しながらあえて集団線量を用いていたのではないかという事です。 続きを読む
震災 原発 ICRP 放射能 ゴフマン 放射線 集団線量 癌死リスク lnt
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序文
スカルライド @skull_ride
(1)広島長崎の被曝者は人類に対して比類のない重要なデータベースを提供してきた。彼らはこのデータベースを、彼ら自身と彼らの愛する人びとの高価な犠牲を基に提供したのである。人類が再びこのようなデータベースを持つことのないように祈りたい。
スカルライド @skull_ride
(2)世界中の医学者の最大の任務の一つは、人間に関するこの貴重なデータからありったけのものを学びとることである。この努力を少しでも怠ることは、人間としての責任を放棄することになる。
スカルライド @skull_ride
(3)私はこの問題に関する懸念を、放射線影響研究所と米国の関係当局に伝えてきた。人間に関するこのかけがえのないデータの科学的信頼性が守られることを切に祈る。彼らがそのための正しい手順をふまない限り、私は懸念を表明し続けるだろう。
高速電子のエネルギーと化学的、生物学的エネルギー
スカルライド @skull_ride
(4)化学結合の切断に必要なエネルギーは、一般に5~7eVくらいである。もし100keVのX線エネルギーが光電効果で電子に移されれば、その電子はほぼ100keVのエネルギーを持つ。100keVという値は化学結合のエネルギーに比べると桁違いに大きい
スカルライド @skull_ride
(5)100keVのエネルギーの一部は、原子や化合物から電子をはぎ取るのに費やされる。また一部は原子から電子をはぎ取るまでに至らず、より高いエネルギー準位に電子を励起することに費やされる。
スカルライド @skull_ride
(6)少量のエネルギーを原子間や分子間で秩序正しくやりとりしながら功緻に機能している生体組織に100keVの電子が入ることは、化学的にみても生体にとってとんでもないぶち壊しといえよう。
低線量被曝と発癌メカニズム
スカルライド @skull_ride
(7)発ガンにとって決定的な事象は細胞内で起きる。放射線は高速電子を通じてエネルギーを身体の組織に加える。X線やγ線は高速電子を発生させる。β線はそれ自身が高速電子である。
スカルライド @skull_ride
(8)ある組織が100ミリラド(1mSV)の被曝をすることは、β粒子が平均1MeVのエネルギーを持つと仮定すると、6.25×10^6個のβ粒子が組織1gにエネルギーを与えたことになる。
スカルライド @skull_ride
(9)1次β粒子が組織中を通過する距離はおよそ4000ミクロンである。組織の細胞直径は約20ミクロンであるから、β粒子は平均200個の細胞を通過する。従って6.25×10^6個のβ粒子は合計1.25×10^9個の細胞を通過する。
スカルライド @skull_ride
(10)組織1g当たりの細胞の数は2.5×10^8である。100ミリラド(1mSV)の被曝でβ粒子が通過する細胞の数は1.25×10^9個であることより、細胞1個当たり平均で5本の飛跡が出来る。
スカルライド @skull_ride
(11)ガン発生の可能性をはらむ決定領域(染色体を含む細胞核の限定された領域)の面積はおそらく1~2μ^2かそれ以下であろう。したがって細胞を通るβ粒子の飛跡が細胞核の決定領域に作用するのは、およそ300分の1か2でしかない。
スカルライド @skull_ride
(12)すなわち100ミリラドの被曝では、1つの細胞核の決定領域に傷がつく確率は1/60から1/30の間でしかない。そしてその決定領域が多数回傷つけられる確率は非常に小さい。これは100ミリラドを1度に浴びようと1年間にわたって浴びようと、被曝線量率は同じという事である。
スカルライド @skull_ride
(13)ちょっと補足表を作ってみました。1つの細胞に2本の飛跡が入るのは2細胞を通過したとカウント。 http://t.co/40Ft13q7
拡大
スカルライド @skull_ride
(14)いかなる放射線(β粒子、γ線、X線、α粒子、中性子、陽子)でも、細胞に「ゆっくり作用する」ことはあり得ない。細胞にとってエネルギーは受けるか受けないかのどちらかである。エネルギーを受ける場合、すべては瞬間的に受ける。
スカルライド @skull_ride
(15)DNAのある種の欠損に対する修復メカニズムはいくつか存在する。そしてそれらは損傷後数時間のうちに作用することがわかっている。しかしDNA損傷のすべてが修復されるわけでもない。これは多数の遺伝的疾患が実証している。
スカルライド @skull_ride
(16)染色体損傷の修復に関してはそれ以上に問題がともなう。染色体は単に二重ラセンだけでなく多くのたんぱく質をも含むため、その修復はDNA修復よりおそらく複雑であろう。
仮定と近似、データの取捨選択
スカルライド @skull_ride
(17)問題解決に必要な知見が抜け落ちている場合、二つの選択が可能である。一つは問題から離れることである。もう一つは必要に応じて妥当な近似を行い、そしてその近似の本質を確認することである。その近似によってどの程度の不確かさがもたらされるのか述べることも必要である。
スカルライド @skull_ride
(18)私自身が量子力学の講義を受けた偉大な化学者ピッツァー博士(K.S.Pitzer)はこう言った。「あるデータがないという理由で問題から遠ざかるような者は大した学者ではない
スカルライド @skull_ride
(19)確実なデータであっても、データ間の関係についてある種の仮定を設けなければならない場合がある。仮定を用いることについて弁解する必要はなく、それは科学的手法の本質的部分である。重要なことは、仮定が仮定としてはっきり示されることである。この本ではそれらは常に明示される。
スカルライド @skull_ride
(20)ある結論に都合の良い論文を文献中から選び出し、異なる結論の論文を無視するのは科学の堕落である。私は、被曝線量推定の基準と被曝者の追跡期間の基準とが満たされている研究のすべてを、知るかぎりここに集めた。除外した研究についても、読者が除外の妥当性を検討できるようにした。
スカルライド @skull_ride
(21)願望的思考と科学とは、水と油である。医者として私はこれまで幾多の悲惨な患者を診てきた。ある線量以下の放射線が、人の悲惨さに寄与しないことを発見できれば、私はどれだけ救われたことであろう。しかし私の科学者としての情熱は、常に真実を学びとることにある。
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コメント

スカルライド @skull_ride 2012年9月10日
まとめを更新しました。100ミリラドの変換が間違っていたので修正しました。100ミリラド(10mSV)→100ミリラド(1mSV)。厳密にはmGyですが分かりやすくするためあえてmSVを使いました。
スカルライド @skull_ride 2012年9月10日
そうですね、専門家のご意見も伺いたいところです。ゴフマン自身は化学者、放射線物理学者であると同時に、医学界で多大な功績を残した医学者でもあるみたいですね。
いいな @iina_kobe 2012年9月10日
まず、医療被ばくの線量によって生じるDNAの変異によるガン化率が、LNTに乗るのか否か。からですね。
スカルライド @skull_ride 2012年9月10日
自然であれ人工であれ放射線すべて同じだと思うのですが、複雑な生体反応による「ゆらぎ」みたいなものはあるにせよ、ゴフマンは極低線量領域までガン化率がLNTに乗ると考えていたみたいですね。
スカルライド @skull_ride 2012年11月9日
まとめを更新しました。タイトルを変更しました。