ゴブリン退治

火星から血と脂の薫りの重圧ファンタジーが届いた ゴブリンなめんな
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MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

村の方向から恐ろしげな咆哮が聴こえた。「撤退の合図だ、あれは」浮浪者は脂っぽい乱れ髪の下から爛々と輝く目をのぞかせ、二人を振り返った。「お前らどうする」「お前、森の隠者の」村長の息子が震え声で言った。浮浪者は瞬きせず答えた「そうだ。お前を獲って食う」「助けてくれ」「嘘だ馬鹿めが」

2012-09-21 17:38:30
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

浮浪者はそれから魔術師の顔を覗き込んだ。「……ハハァ。冒険者さんかよ」意地悪そうに笑った。「ナメてるクチか」魔術師は答えあぐねた。異様な雰囲気の男だった。浮浪者は死体を蹴って落とし、村長の息子に再度尋ねた。「どうするのかって訊いてる。お前の村をだよ」 #つづく

2012-09-21 17:42:39

MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

暗黒ファンタジー小説「ゴブリン退治」はゴブリンを退治するというタームをテーマにした暗黒ファンタジー小説です。

2012-09-21 17:58:05

MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

あらすじ)・冒険者が来たけどダメだった。・村がだいたい全滅。・何人かは生き残ったけどさらわれた。・村長の息子と魔術師(サークラ?)は村から逃げた。・村はずれで浮浪者がかっこ良くゴブリンを倒し、二人は取り敢えず助かった。・この浮浪者は何者だ

2012-10-05 15:48:58
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

(ついlogを見ながらチェックしてるからもう少し待つんじゃぞ)

2012-10-05 15:49:32
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

●前回の最後●浮浪者はそれから魔術師の顔を覗き込んだ。「……ハハァ。冒険者さんかよ」意地悪そうに笑った。「ナメてるクチか」魔術師は答えあぐねた。異様な雰囲気の男だった。浮浪者は死体を蹴って落とし、村長の息子に再度尋ねた。「どうするのかって訊いてる。お前の村をだよ」 #つづく

2012-10-05 15:50:07
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

村長の息子、つまりコンラートの息子ケビンは、この浮浪者を知っている。いや、なにをもって「知っている」と見做すのか。何も知らないといえば、知らない。ケビンを初めとする村人は、川向こうの森の中に一人で隠者のように暮らすこの浮浪者を警戒していた。浮浪者は村人と関わろうとした事がない。

2012-10-05 15:54:26
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

一度、村娘が森の中へ迷い込んだことがあった。病に効くと噂の光るキノコを採りに行き、帰り道がわからなくなったのだ。五番目の美女であったので村は騒ぎになったが、翌日、無事に帰ってきた。キノコのかわりに、見慣れぬ薬草の煎じ薬を持たされていた。

2012-10-05 15:57:17
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

「あれはお前か」ケビンは浮浪者に訊いた。「さあ。知らん」と浮浪者。ケビンはしかし、それが嘘だとわかった。この男が助けたのだ。「お前は何者だ」ケビンは問うた。浮浪者は「身の程を知る者だ」と答えた。「あんたは身の程知らずだな」と魔術師を指差した。「ナメてたんだろ、ゴブリン退治を」

2012-10-05 16:01:09
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

「……」「お前らも、ナメてる奴らに任せて、このザマだな」ケビンに言った。そして続けた「まあいい。俺が質問の途中だぞ。まぜっかえすな。お前、村をどうするんだ。ゴブリンどもを」「村はもうダメだ」「そりゃそうだが」と浮浪者、「捨てて逃げても、野たれ死にじゃないのかね」「……」

2012-10-05 16:03:41
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

「生き残った奴らは、2.3日は生かされる」浮浪者は言った。「その後は解体されて、腸詰めやら、シチューやら、皮紙やら、蝋燭になるってわけだ」「おええ」魔術師は吊り橋にしゃがみこみ、嘔吐した。浮浪者は侮蔑的に見た。「どうしてわざわざそんな事を言う」とケビン。「助けないのか」と浮浪者。

