「大きな嘘」を構成する部品としての「事実」@榊一郎

榊一郎先生の創作講座。前回の続きでリアリティについて。 過去の著作「ソフトマシン 世界で一番優しい機械」を例に、ある「大きな嘘」を正当化するための足場固めについて解説。 後半は特撮のお約束や、アニメの設定の穴を自分で考えた設定で埋めてみるというお話。 「矛盾する、と文句を言うよりは、進んで(補完)設定つけましょう」……というのは、自分で設定を作る時にも生かせるお話。 続きを読む
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榊一郎@ノベライズ『サマナーズウォー』1&2発売中♪ @ichiro_sakaki

ちなみにたまに、ご質問等を見落としているパターンがありますが、すいません、御勘弁を。基本、勢い優先で書いているので・・・ どうしてもという場合は再度書いておいてください。<今過去のレスみていて気付いたけど

2010-09-03 11:22:02
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消極的に「こうすればリアリティが問題にならない」話は書きましたが。逆に「こうすればリアリティを逆手にとれる」という話。

2010-09-03 11:23:20
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殆ど手に入らないと思うけど(レーベル自体無くなった感じだし)スクウェア・エニックスのEXノベルスで出していた「ソフトマシン 世界で一番優しい機械」という話を例にとると。

2010-09-03 11:24:14
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この作品、基本、近未来の病院を舞台にした話なんですが、ここで「ウサギロボ」が出てくるんですよね。で――本来ならばこう、いかにもメカっぽいロボをデザインしてもらってやるのが筋なんでしょうが・・・・

2010-09-03 11:25:28
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元々作品の雰囲気から、「絵は水上さんで!」と担当さんに御願いしていた訳ですが、水上さんの優しく繊細な絵柄を見た場合「ロボ」を普通にロボとして描いて貰うのってどうなのよ? と疑問を覚えまして。

2010-09-03 11:26:53
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強いて言えば絵本画家にガンダム描かせて売って意味あんのか? 的な。

2010-09-03 11:27:26
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自分から水上さんの絵に惚れ込んで御願いしていた以上、水上さんの絵の持ち味と相乗効果が出せるように設定するのも手だなと思ったり。

2010-09-03 11:28:09
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だったら――と、ある段階で水上さんに御願いしました。「ピーターラビット描いてください」「え?」「可愛い直立歩行のウサギ描くという事で全力投球を。設定はこっちでなんとかします」「は・・・はあ」

2010-09-03 11:29:32
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まあピーターラビットってのはあくまでたとえですが。つまりはむしろロボっぽいロボを描かないでくれと。

2010-09-03 11:30:25
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こっからが文章屋――つか設定屋としての仕事。どうしてピーターラビットばりのウサギが介護・看護ロボとして病院にいるのか。

2010-09-03 11:31:23
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「脚が短い」=「重心が低い」=「段差にて転ばないように」

2010-09-03 11:31:55
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「フェルト生地の外装」「ほとんど着ぐるみ」=「患者への威圧感軽減」&「万が一に、老人が不意にロボに触れた場合のヒートショック対策」&「間接部の保護カバー。異物混入及び、間接部に子供や老人の指が挟まって怪我するのを防ぐ」

2010-09-03 11:34:13
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「なによりも可愛いウサたんが看護してくれる病院、お子様に大人気!」

2010-09-03 11:34:39
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――という設定を作ってみた訳です。ついでに当時の科学雑誌とかで出ていた「非接触型充電」の記事も取り込んで「充電は非接触型だから、背中のファスナーもありません!」「ご老人やお子様がコンセントに触れて感電も無い!」みたいな描写を追加。

2010-09-03 11:36:00
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この結果として、私の、リアリティとは何の関係もない「水上さんの可愛いうさたんが出てくれば幸せ♪」的な勝手な発想が、何となく「リアル」に見えてきませんか?

2010-09-03 11:36:55
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まあ当時ウサギ飼っていたからってのも大きいでしょうが、まあそれはさておきw

2010-09-03 11:37:54
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結果的に、割と近未来の病院において発生する事件――そんなシリアス寄りの舞台でありながら、直立歩行のウサギがうろうろしていても、おかしかないという状態に。

2010-09-03 11:39:38
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以前書いた「参考図書」的な「スパイの為のハンドブック」なる本がありましたが、あそこで著者が「大きな嘘をつく為には小さな嘘で回りを固めろ」的な話をしていたのが印象的で。

2010-09-03 11:40:44
榊一郎@ノベライズ『サマナーズウォー』1&2発売中♪ @ichiro_sakaki

本来、「大きな嘘」と「それを構成する部品としての事実」とには因果関係は無いんですが、何故か、人間は、自分が検証しやすい、あるいは事実として受け入れやすいもので大きな嘘が構成されていた場合、細部の「真実」がそのまま全部の「真実」だと思ってしまう傾向にあるそうで。

2010-09-03 11:42:06
榊一郎@ノベライズ『サマナーズウォー』1&2発売中♪ @ichiro_sakaki

あるいは実際に読み手が実体験として受け入れやすい要素(「ヒートショック」「機械に指先が巻き込まれる」等々)を、構成要素として並べてやると、「何となくそんなウサギロボ居てもいいんじゃない?」と思ってしまう。

2010-09-03 11:45:06
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むしろこうなると、以前にも書いた「作者の怠慢が透けて見えると読者は怒る」のの逆で、嘘をつくためにこんだけ、手をかけてます、的な部分が見えてくるので、むしろ「メルヘンなキャラをリアルに出せる位の考証がなされている」的なセールスポイントにもなるかもしれんわけで。

2010-09-03 11:46:28
榊一郎@ノベライズ『サマナーズウォー』1&2発売中♪ @ichiro_sakaki

本来なら絵空事にしか見えない大嘘について、むしろかちっとした考証を(あくまで読者の目から見て、であって専門家の目から見て、というレベルでやろうとすると、大抵自縄自縛に陥って死にますが)添えた作品は、それだけで魅力を放つ場合もあるわけです。

2010-09-03 11:48:07
榊一郎@ノベライズ『サマナーズウォー』1&2発売中♪ @ichiro_sakaki

それこそ昨日の「架空戦記」なんてのはその典型ですね。まあ三田さんのおっしゃるようにトンデモ考証をつけてむしろそれを売りにしている作品もあるらしいので、「架空戦記」の定義も曖昧ですがw ちなみにトンデモ考証も、逆に言えば、リアリティの追求という一つの流れを逆手にとった「売り」になる

2010-09-03 11:49:31