暗黙知の概念についての考察

「暗黙知を理解する」(大崎正瑠)http://www.tku.ac.jp/kiyou/contents/hans/127/127_oosaki.pdf を参考にしての暗黙知概念についての考察。自分のためにちょっとまとめておく。
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木下秀明 @khideaki

暗黙知26:筆算の足し算・引き算では桁数をそろえて計算するが、それがなぜかというのは10進構造を理解していなければ分からない。だがそういうものだと記憶して計算することは出来る。なぜそうするのかという理解が伴ってアルゴリズムを利用するのと、記憶だけでするのはどちらが本質かは明らかだ

2013-03-24 18:57:21
木下秀明 @khideaki

暗黙知27:記憶だけのアルゴリズムの計算と、10進構造を理解しての計算ではどのような違いが出てくるだろうか。これはあくまでも個人的な感じに過ぎないのだが、僕には次のように感じていた。本質理解の上でのアルゴリズムでは、その適用が無意識のうちに進み、思考の対象が別のものになっている。

2013-03-24 18:59:24
木下秀明 @khideaki

暗黙知28:記憶に頼る計算は、いちいち計算そのものが頭の中に浮かんでくるのではないかと感じている。だが本質理解をした計算では、計算はすでに暗黙知の段階にまで高められているので、思考の対象にするのはそれ以外の状況の方になる。記憶による計算では生徒はそれが正しいのかどうか聞いていた。

2013-03-24 19:01:14
木下秀明 @khideaki

暗黙知29:教員に確かめないと、自分が計算していることの正しさが確証できないというのが記憶による計算のように見えた。概念理解を基礎にした計算では、例えば計算している対象が整数であるかないかが漠然と浮かんできて、結果がその感覚と違うとどこか間違えたのではないかと言うことに気づいた。

2013-03-24 19:02:50
木下秀明 @khideaki

暗黙知30:僕はそろばんをやっていたこともあって人の倍くらいの速さで計算をしていた。だが速い計算は間違いも起こす。僕は自分の計算が間違っているという「勘」が働いた。何か変だという感覚を覚えて計算し直したものはたいてい間違えていた。結果として試験で計算を間違えると言うことはなかった

2013-03-24 19:04:56
木下秀明 @khideaki

暗黙知31:単純な作業で自分が間違えているとき、間違えたという「勘」が働くのは「暗黙知」の働きのようにも感じる。単純な作業は、たくさんやれば間違えるのが当たり前で、人間は機械のような正確さは持っていない。その「勘」が働くのは、全体性を把握したときに自分のものになるように感じていた

2013-03-24 19:06:40
木下秀明 @khideaki

暗黙知32:全体性の把握というのは暗黙知のキーワードではないかと感じる。単なる記憶は「暗黙」ではなく表に出た知識だ。しかしこれでは全体性の把握は出来ない。全体性というのは文字通り全体を一遍に見るのであるから、実際には記録できない。つまり記憶は出来ないのだ。暗黙に把握するしかない。

2013-03-24 19:11:00
木下秀明 @khideaki

暗黙知33:全体性というのは無限の把握でもある。有限の存在である人間にはこれは原理的に不可能だ。だが「概念」の理解にはこの無限である全体性の把握が必要になる。概念理解には「暗黙知」が必要だ。そして概念を理解しないと、それを運用する「思考」も出来なくなる。思考にも暗黙知は不可欠だ。

2013-03-24 19:13:18
木下秀明 @khideaki

暗黙知34:学校優等生というのは暗記力が肥大した存在だ。このように肥大した暗記能力はかえって暗黙知の形成の邪魔になるのではないか。何でも記録された言葉にしないと対象を捉えられなくなるのではないか。学校優等生の思考能力が酷く見えるのは、実は暗黙知の獲得に失敗しているのかもしれない。

2013-03-24 19:16:10
木下秀明 @khideaki

暗黙知35:「情報知」と「経験知」という区別は面白い。情報知は何らかの媒介を通じて知った知識なのでその媒介を使えば他者に伝える事が可能な「表出伝達可能知」になる。「経験知」の方は素材だけしか持っていないので、それが言語化できるかどうかは状況による。「表出伝達不可能知」かもしれない

2013-03-24 19:26:17
木下秀明 @khideaki

暗黙知36:「経験知」は言語化できない間は「暗黙知」に止まると思える。このような暗黙知を持っているとき、その内容を適切に言語化した文章に触れると、目から鱗が落ちるという体験になるのではないか。暗黙知が明確な知識になったとき、認識はどのように変わっていくだろうか。調べてみたい。

2013-03-24 19:29:47
木下秀明 @khideaki

暗黙知37:優等生で一つ思い出した。僕は進学校の中学生の個人指導をしていたことがあったのだが、その子は一度教えた問題は二度目には完璧に解答した。だが初めて取り組む問題では何も出来ないと言うことがあった。記憶力は抜群なのに試行錯誤が出来ないというのを感じた。なぜなのか分からなかった

