東海道中膝栗毛 二編 下

十返舎一九が1802年に発表した「東海道中膝栗毛」。ここでは「二編 下」を現代語に超意訳しご紹介いたします。意訳ではありますが、ストーリーはかなり原作を忠実に再現しました。 他の「道中膝栗毛」シリーズはこちらからお入りください→ http://togetter.com/id/KumanoBonta 【文中で使用されている表現は、時代背景や作者の意図を尊重しています。ご了承ください】
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現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次小咄「もう一匹のネズミが『じゃあおいらが持ってきた巡礼のフンドシはどうだろう』口にくわえて振ってみると、やはりチントンシャンと三味線の音がする。こりゃ不思議なもんだと皆で驚く。」

2013-03-05 19:49:59
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次小咄「さらに別のネズミが『おいらは喜多という男のフンドシを持ってきたが、これは越中フンドシだから他のより短い。きっと三味線じゃなくて胡弓の音がするんじゃないか』とくわえて振ってみると、ベベンベンベンベンと他のものより低くて太い義太夫三味線の音がする。」

2013-03-05 19:50:04
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次小咄「ネズミ達は驚いた。『六部や巡礼のフンドシは皆かわいい唄三味線の音がするのに、どうして喜多という男のフンドシは義太夫三味線の音がするんだろう』皆で頭を捻っていると、隅っこでしばらく考えていたネズミがひらめいた。」

2013-03-05 19:50:09
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次小咄『わかったぞ。きっと喜多八って男は太棹なんだよ』と言いましたとさ。」 喜多「下ネタじゃねーかっ」

2013-03-05 19:50:14

由比宿
江戸から三十八里二十一町四十五間 (151.6 km)

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次の小咄が炸裂するうち、由比宿にたどり着いた。宿場では茶屋の店員が声を張り上げている。 店員「いらっしゃいませー。名物の砂糖餅はいかがですかー。塩味の餅もございまーす。どうぞーおやすみくださーい」 http://t.co/htQppBhk5X

2013-03-06 19:32:41
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現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「相変わらずやかましいなぁ。呼びたつる 女の声は かみそりや さてこそここは髪由井の宿由井川を越え倉沢の立場に着く。ここはアワビやサザエが名物で、海女が獲ってきた産地直送の店がある。 ここもとに 売るはさざての壺焼きや 見どころ多き 倉沢の宿

2013-03-06 19:32:48
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

【中ぼん】ご存知の方も多いと思いますが、実は江戸時代の由比に桜エビはありませんでした。明治中頃、鯵の網引き漁で偶然深く潜ってしまった網に桜エビが引っかかってきたのが始まりとか。今ではこんなに桜エビ推しですが歴史は120年と浅いのです。 http://t.co/iDShRSIhS0

2013-03-06 19:33:41
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興津宿
江戸から四十里三十三町四十五間 (160.8 km)

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

薩埵峠を越え歩くと、急に雨が降りだした。半合羽という丈の短い合羽を羽織り、笠を深くかぶって先を急ぐ。せっかくの富士の眺望も、これでは全く見えない。 砂道を重い足どりで、ようやく興津宿に着き、古びた茶屋に立ち寄った。

2013-03-06 19:32:53
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

喜多「婆さん、そのきな粉の団子を2本ください」 弥次「よぅ婆さん、久しぶりだな。元気そうで何よりだ。そこにいる子供はずいぶん大きくなったなあ」 「わしに子供はおらんよ?」 弥次「じゃあ孫か」 「いいや、子がなけりゃ孫もいるわけねえ」

2013-03-06 19:33:00
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「ありゃ?婆さんの孫じゃなきゃどこの孫だ」 「馬子じゃないよ。隣の駕籠屋の子だ」 弥次「あぁそうか。おい小僧、団子食うか」 子供「いらないっ」 「なんでだ」 「糠のついた団子なんてやだよ」 弥次「糠じゃない、これはきな粉だぞ」

2013-03-06 19:33:06
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

「うちじゃあ団子に糠をつけて売ってるんだよ」 弥次「マジかよ。どうりで舌触りがザラザラすると思った。なんだ食う気が失せたな。よし犬にやろう。おい、そこのワンコ来い」 「わん」 弥次「団子をやるぞ。それ、あーん」 「わーん」

