宮脇昭理論(「潜在自然植生」)による森づくりをめぐって。(2012年11月)

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リンク はてなダイアリー ■ - 仕事だけじゃない日誌 2011年3月11日の大津波被害に遭った土地で宮脇昭氏が推進する植樹運動(「緑の防潮堤づくり」)について..

 ※「緑の防潮堤(いのちを守る森の防潮堤)」運動の問題点について、とくに植樹される樹種の選定に絞って生態学的観点から整理している。「潜在自然植生」概念の問題性についても指摘している。必読。

▽「(1)歴史性の軽視/ 植樹する種の選定について、宮脇〔昭〕氏は「これがこの土地本来の森だ」「次の氷河期までもつ森だ」というレトリックを使う。普通の人は「専門家の方がそう言うならばそれが正しいのだろう」と信じてしまうが、ここで言う「土地本来」とは、一体どのような意味なのか。/ 非常に重要なのは、宮脇氏は「土地本来の森」がかつてその土地に存在した とは決して言わないことである。人為を完全に排した場合、何百年か後にその土地に成立するであろうと宮脇氏が考える植生、それが潜在自然植生である。過去にどのような植生がその土地に存在したか、という歴史的な視点は、未来志向の潜在自然植生の理論にとってはほとんどどうでも良いのだろう。」
▽「(2)科学的根拠の非開示/ もう一つの問題として、宮脇氏がどのようにその「潜在自然植生」を決めるに至ったか、論拠として客観的に検討できるような観察事実や論考が示されていないので、第三者が科学的な批判を行うことが困難である、ということが挙げられる。/ シンポジウムの中で、宮脇氏は樹種選定の根拠として「タブ・シイ・カシ林の子分であるマサキやヤブツバキはもっと北まである」というレトリックを使われた。しかし現代生態学の知見に基づけば、マサキやヤブツバキはタブや常緑カシ類とは独立に分布しているのであって、マサキやヤブツバキが青森県まで分布することが、常緑カシ類が大槌町にあったことの証拠にならないことは明らかである。固定的な樹種のセット(=群集)が実在するとする過去の植物社会学の理論は、現代の生態学では否定されている。そもそも地図に線を引き、線の南北で「極相」の種組成をたった2通りに分けるやり方そのものが、現代生態学的には大いに疑問があると言える。」

※上掲ブログエントリーに対するフォローアップとして、植生学を専門にする方による次の記事も公開された。
 →▼宮脇緑化に対するmahoro_sさんの文章が分かりやすいので紹介します〔2012-12-04〕|日々粗忽 succession http://d.hatena.ne.jp/sawagani550/20121204/p2
  

リンク Maystorm Journal 寺山 光廣 森(緑)の防潮堤について/強度の検証と郷土の設計図が見えない 震災瓦礫のうちの可燃瓦礫を全国にばらまいて焼却し、汚染が濃縮される焼却灰を各地で埋め立て処分させようと、政府は強力に進めています。その目的とするところは「...

※東日本大震災後、宮脇理論にもとづいて提唱されている「森の長城プロジェクト」「いのちを守る森の防潮堤」について、とくに土木工学的な強度の問題を中心に批判している。
▽次の証言を含む。 --「宮脇〔昭〕氏が植えて津波に耐えたモデルと紹介する〔宮城県〕多賀城市のイオン〔の森〕を訪れた。幅1~2m、長さ数10mの低い土塁にまばらな照葉樹の列。一部は損壊? 海から約1km、海側には屋根付き駐車場。実証例とするにはあまりにもお粗末。スギ林は津波で流されたと言うが、塩水で立ち枯れた多くのスギを見た。」
※イオン多賀城店については、次の動画で宮脇氏が紹介している。03:50-。
 →▼(動画)東日本大震災 現地調査(宮脇 昭 緊急提言:2011 4 8撮影) - YouTube ttp://www.youtube.com/watch?v=M3BENrrhJJM

※次のTogeterまとめも参照。
 →▼「森の防潮堤」構想と宮脇昭氏への土木工学的観点からの批判(2012年3月-6月) - Togetterまとめ http://togetter.com/li/359591

