ギリシア語で読むギリシア神話 『イリアス』第2歌 ゼウスはアガメムノーンを唆した
- Hellenike_tan
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【第31・32行】"ἀθάνατοι φράζονται: ἐπέγναμψεν γὰρ ἅπαντας Ἥρη λισσομένη, Τρώεσσι δὲ κήδε᾽ ἐφῆπται" …これも第14・15行と同じ文言です。
2013-08-06 17:00:1933・34行-「起きたら忘れてた」とかは不可
【第33行】"ἐκ Διός: ἀλλὰ σὺ σῇσιν ἔχε φρεσί, μηδέ σε λήθη" (続きます)
2013-08-06 17:30:21(承前)"ἐκ Διός"は「ゼウスから」。"ἔχε"は"ἔχω"の命令法現在二人称単数能動態で、"φρεσί"は"φρήν"(中心・心中)の複数与格。"μηδέ"は「~しない」。"λήθη"は「忘却」です。(続きます)
2013-08-06 17:35:13(承前)全体で「ゼウスから。そなたは自ら心中にしかと受け止め、忘却がそなたを~しないように」という意味になります。
2013-08-06 17:40:14【第34行】"αἱρείτω εὖτ᾽ ἄν σε μελίφρων ὕπνος ἀνήῃ." (続きます)
2013-08-06 18:00:40(承前)"αἱρείτω"は"αἱρέω"(つかむ)の命令法現在三人称単数能動態、"εὖτ᾽"は"εὖτε"(~した時)のエリジオン型、"μελίφρων"は「心に甘い」「甘美な」という意味です。(続きます)
2013-08-06 18:05:14(承前)"ἀνήῃ"は"ἀνίημι"(離れる)の接続法アオリスト三人称単数能動態。全体で「甘美な眠りがそなたから離れたときに、つかんでおけ」となります。
2013-08-06 18:10:16【第33行と第34行】二つつなげると「そなたは自ら心中にしかと受け止め、甘美な眠りがそなたから離れた時に、忘却がそなたをつかんだままにしてはならない」となります。"μηδέ σε λήθη αἱρείτω"という否定命令文が入る形です。
2013-08-06 18:15:19当該箇所をまとめたもの。
『イリアス』第2歌第23~34行(ネストールに扮したオネイロスがアガメムノーンに語りかける場面) ‘εὕδεις Ἀτρέος υἱὲ δαΐφρονος ἱπποδάμοιο: οὐ χρὴ παννύχιον (cont) http://t.co/vPXUXJw28c
2013-08-07 01:00:03三日目-「ゼウスの命」を受けたアガメムノーン
【『イリアス』-「ゼウスの命」を受けたアガメムノーン】月曜と火曜に取り上げてきた『イリアス』第2巻冒頭の「アガメムノーンをそそのかす場面」の区切りをつけるべく、「乗せられるアガメムノーン」と「ゼウスの真意」に関して第35行以降の続きを取り上げます。
2013-08-08 13:25:1435・36行-アガメムノーンをおいて立ち去ったオネイロス(夢)
【第35行】"ὣς ἄρα φωνήσας ἀπεβήσετο, τὸν δὲ λίπ᾽ αὐτοῦ" (続きます)
2013-08-08 13:30:16(承前)"φωνήσας"は"φωνέω"(音を鳴らす)のアオリスト分詞男性形単数主格で"ἀπεβήσετο"が"ἀποβαίνω"(立ち去る)の直説法アオリスト三人称単数中動態です。(続きます)
2013-08-08 13:35:15(承前)エリジオンされた"λίπ᾽"は"λείπω"(残す)の直説法アオリスト三人称単数能動態です。全体で「そう声をかけるとすぐに立ち去った、彼をそこに残して」となります。
2013-08-08 13:40:15【第36行】"τὰ φρονέοντ᾽ ἀνὰ θυμὸν ἅ ῥ᾽ οὐ τελέεσθαι ἔμελλον:" (続きます)
2013-08-08 14:00:26(承前)"φρονέοντ᾽"は"φρονέω"(思う)の現在分詞男性形の格変化型がエリジオンされたものですが、これだけでは数や格の判断が難しいところなのでいったんおきます。"ἀνὰ θυμὸν"は「心中で」といった意味です。(続きます)
2013-08-08 14:05:14(承前)"ἅ"は関係代名詞の中性複数主格・対格です。その先行詞を探すと、"τὰ φρονέοντ᾽"がご丁寧に冠詞つきで現れます。つまり中性形複数主格・対格"φρονέοντα"の省略だったことがわかります。(続きます)
2013-08-08 14:10:14(承前)"τελέεσθαι"は"τελέω"(終える・完成する)の不定法未来中動態で"ἔμελλον"は"μέλλω"(運命づけられる)の直説法未完了過去三人称複数能動態。全体で「成就しないと定められていたことごとに心中思いを巡らせて」となります。
2013-08-08 14:15:13【第35行・第36行】行をまたいでいる部分や固有名詞を補うと「(オネイロス(夢)は)そう声をかけると、成就しないと定められていたことごとに心中思いを巡らせていた彼(アガメムノーン)をそこに残してすぐに立ち去った」となります。
2013-08-08 14:20:1437・38行-子供のようなアガメムノーン
【第37行】"φῆ γὰρ ὅ γ᾽ αἱρήσειν Πριάμου πόλιν ἤματι κείνῳ" (続きます)
2013-08-08 14:30:18(承前)"αἱρήσειν"は"αἱρέω"(つかむ)の不定法未来能動態。"Πριάμου πόλιν"は「プリアモスの街を」ですなわち「トロイアを」を指します。"ἤματι κείνῳ"は"ἦμαρ κεῖνον"(その昼)の単数与格です。(続きます)
2013-08-08 14:35:14