2012-10-05 16:07:11
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

「できるわけがない!」「なあ、俺はな、いいチャンスが来たと思ってる。一人だと色々と不便だ。お前らのような連中でも、十分貢献できる」「チャンスだと?」「利害関係の話をしよう。俺はゴブリンの巣からオーブを盗みたい。お前は村人の生き残りを助ける。そこの姉ちゃんは、冒険を成功させる」

2012-10-05 16:11:22
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

魔術師は死んだように蒼ざめていた。ケビンは眉根を寄せた。「男になりたくないのか。お前」浮浪者は言った。村長の息子である彼のプライドを揺さぶる言葉だ。浮浪者は続けた。「物事には、やりようがある。おい姉ちゃん。お前、魔術は一日何回だ?せいぜい二回だろ」「……」「図星だな。まあいい」

2012-10-05 16:26:50
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

浮浪者は村の方向へ吊り橋を歩き始めた。「おい」ケビンは呼び止めようとした。「時は金なりだ」と浮浪者。「まだゴブリンがいるかも」「さっきの音を聴いただろう。撤収の合図だ、あれは」浮浪者は立ち止まり、ケビンと魔術師を睨んだ。「……俺の言うとおりやれば、うまくいくぜ。やるんだろ、え?」

2012-10-05 16:42:11
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

「……わかった」ケビンはとうとう頷いた。すると魔術師も頷く。そうする他ない。独りで見知らぬ森の方角へ逃げてゆくなど、できはしないからだ。ケビンに思い留まらせる言葉も持っていない。彼女は未熟なのだ。……かくして、三人は村の敷地へ入り込んだ。散乱した四肢やはらわたで大変な有様である。

2012-10-05 16:51:04
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

「わかってるだろうが、奴らは夜行性だ」浮浪者は破壊された建物から目ざとく蜂蜜酒を盗み、飲みながら説明した。「棲家に帰り、宴会でもやって、日が昇れば寝ちまう」「寝込みを襲うのか?策はそれだけか?」「そりゃ、起きてる連中もいるさ。警戒はしているだろうからな。そこで姉ちゃんの魔術だ」

2012-10-05 16:54:46
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

浮浪者は魔術師を振り返る。「火炎はダメだ」「……」「奴らの巣の近くで、太陽が南中する頃までキャンプだ。その際にお前は魔術を準備する。眠りの呪いだ。二回だったな。二回ともそれだぞ。手っ取り早いし、沢山のゴブリンを一度にやる事ができる」「……わかったわ」と魔術師。

2012-10-05 17:06:55
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

「あなたは何者なの」「お前、自分がどこの生まれで、どんな育ちか、覚えてるか」「……南の港町」魔術師は答えた。「占い師の『熾火の手』に師事して、それで……」「ああ、ああ、正直それぐらいだろ」浮浪者は遮った。「あとは、酒場で集まって、ゴブリン退治に出掛けるところまで、すっ飛ぶわけだ」

2012-10-05 17:25:18
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

「何?」「説明してもわからんだろうから、いいさ」浮浪者は言った。ケビンはきょとんとしている。浮浪者は続ける。「とにかく俺はゴブリンどもの事は、少しはわかってる。どう戦えばいいかもな。で、巣にあるオーブがほしい。ゴブリンが地上に湧いて出るのを待っていた。そんなところでいいだろ」

2012-10-05 17:30:31
MC9太郎ナラティブ @Gno_penO

浮浪者は死体が握っている剣をケビンに示した。「拾っておけよ」「ああ」ケビンはやや上の空で従う。浮浪者は道にしゃがんで、侮蔑的に言った。「調べるまでもない。ご覧の通り、考え無しの連中だ」点々と散らばる血痕やゴミ屑、草木を破壊した跡が続いているのを指差す。「追っていくぞ」 #つづく

2012-10-05 17:38:48