リンク furukawa-ringyo-shichikashuku.blog.ocn.ne.jp 山里の暮らしに関する一考察: そんなに弱くは無い

※林業の現場の立場から、針葉樹の根は浅くて弱いのに対して広葉樹の根は深くて強い、と主張する「いのちを守る森の防潮堤」に違和感を表明している。
▽「何の話かというと、マツとかスギの根のことです。山地で土砂災害があると、何かと人工林犯人説が流布されます。確かに、手入れの遅れた過密林や造林不適地に植栽された林分等は、災害の誘発要因になっているのでしょうが、これらのことによってマツ、スギの根は浅く軟弱と決めつけるのには、違うんじゃないの? と思います。〔略〕」(強調、引用者)

リンク furukawa-ringyo-shichikashuku.blog.ocn.ne.jp 山里の暮らしに関する一考察: そんなに弱くはない つづき

 ※「科学的な話ではないので少々アレなんですが」との前置きのもと、七ヶ宿社有林(宮城県刈田郡)での施業から得た経験則を次のように述べている。(強調は引用者)
▽「〔略〕作業道開設にあたっては、人工林が散在する状況から 人工林施業であっても天然林を通過することが結構な頻度であり、針葉樹・広葉樹様々な樹種の支障木伐根を重機で除去しています。/ そんな中で実感する強い根っこランキング1位は、文句なしで天然性ケヤキ〔落葉広葉樹〕なのですが、それに僅差で迫る頑固な根の持ち主はスギの造林適地に植えられたカラマツ〔針葉樹〕、次いで天然アカマツ〔針葉樹〕、適地のスギ(秋田出身)〔針葉樹〕、ミズナラの古木〔落葉広葉樹〕という順番で、世の中の人々が好きな天然ブナ〔落葉広葉樹〕は上位5位に比べると グッと簡単に掘り返すことが出来、根の強さでは遠く及びません。/ また、王者ケヤキも直根は大したことなく、周囲の側根を断ち切ると案外簡単にひっくり返せるので カラマツ・天然アカマツ・裏系スギ〔日本海側原産のスギ〕ほど苦戦することはありません。/ 大深沢山林は表土の下に、風化しつつある花崗岩層があり 殆どの樹は主根を表土に這わせている感じなのですが カラマツとスギは岩の割れ目に根をくい込ませているので周囲を掘り取っても、抜いたり返したりすることが出来ない丈夫な根でうんざりします。/ また、天然アカマツは風当たりが強く 貧栄養な乾燥土壌の尾根部や急傾斜地で大きく枝を張った状態でそそり立っています。この状態を維持できるのは、根が丈夫であるに他なりません。/ 私の乏しい経験則ではありますが針葉樹(主要造林樹種)の根は弱くはないと思いつつ、更につづくかな?」

 ※こうした「針葉樹は根張りが弱く、広葉樹に比べて土壌緊縛力に劣り地崩れを起こしやすい」とする主張への疑問は、速水亨『日本林業を立て直す』(2012)の第4章p.117 以下にも記され、「スギが植えられている場所が崩れやすいとすれば、スギという樹種によるのではなく、崩れやすい場所にスギを植えるから結果としてスギの林が崩れやすく見えるのである。〔中略〕表層の崩壊はともかく、大規模な崩壊〔深層崩壊〕の場合、人工林のスギやヒノキがあるから崩れやすい、というのは誤解である。」(p.118)と結論づけている。

※また、関連して次のブログ記事およびブログコメント欄での議論も参照。
 →▼水害と人工林批判を結びつけたがる愚〔2011/09/06〕|森林ジャーナリストの「思いつき」ブログ http://ikoma.cocolog-nifty.com/moritoinaka/2011/09/post-6632.html
  

▼『森林飽和 :国土の変貌を考える』NHK出版|Webcat Plus http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/book/4975373.html
 ※「東日本大震災に係る海岸防災林の再生に関する検討会」座長も務めた太田猛彦の新著『森林飽和』(NHKブックス, 2012)第一章には、次の記述がある。また同書第六章も参照。
▽「写真1-6に示すように、もともとマツは深根性の樹種である。この写真のマツの場合、津波は砂浜を2メートル近く侵食した〔地盤沈下させた〕にもかかわらず、垂直根はしっかりと地中深くまで根を伸ばして踏ん張っているのである。マツは根が浅いということはない。つまり技術的には、既存の知見を援用して注意深く植栽していれば、根返りによる被害は避けられた可能性があった。非常に惜しいことである。/ 第六章を先取りして言えば、私は海岸林の一部に広葉樹を植えることには反対しないしかしそれが、ここに広葉樹を植えていたら根がもっと深く張っただろうとか、流されなかっただろうとかいう単純な発想であれば賛成できない。砂浜海岸での広葉樹の植栽は実績が少ない。高齢に達したときのナラ枯れ病も怖い。したがって、植栽に莫大な資金のかかる海岸林造成においては、現時点では実績のあるクロマツを中心に考えていく必要があると思う。」(p.21。太字強調は引用者)
  

