『分類学があらためて「種」と向き合うとき』+前後つぶやき集
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そしてテレビ観ながら「哲学系はこんなのできないよ」と悔しい思いをした哲学科諸君! 我々には生物学の哲学があるぞ。みんな生物学の哲学をやろう! (宣伝)
2013-01-13 22:35:32![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
悪口の反省として、これからリチャード・ボイド先生の「恒常性・高次分類群・単系統」(『科学哲学』77巻:2010年)を読みます(なぜ全部訳すのか)。なんか原文落ちてたので
2013-01-14 01:09:18![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
今日のシンポの前にM藤さんから金曜日に開かれた「ABS問題:生物多様性条約に関連して,海外でのフィールド調査,生物試料の国内への持ち込みに関する手続き〜」の説明会のこと,ちらっと聞きました.標本の国内持ち込みはかなりシビアになるだろうとのこと.情報を集めておかないと.
2013-01-14 02:07:48![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
昨日喋ったことのメモ。自分の役目は生物多様性情報学、すなわち生物多様性に関わるデータベースでどのように「種」が扱われているか。種概念と言えば、種というクラスの話になるが、こちらはインスタンス側の話。 #bunrui2013
2013-01-14 17:08:06![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
その核となるのは「タクソンコンセプト」。分類群名が指し示すタクソン(=分類学的単位)の範囲は、研究の進展によって変化するし、誤同定が判明すれば全く異なるものを指し示すようになることもある。分類群の有効名(ここでは動物命名規約の)も変わる。 #bunrui2013
2013-01-14 17:15:27![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
なので、種名をキーとして様々なデータを取ってきた時、異なるタクソンコンセプトに紐づけられたデータが混在することがよくある。 #bunrui2013
2013-01-14 17:16:57![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
オオミズアオはこれまでActias artemisと言う学名で広く知られてきたが、最近 artemis は中国の別種であることが判明し(PDF: http://t.co/C2BMy8Dg)日本産はActias alienaとなった。 #bunrui2013
2013-01-14 17:20:38![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
しかしGBIF(http://t.co/8bsFTtrl)やNCBI(http://t.co/DSN2BSwh)では、日本産のオオミズアオのデータの多くがActias artemisで登録されている。事情を知らない人は判断つかないことも多いだろう。 #bunrui2013
2013-01-14 17:22:32![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
タクソンコンセプトは、基本的に学名+典拠(たとえば「蛾類標準図鑑の」Actias aliena)でユニークになるので、それにID(できればLSIDなどの永続的ID)が付与したレコードが、情報として扱う場合の単位となる。 #bunrui2013
2013-01-14 17:27:50![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
タクソンコンセプトとその関係性を表記する標準形式としてTaxon Concept Schema (http://t.co/aJcZNSMf) が、Darwin Coreにはリンクするための項目taxonConceptIDがあるがほとんど利用されていない #bunrui2013
2013-01-14 17:30:01![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
種名情報基盤として、Global Names Architecture (http://t.co/EE8acv8j) の構築が進んでいる。リソースの種名をインデクス化、標準化し、異名等をグループ化し、それを目録等オーソライズされた種名と互いにリンクする。 #bunrui2013
2013-01-14 17:35:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
ICZNによる動物種名の公式登録システムZooBank (http://t.co/arMvivUG) もGlobal Names Architectureの一部。菌類では Index Fungorum (http://t.co/ZSSZMqVO) と連携 #bunrui2013
2013-01-14 17:41:30![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
別の方向性として、Linked Data / Linked Open Data (http://t.co/phyTzTta) の活用がある。発表では省略したがhttp://t.co/Bu9Usbs4 (http://t.co/cZTzpzai) がある。 #bunrui2013
2013-01-14 17:45:11![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
自分が関わっているのは、LODAC (http://t.co/jgfuwedu) プロジェクトの種名データのLOD化。 サイドワークでタクソンコンセプトを扱う所まで到達できてないが、蛾とか蝶とかのデータを使って何か進められないかと思っている。協力者ゆる募中 #bunrui2013
2013-01-14 17:48:25![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
もう一つの「種」に関連する動きがDNAバーコーディングにおける Barcode Index Number (BIN) バーコードデータベースの配列をクラスタリングし、各クラスタにBINというIDを割り当てている #bunrui2013
2013-01-14 17:50:40![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
BINの概要は一昨年のiBOL conferenceで紹介されたが (http://t.co/anqugr6T) まだ論文になってないようだ。バーコードの公式データベースBOLDにはBINデータベースがある http://t.co/PhMw1EhE #bunrui2013
2013-01-14 17:54:58![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
で、オオミズアオの含まれるBINはこちら http://t.co/RfYGNbd7 実際、証拠標本の学名は、古いコンセプトのartemis、シノニムのxeniaなどが入り乱れているが、それらが単一クラスタで整理されていることがわかる。 #bunrui2013
2013-01-14 17:58:26![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
BINは、DNA塩基配列をcriteriaとして分類するDNA taxonomyの単位 (MOTU) に似た概念かもしれない。ただし、バーコーディングにおいては種名はアノテート(注釈)なので、分類体系そのものとは独立。 #bunrui2013
2013-01-14 18:01:44![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
BINは、永続的IDがついている点で、文献の「sp. 1」「sp. 2」よりも参照しやすい(sp.番号+典拠によって、オーラサイズされた目録に所収されていることもあるが)。分類が進んでいない群、混乱している群では、「種」の代用として使われるかもしれない。 #bunrui2013
2013-01-14 18:06:24![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
まとめ1:タクソンコンセプトは、種名文字列だけでは特定できないので、様々な種名を含むリソースを組み合わせて使う際に問題となる。 #bunrui2013
2013-01-14 18:08:51![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
まとめ2:多様性情報学の世界で複雑性を扱う動きとして、コンセプトの記述法 (TCS) 、種名の情報基盤 (GNA) 、「種」とは異なる整理法 (BIN) などがある。分類学的情報を電子化し他分野で活用していくためには、情報基盤の進展も欠かせないだろう #bunrui2013
2013-01-14 18:11:51![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
以上です。「種」を巡る観念的な問題とは離れていますが、分類学的知見のユーザーからの視点では、こういうこともあるのかという話題提供として、何かお役に立てることがあったなら幸いです。
2013-01-14 18:14:02![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
こぼれ話。オオミズアオ周辺の分類はまだ混乱していて、Zolotuhin (2011) は日本産オオミズアオを A. aliena, A. xeria, A. dulcinea の3種に分けている(論文どこやったかな)。
2013-01-14 18:26:56![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
(続き)日本のオナガミズアオも何種に分けていて、A. artemisは、そのうちの一種としている。これらの扱いは、日本では根拠が無いとして採用されていないが、WikiSpeciesでは採用されている (たとえば http://t.co/UfEUSAjU) 。
2013-01-14 18:31:52![](https://tgfile.tg-static.com/static/web/img/placeholder.gif)
#bunrui2013 一昨日の第12回日本分類学会連合公開シンポジウム 〈分類学があらためて「種」と向き合うとき〉 http://t.co/CDuBShOw では,最後の総合討論の時間がやや不足気味だったので,思いつくままにオーガナイザー総括をば.
2013-01-15 23:32:04