2013-03-24 19:33:22
木下秀明 @khideaki

暗黙知38:そのときは、失敗を避ける心理状況が試行錯誤を邪魔しているのではないかと思っていた。だが暗黙知で考えると、より深刻な原因があるような気がする。彼には「情報知」は膨大にあるものの「経験知」がないのではないか。「経験知」がないので経験のための一歩が踏み出せないのではないか。

2013-03-24 19:35:20
木下秀明 @khideaki

暗黙知39:単に心理的な原因で試行錯誤が出来ないのであれば、その心理的条件を取り除けば試行錯誤が出来るようになる。だが「経験知」がないという欠点であれば、試行錯誤への一歩はほぼ永久に踏み出せなくなる。そのような人間は、正しいと保証されたことしかできなくなる。新しいことは出来ない。

2013-03-24 19:36:53
木下秀明 @khideaki

暗黙知40:もし日本の学校優等生がすべて暗黙知としての「経験知」を殺して優等生になっているとしたらこれは新たな時代の展開においては深刻な問題になる。そういう優等生は古い時代を守ることしかできなくなる。時代そのものが新しかった明治の優等生にはそのような欠点はなかったのではないか。

2013-03-24 19:39:08
木下秀明 @khideaki

暗黙知41:本多勝一さんは、ルポにおいて筆者がいかに感じたかを書くのではなく、筆者にそのような感情をもたらした事実の方を分析して何が感情をもたらしたかという視点から文章を書くことが重要だと指摘していた。これは暗黙知に働きかけることで伝達されるものに深さを与えるという手法ではないか

2013-03-24 19:41:19
木下秀明 @khideaki

暗黙知42:自分がいかに怒っているかと言うことを書くのではなく、怒りをもたらした対象を徹底して描くことによって、同じ怒りを読者にも暗黙知の底からわき起こす。そのような怒りは主体的な怒りになり、単に自分の怒りを表現するよりも他者の共感を呼ぶ。表現においても暗黙知の視点は深みを与える

2013-03-24 19:44:35
木下秀明 @khideaki

暗黙知43:僕はパズルマニアで、数独・ループコース・イラストロジックなどにはまっている。これらを解くときにまずは自分で発見したアルゴリズムを駆使して始める。アルゴリズムは明確な知識であり、どうして正しいかを明確に意識して適用している。易しい問題はこのアルゴリズムだけで解答できる。

2013-03-29 10:06:42
木下秀明 @khideaki

暗黙知44:難しい問題になってくるとアルゴリズムだけでは最後まで至らず、そこである種のひらめき(発見と言ってもいいだろうか)がないと解答のきっかけがつかめない。機械的な思考であるアルゴリズムは部分に注目しているが、このひらめきは全体性を把握しないと浮かんでこない。

2013-03-29 10:08:16
木下秀明 @khideaki

暗黙知45:複雑なパズルになると、アルゴリズムによって得た情報が書き込まれて、その膨大な量に何が大事な情報であるかという選択がぼやけてくるのを感じる。パズルの解決にはある特別な部分が発見できなければならないのだが、その情報が全体に隠れてしまいそれだけを見ることが出来なくなっている

2013-03-29 10:10:52
木下秀明 @khideaki

暗黙知46:数学の図形を教えているときなど、このパズル感覚に似たものを感じるときがある。図形に描き込まれた線がたくさんあるので、本質的にどの線に注目すればいいのかがなかなか発見できない。そこに書かれた染を見ないで本質的に大事なものだけを見るという発想が必要になる。

2013-03-29 10:12:36
木下秀明 @khideaki

暗黙知49:全体性の中に大事な情報が隠れるというのは、三浦つとむさんが語っていた、地図の地名探しのゲームの中にそういうものがあった。普通は小さく書かれた地名が探しにくいと思ってそれを問題にしようとする。だが本当に探しにくいのは、全体に広がっていて部分を見たのでは見えない地名の方だ

2013-03-29 10:14:19
木下秀明 @khideaki

暗黙知50:パズル的思考で解決に至るきっかけになるのは大事な情報を掴むことなのだが、これは逆に言えば余計な邪魔をする情報を排除できる目を持つと言うことでもある。アルゴリズムはそのような目を明確に表に出したものだがアルゴリズム化できない対象については、暗黙知がその役割を果たすと思う

2013-03-29 10:16:33
木下秀明 @khideaki

暗黙知51:細かい部分に注目するという意識は持ちやすい。だが細かいところを排除して全体性を把握するというのはかなり難しい。これは三浦つとむさんが語っていた弁証法的視点に似ている。弁証法という思考は、暗黙知の持っている効果を意識的に適用しようとする技術なのではないかと感じる。

2013-03-29 10:18:17
木下秀明 @khideaki

暗黙知52:三浦さんの弁証法では「ことわざ」というものを重視する。ことわざは抽象的な言い方である視点を語るものだ。「押してもダメなら引いてみな」ということわざは、押すという視点しか持っていないときに視点を切り替えることを教える。これはうまくいくかどうか試行錯誤しなければならない。

2013-03-29 10:20:38