▼[PDF]「白砂青松再生の会」お便り No.29 http://www.biochar.jp/hakusaNo29.pdf
 ※「海岸と広葉樹」「瓦礫の山に植林することについて」を含む。東日本大震災後の宮脇理論に基づく海岸林への広葉樹植栽の失敗例を具体的に挙げ、被災地防潮林での安易な広葉樹植栽に危惧を表明している(ただし「森の防潮堤」や「森の長城プロジェクト」の具体的構想について誤解している気味もあり、注意が必要)。著者は小川眞 氏(大阪工業大学工学部環境工学科 客員教授、日本バイオ炭普及会会長)。2012年3月27日発行。

▼[PDF]「白砂青松再生の会」お便り No.28 http://www.biochar.jp/hakusaNo28.pdf
 ※No.28は、「名取市閖上浜の海岸林再生」「陸前高田市高田の松原」を含む。東日本大震災後の2011年7月、10月の海岸のマツ林の現地視察報告がなされている。著者は小川眞 氏。2011年11月23日発行。

▼日本バイオ炭普及会 http://www.biochar.jp/index.html
 ※上掲「白砂青松再生の会 お便り」PDFは、いずれも「日本バイオ炭普及会」Webサイトで公開されている。
  

▼緑の丘に、つどいましょう。|ほぼ日刊イトイ新聞 http://www.1101.com/midorinooka/2012-09-24.html
 ※「森の長城プロジェクト」に関する、細川護煕(「森の長城プロジェクト」理事長)、西畠清順、糸井重里、岸由二の四氏による座談会の記録。 全8回。
 ※岸由二氏(進化生態学)と西畠清順氏(プラントハンター)は「潜在自然植生」説について否定的な立場から発言しており、とくに岸氏は宮脇理論をほぼ全否定している。(以下、引用文中の太字強調は引用者。)