2013-03-07 19:52:30

江尻宿
江戸から四十一里三十五町四十五間 (164.9 km)

現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

弥次「よしよし、うまいか。あぁ惜しいことをした」 残らず犬にやってしまい、少し胸やけしながら茶屋を出た。 雨は相変わらず強く降り、口数も減ってとぼとぼと歩き続ける。 尻宿を通る頃になってようやく雨があがった。 降くらし 富士の根ぶとを うちすぎて 江尻に雨の 晴れあがりたり

2013-03-07 19:52:35
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

雨が止めば自然と行き交う人々の足どりも軽くなる。荷物を積む馬の鈴の音もシャンシャンと勇ましい。 「♪夕べ通った女はひどい~♪ 飯を食い過ぎてグッスリ寝てたぁ~♪ っと。うわっ、このウマ野郎、こんな所でションベンこきやがった。よし、俺もついでだ」

2013-03-07 19:52:41
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

先を歩いていた馬方が振り返り、 馬方B「おい次郎、お前が引いてるのはどこの馬だ」 馬方A「こいつは下町の酒屋の馬だ。あの酒屋はこいつをこき使うもんだから、馬がイライラしてなさるわ。昨日は清水まで4往復だ」

2013-03-07 19:52:46
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

馬方B「それはご苦労だったな」 馬方A「その上やっと戻ってきたら宿場の馬役に当たっちまって、府中まで走らされたんだぜ。駄賃はみんな飲み代に使っちまったもんだから馬の餌が買えなくてよ、丁場に繋いでいる間に隣のトイレの屋根を全部食っちまったわ」

2013-03-07 19:52:50
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

馬方B「あの酒屋のおかみはケチくさいよな。俺があの酒屋にいた頃なんて、俺たちが食う飯の中に藁を刻んで混ぜてたぜ。しかも俺にいつも字を習えだのソロバンを覚えろだのと口うるさい。俺を番頭にでもしようと思ってたようだ。バカバカしい」

2013-03-07 19:52:55
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

喜多「馬方さん、火を貸してください」 馬方「あいよ。お兄さん達は江戸のもんだな。お江戸の人達は気前がよくてサッパリしてるよなあ。昨日俺が府中から江尻まで運んだ旦那がお江戸の人でな、いやー、いい人だった」 弥次「へえ」

2013-03-08 19:37:17
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

馬方長沼まで行ったところでその旦那が江尻まで2500円では安すぎるから酒代を2500円上乗せしてやろう』と、小吉田の的場で腹いっぱい飲ませてくれたんだ。その上『一日中馬を引いて疲れただろうから代わってやる』と言ってくださる。さすがにそれはダメだと言っても聞きやしない」

2013-03-08 19:37:24
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

馬方「無理やり俺を馬に乗せて引いてくれたよ。いやあ、あんなにいい人は初めてだよ」 その話を聞いてか、馬に乗っている旅人が急に寝たふりをしてイビキをかきはじめる。 旅人「ぐー、ぐー」 馬方「おい旦那、危ないから起きなされ」

2013-03-08 19:37:32
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

旅人「おっと。いやぁ、馬があんまりゆっくり行くからつい眠くなった。そういえば、昨日三嶋から乗った馬はなかなかよかったな。馬方も気のいい奴だった」 喜多「何が良かったんだい?」

2013-03-08 19:37:38
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

旅人三嶋から沼津まで2000円と言われて乗ったところが『こんな速い馬では落ちるかと心配だろう、おちおち居眠りすることもできず申し訳ない』とタダでいいと言ってくれたんだ。三枚橋まで来るとこんどは『腰が痛いでしょうから少しひと休みしましょう。酒でも召し上がれ』と2000円をくれた」

2013-03-08 19:37:44
現代語訳 旅行用心集 @yajikita_douchu

旅人「さらに沼津に着く『本当はもっと乗せてやりたいが、馬が跳ねるので他の馬に乗る駄賃を出しましょう』とまた2000円をくれた。いやあ、あんなに良い馬方さんに会ったのは初めてだよ」 すると、その話を聞いて馬方は、歩きながら寝たふりをし出した。 馬方「ぐー、ぐー」

2013-03-08 19:37:50
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