東海道中膝栗毛 [初篇]
- KumanoBonta
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@yajikita_douchu @degamon_walkon @osawagase 神奈川台は海に面していて景色がよかったことから、茶屋が並んで大勢の人が休憩して眺めを楽しんでいたようです。安藤広重も浮世絵の題材にしています。http://t.co/srnS2QkA
2012-12-08 09:12:23@degamon_walkon @osawagase @yajikita_douchu 江戸時代の初めころに見えていた海は、明治の初めころに高島易断で有名な高島嘉右衛門によって埋め立てられてしまいました。しかし田中家の裏に回ると、今でも海に面していた崖の様子を見ることができます。
2012-12-08 09:14:34@degamon_walkon @osawagase @yajikita_douchu これが田中家裏の崖です。江戸時代にはこの崖の下が海でした。 http://t.co/S0VEgb45
2012-12-08 09:17:39店を出て、道草をくいながら神奈川の宿場町を歩く。旅の初日でテンションが高いのか、ワイワイとはしゃいでいるうち12歳ほどの子供に声をかけられた。子供「ねえおじさん、20円ちょうだい」
2012-12-09 18:41:53抜け参りの子供のようだ。抜け参りというのは、仕事に飽きた奉公人の子供が、ある日突然仕事をブッチして逃げ出すことである。「伊勢参り」という理由をつけ、実際に伊勢を参った証明書さえもらってこれば、勤務先から叱られることもない便利な制度だ。
2012-12-09 18:42:05「伊勢参り」という免罪符のおかげで、抜け参りの子供は沿道の住民や通行人から堂々と金や物をねだることまでできる。弥次「20円か、ああいいよ。おまえどっから来たんだ?」子供「奥州だよ」喜多「奥州のどのへん?」
2012-12-09 18:42:20子供「笠に書いてあるよ」弥次「どれ、奥州信夫郡幡山村 長松。おまえ長松ってのか」長松「うん」弥次「俺も幡山村に住んでたことあるぞ。与次郎兵衛さんは元気でやってるか?」
2012-12-09 18:42:31長松「ん、与次郎兵衛さんは知らない。でも与太郎のおっちゃんなら隣りに住んでたよ」弥次「おぉそうそう、与太郎だ。そこの家に呑太郎って年寄りの爺さんがいるだろ」長松「うん爺さんがいるよ」弥次「与太郎の奥さんてのは確か女だよな」長松「うんおばさんは女だよ。よく知ってるね」
2012-12-09 18:42:43弥次「俺がいた頃の村長は熊野伝三郎っていったんだ。たしか伝三郎の奥さんが飼ってた馬と仲良くなって家を逃げ出したはずだぞ」長松「わーおじさんよく知ってるね。村長さんのおばさんは、村長さんちで働いてた馬右衛門さんとどっか行っちゃったんだよ」
2012-12-09 18:42:55弥次「だろ? お、おいどうした、なんかフラフラしてるぞ」子供「うん、おなかがすいちゃって…」弥次「なんだ、餅でも食うか? 買ってやろう。来いよ」弥次郎が餅を5~6個買って長松に渡し、さらに調子に乗って話しを続けた。
2012-12-10 19:38:14弥次「どうだ、おじさんいろいろ知ってるだろ?」長松「うん、そうだね。おじさんすごいね」弥次「じゃな。気をつけて行けよ」長松「おじさんありがとう。ごちそうさまでした」喜多「ばいばーい。気をつけてなー」
2012-12-10 19:38:38子供B「おい、長松」長松と共に抜け参りをしている連れの子供が、弥次達と別れた長松のところへやって来た。長松「おう」子供B「あっ、その餅どうしたんだよ。俺にもひとつよこせよ」
2012-12-10 19:38:49長松「あそこにいるオッサンに買ってもらえよ。あのオッサン、地元の話をすると喜んでいろいろ喋りだすぞ。テキトーにうんうんて言っときゃ、ヘラヘラして餅ぐらいすぐに買ってくれるぜ」子供B「マジかよ。俺ちょっと行ってくるわ」弥次郎のところへ駆けていった。
2012-12-10 19:39:04子供B「ねえおじさん、僕にも餅を買ってください」弥次「おぅ、おまえはどっから来たんだ?」子供B「笠に書いてあります。奥州の下坂井村というところです」弥次「下坂井村か。与茂作ってオヤジがいるだろ」
2012-12-11 19:39:48子供B「いやそれより先に餅を買っていただけませんか。そうしないとおじさんのおっしゃることが当たりませんよ」弥次「なに? あ、そーいうことか! カモにされてた? うわぁ、やられた」喜多「弥次の負けだな。うひゃひゃひゃ」子供に負けて、餅を買い与えて別れた。
2012-12-11 19:39:59保土ヶ谷宿
江戸から八里九町 (32.4 km)
さて抜け参りの子供達と別れ、早や程ヶ谷宿にたどり着いた。あちこちの旅籠から客引きの留女たちが、道ゆく旅人に声をかけている。
2012-12-11 19:40:10彼女たちの顔はどれもお面をかぶっているのかと思うような真っ白な化粧で、みな井の字の絣に紺色の前掛けという昔ながらの制服を着ている。程ヶ谷は、その昔は帷子、新町、程ヶ谷の三宿に分かれていたのがひとつになったそうだが、ここは帷子だった頃からの伝統ファッションらしい。
2012-12-11 19:40:23旅人を乗せた馬方が、のん気に鼻歌を歌っている。「富士の人穴 馬でぇも入るぅ~ なぜにおかたにゃ穴がないー どうどう♪」留女「馬方さん、程ヶ谷でお泊まりですか~?」馬方「お客さんを武蔵屋さんへ乗せてくとこさ。でもおねえさんの顔を見たら、こいつが泊まりたいってよ。それそれ」
2012-12-12 19:36:17馬「ヒヒーン」馬達が通り過ぎると、今度は旅人が通る。留女「お客さん、程ヶ谷でお泊まりですかぁ~」留女は旅人の腕をぐゎしっとつかみ、ぐいっと引っ張る。旅人「うわぁーやめろよ、手がもげる」留女「手はもげてもいいですからぁ~、どうぞうちの宿でお泊まりくださーい」
2012-12-12 19:36:30旅人「やややめろって。手がなくちゃ飯が食えねえだろ」留女「ご飯を出さずに済むほうがこちらも助かりまーす」旅人「だーっ、やめろぉ! はーなーせーよぉー」やっと振り切って、逃げるように立ち去って行った。
2012-12-12 19:36:40次に旅の僧が通りかかる。留女「どうぞお泊まりくださーい」旅の僧、真っ白に塗りたくった留女の顔を見てギョッとし、旅僧「いや、あー、私はもうちょっと先へ行きますので…」逃げた。さらに今度は、田舎からやって来たらしい霊場巡礼者が通る。
2012-12-12 19:36:51留女「どうぞお泊まりくださーい」田舎「いくらで泊まれるべさ」留女「お一人様2500円でーす」田舎「はぁ、そんなには出せね。湯はヌルくていい、おかずは減らせ。米と味噌汁だけでええわ。あと明日の昼飯を弁当箱に詰めてくれ。それで1800円なら泊まるがの」
2012-12-12 19:37:01留女「それでしたら他へお泊まりくださーい」田舎「なんだ、ほんじゃあ辞めとくわな」皆次々とスルーして行くのを、弥次喜多は少し離れたところから腹を抱えて見ていた。
2012-12-12 19:37:10