▽「岸〔由二〕: 「マウンド」の考え方なんですが、これは、平らな小規模の公園のような場所だとうまくいくと思います。埋め立て地に10mくらいの丸いマウンドを作っても、同様にうまくいくでしょうね。横から散乱光が多量に入ってくるので、宮脇先生のおっしゃるように、地面に草が出て、低木、中木、高木、きれいに生えそろうと思います。ところが、そのマウンドの幅が30m、50m、100mになってくると、どうか。光がどうやって入ってくるのかを、専門的に検証されていないのではないでしょうか。/ 木を密植して、管理を手薄にしてしまうと全部がモヤシ林になってしまう恐れがあります。枝もなくモヤシのように育った木は強風にさらされれば倒れてしまいます。倒木の散乱するモヤシ林は山火事の危険も高いでしょう。地べたも日が当たらず真っ暗ですから、まったく保水力がなくて、水は土とともに流出して水害も起こりやすくなりますね。」(第3回 おもしろいところ。)
▽「〔西畠〕清順: 津波のあと、陸前高田の松原へ案内していただきました。そこでは、海辺の松の根っこが1mぐらい下がっていました。あれを見ていると、松って、あるべくしてあそこに植えられてたんだなということが、よくわかります。広葉樹じゃ絶対育たないような環境です。/ 細川〔護煕〕: やっぱり海岸べたの、潮風の強いところですね。/ 岸〔由二〕: そうですね。そこではたしてタブがもつかとかというと、わからないと私は思います。エノキなどは落葉樹ですが、潮に強いので、大丈夫かもしれない。/ 清順: 地下水面のことも関係があります。広葉樹は太い根っこがあって強いというのもそれは地盤ありきだと思います。だから、エッジのほうではやっぱり松になるのかな、とぼくも思います。/ 細川: 地下水面は、確かに問題ですね。/ 清順: そうなんです。ただ、まだ松の場合は、横に根が長く張りますから、タブなどの広葉樹とは、違います。そういう意味でも、松は実績があって、美しさももちろんあってね、信仰の対象になってきたと思うんです。もちろん、防砂林という役割もあったし。」(第5回 まだらの森。)
▽「岸〔由二〕: 僕は黒松については、そんなにくわしいことは知らないんですが山の中の仕事が多いので、赤松については付き合いが長いんです。丘陵地のどうしようもないところに生えているのはたいてい赤松です。ガレ地のようなところに定着する松の力ってすさまじい。黒松は、海岸線に大規模に自生していたかどうか私はわからないですけれども、案外あったんじゃないかな、とも思います。/ いま、この森の長城プロジェクトでうたっている「潜在自然植生」についても、植林のターゲットになっている場所にタブその他の常緑広葉樹がそもそもかつて極相としてあったかどうか学術的にも難しい問題だと思うんです。/ 〔西畠〕清順: その「潜在自然植生」が何年前のことまでを指しているのかぼくはちょっと疑問に思うんです。例えば100年前、200年前にあった、というものなのか、1万年前からあったものを指すのか。そこが重要だと思います。/ 例えば海外で調査して、「こんなのが自生でもともと生えていたよ」と言われるんですけれども、それがほんとうなのか、わからない。それがたとえ100年前からあったものだとしても──いや、いってみれば、世界中どこでも、「100年前に人が植えたもの」だらけなんですよね。ただたんに、そうなんです。200年前、300年前も同じこと。」(第5回 まだらの森。)
▽「岸〔由二〕: そのあたりは、花粉分析という手法を使って1000年、数千年の過去の植生を調べる分野なんかがありますが、調べだすと、そんなに〔「潜在自然植生図」の描くようには〕きれいにならないというのがわかります。例えば関東地方の平野で寒いところに生えていたのはほとんどシラカシだと言われます。しかし調べればたぶんあっちにもこっちにも落葉樹の林があります。当たり前の話なんですよ、雷が落ちて山火事も起こり、大雨で大規模な土砂崩れもあり森の一定の割合の面積は、確率的にいっていつも焼け野原や荒地に決まってる。そこが草地、雑木林と再生されるわけですから、全部が単純な遷移の理論で予想される極相林になることはあり得ない。いつも「まだら」、それが当然なんですね。/ だから、その地域で「シラカシが偉くて落葉広葉樹が偉くない」ということではないんです。様々な条件に対応して常緑のカシや落葉樹がすみわけ、混在してるだけ。理論生態学の領域では、単純な遷移説はもうほとんど権威がないと思います。/ だからこそ、いろんな意見を取り入れて柔軟に進めてゆくのがいいですね。」(第5回 まだらの森。)
▽「岸〔由二〕: 話はそれるんですが、津波に強い地域というのは、場合によっては洪水にきわめて弱いんです。海からの水を止めると、山の上から来た水が溜まります。両方がうまく調和しないんです。」「岸: 緑の長城を作ってもいいけれども、水害に弱くなるとわかっているんだから、同時に、流域の山の管理を徹底するとか、水を貯める遊水池や調整池をどんどん作るとか、居住地を移動することを検討するとか、セットでやらないとダメです。」(第7回 津波と洪水。)
▼津波から命を守る森をつくる、という話〔2012/08/08〕|清順 http://tinyurl.com/bxcjpdt
  

(「植物生態学」の展開)

▼Re: 質問:平衡と非平衡の論争〔2011/02/15〕|ゼミ日程のご連絡とご相談|Google グループ https://groups.google.com/forum/#!msg/sess-ml/a9I6PBD4b1I/4gtXbhPlUHwJ
▽「群集生態学での平衡、非平衡に関する議論については、Mさんが整理してくださったとおりです。前回話題になったのは植生に関することですので、植物生態学に関する側面についても補足説明させていただきます。/ Kさんが「平衡説」として紹介したのは、Clementsの極相説(Climax theory,単極相説気候的極相説)という古典的な節〔説〕に該当すると思います。ある気候条件のもとでは、植生(植物群集)は「極相」という特定の状態に至るというものです。これは、植生の変化を個体の成長になぞらえた、一種の群集=有機体説です。これに対して、Gleason〔Henry A. Gleason〕は、植生の動態は、環境変動と周辺から移入(そこには確率性も影響)やその場所の履歴により決まるという、個別的群集観の視点から批判をしました。この議論は、1900年台初頭という遠い昔の話です。/ 植物生態学では、長らくクレメンツの極相説が強い影響力を持ってきました。しかし、1980年代におけるマッカーサー〔Robert H. MacArthur〕らの理論的・実証的研究により、単極相説は(欧米では)支持を失いました。代わって、植生動態のメカニズムの丁寧な研究成果を踏まえた動的な植生観が発達しました。この時代の重要な成果として、Pickett and White (1985) "The Ecology of Natural Disturbance and Patch Dynamics" があります。「パッチダイナミクス」「ギャップダイナミクス」「シフティングモザイク」といった動的な植生観が説明されています。/ 現在でも、植生の種組成や多様性の決定機構の研究は盛んですが(Mさんも紹介した中立説とニッチ説の議論等〔)〕、基本的には、1980年代に発達した動的な植生観(非平衡説)の延長線上にあるものと思います。」
▽「日本は、ちょっと(不幸な?)特殊事情があります。日本の植物生態学では、長らく「植物社会学 Plant sociology」が強い影響力をもっていました。端的にいえば、宮脇昭先生(植樹マンをご存知ですか?)のスクールです。植物社会学者は「植生(植物群集)」を生物種のように扱い、その特徴や分布を記載するという、いわば「植生」を対象とした分類学をやります。このアプローチはクレメンツ的な有機体論であり、現在では学問的には否定されているものです。しかし、日本ではこの1900年台初頭の考え方の中で仕事をしている人がいます。さすがに生態学会では見かけにくくなりましたが、造園学などの関連・応用分野ではまだ影響力をもっていると感じます。私は前の職場(緑化・造園系)で驚かされました。/ 補足のつもりが、蛇足になってしまい、わかりにくくなってしまったかもしれません。/ 何かありましたらまたご連絡ください。」
 ※Web上に公開されているものだが(Google検索で発見)、念のため一部を伏せ字とした。引用文中の太字強調は引用者。

 ※文中で、1980年代における生態学の「重要な成果」として言及されている Steward T.A. Pickett と Peter S. White の "The Ecology of Natural Disturbance and Patch Dynamics"〔『自然撹乱とパッチダイナミクスの生態学』〕 は次のもの。(なお、鷲谷いづみ『生態系を蘇らせる』(2001)第2章では、「画期的な著作」「ピケットとホワイトの著書『撹乱と不均一性の生態学』」として言及されている。)
 →▼Ecology of Natural Disturbance and Patch Dynamics|Webcat Plus http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/book/7169.html

▼遷移|露崎史朗 (TSUYUZAKI Shiro, 植物群集生態学) http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~tsuyu/top/dct/scn-j.html
 ※露崎史朗氏(植物群集生態学・環境保全学専攻。北海道大学大学院教授)による用語解説。「多極相説(poly-climax theory)」や、Robert H. Whittaker(ホイタッカー)の唱えた「極相パターン説(climax pattern theory)」を生態学における極相概念の転換を示すメルクマールと見なしている。

 ※また、クレメンツ流の単極相説について、次の記述がある。
▽「気候的極相 (climatic climax) (=気候極相単極相, =mono-climax)」「F.E. Clementsが提唱した、遷移初期にはどのような群集であろうとも、最終的に1つの気候帯の中では唯一の極相に到達するという、気候的極相説にもとづく極相を指す。すなわち、極相は気候のみにより決められるとした極相観である。極相以外の植物群集は、すべて極相に向かい推移しているか、あるいは何らかの要因により推移が停滞した状態(亜極相など)にあると考える。極相は、優占種群が存在し、それらの種の安定性と永続性により認識される。気候的極相は、地球規模では、おおむね気候帯をもとにした群集区分であるバイオーム〔生物群系〕に相当する。しかし、この極相概念は、実証性に乏しく、その後提案された多極相説、極相パターン説などの方がより遷移現象を説明しやすいことから、あまり用いられることはない概念となった。なお、現在の日本の多くの群集は、何らかの形で撹乱を受けた二次的な群集であり、気候的極相に相当する群集は、ほとんど存在しない(→極相林)。」
  

(日本生態学会のリリース)

リンク www.esj.ne.jp 日本生態学会防潮堤建設にあたってのお願い 日本生態学会のウェブサイト。日本生態学会は生態学およびその関連分野に関する研究を推進するため設立されました。

▽「(1)防潮堤の建設にあたっては、生態系からの恩恵が大きく損なわれないよう、水産資源を含む野生生物の現状、生育・生息環境条件、ならびに人と自然の関係に関する事前調査を十分に行うべきであると考えます。そのための適切な調査内容、調査法、評価法に関して、生態学・植生学・水産学の最新の知見を活用したご提案や、専門家のご紹介といったご協力をさせていただきたいと考えております。/ (2)復興工事に伴って生物多様性保全の上で特に重要な場所を破壊することがないよう、地域の状況に詳しい研究者から絶滅危惧種の分布等について情報をご提供するなどのお手伝いをさせていただきたいと考えております。」

リンク mytown.asahi.com 朝日新聞デジタル:被災地の自然ピンチ-マイタウン宮城 東日本大震災の被災地の沿岸で生態系の破壊が心配されている。津波で打撃を受けたうえ、海岸堤防や海岸防災林の復旧工事が本格化しているためだ。日本生態学会などの専門家は8日、被害が最も激しく工事が生態系に
リンク www.esj.ne.jp 日本生態学会東日本大震災被災地復興計画に対する要望 日本生態学会のウェブサイト。日本生態学会は生態学およびその関連分野に関する研究を推進するため設立されました。

  

(参考)

※上掲「イオンの森批判(宮脇理論批判ではありません)」記事中で言及されている「破れガラスの論理(割れ窓理論)」については、さまざまな問題が指摘されている。
 →▼割れ窓(実はホームレス排除)理論 - Togetter http://togetter.com/li/232729
 →▼続 割れ窓(実はホームレス排除)理論 - Togetter http://togetter.com/li/232767
 →▼割れ窓理論は正しいですか? Wikipediaによれば批判的な学者が少なからず居るよう...|Yahoo!知恵袋 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1273771587
 →▼ブロークン・ウインドーズ理論(ジェームス・ウィルソン、ジョージ・ケリング共著)|株式会社A・P総研 http://ap-soken.com/modules/apcontainer/?ACTION=content&content_id=1475
  
  

関連Togetterまとめ

まとめ 「いのちを守るがれきを活用した緑の防潮堤構想」説明会@陸前高田市(2012年7月31日) ▽東日本大震災の津波により、じつに死者1,500人以上という甚大な被害を受けた陸前高田市で、2012年7月31日(火)、宮脇昭さんらが提唱する「いのちを守るがれきを活用した緑の防潮堤構想」説明会がおこなわれました。 当日の @HASHIME_chan さん(陸前高田市、現在は隣町の木造仮設住宅に入居)による実況と、「三陸沿岸の植生」の説明を担当された博物館学芸員(植物分野) @mahoroszk さんのtweetを中心にまとめます。 なお、次のまとめも参照してください。 ▼「森の防潮堤」構想と宮脇昭理論の生態学上の問題点(2012年11月19日) - Togetter http://togetter.com/li/410096 ▼「森の防潮堤」構想と宮脇昭氏への土木工学的観点からの批判(2012年3月-6月.. 9867 pv 47 9 users 15
まとめ 「森の防潮堤」構想と宮脇昭理論の生態学上の問題点 ▽東日本大震災後、宮脇昭さんらが提唱している「いのちを守る森の防潮堤」(「森の長城プロジェクト」)のはらむ問題点について、@mahoroszk さん(博物館学芸員(植物分野))による生態学の観点からの指摘をまとめます。 なお、より詳しいブログ記事も公表されています。 ▼仕事だけじゃない日誌〔2012-11-19〕 http://d.hatena.ne.jp/mahoro_s/20121119/1353325467 ▽「2011年3月11日の大津波被害に遭った土地で宮脇昭氏が推進する植樹運動(「緑の防潮堤づくり」)については様々な問題がある。すでに指摘されている部分もあるし、これから出てくる議論も多いだろう。/ 現在のところ、生態学的な問題について簡潔に指摘する文章が少なく、漠然とながらも疑問視する声を多く聞.. 38708 pv 229 17 users 37
まとめ 「いのちを守る森の防潮堤/森の長城プロジェクト」と宮脇昭氏の「潜在自然植生」関連まとめ一覧 ▽東日本大震災後、植物社会学者の宮脇昭氏が提唱している「いのちを守る森の防潮堤(森の長城プロジェクト)」構想、またそれらを受けて林野庁が展開している「『みどりのきずな』再生プロジェクト」には、将来その地に住まう人びとの命にもかかわる多くの問題点が指摘されています。 批判されている問題点が冷静に議論され、より良いかたちで被災地の海岸防災林が再生されることを願っています。 ▼いのちを守る森の防潮堤 http://morinobouchoutei.com/ ▼GREAT FOREST WALL PROJECT 森の長城プロジェクト~ガレキを活かす~ http://greatforestwall.com/ ▼千年希望の丘|岩沼市 http://www.city.iwanuma.miyagi.jp/kakuka/0.. 14524 pv 74 4 users 21

  

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