- Eric_Ridel
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1)ブログ「芦田の毎日」の「10年来の読者」(440頁)の45歳男(大学教員、札幌在住)です(ツイッターはやってませんがツイログをいつも拝見しています)。
2013-08-13 20:48:462)今回『努力する人間になってはいけない─学校と仕事と社会の新人論』の出版を機に、これまで自分がなぜ芦田先生の言葉をずっと追いかけ続けてきたのか、自分が芦田先生から何を学んだのか、改めて考えてみようと思います。
2013-08-13 20:48:593)出版記念パーティ&朝まで講演会の2日後、満を時して、貪るように(なぜか後ろ=第9章から)読みましたが、やはり、この本は一言で言えば「変な fremd」本です。ありとあらゆる意味で「変」。
2013-08-13 20:49:144)とにかく既成の枠組みにまったく収まらない。たんなるエッセイでも、研究書でも、講義録でも、啓蒙書でも、ノウハウ本でも、自己啓発本でも、ない。文字どおり型破りで規格外。書店のどのコーナーにおかれるのか、まったく想像がつかない。
2013-08-13 20:49:316)また、この本の「素材=題材」も、ありとあらゆる事柄から採られている。床屋さんでのひとコマ(167頁~、泣ける!)から、日本の教育政策から、ハイデガーのエネルゲイア論まで、文字どおりありとあらゆる。まさしく「芦田の毎日」。
2013-08-13 20:50:047)にもかかわらず、ブログ本やエッセイ本にありがちな散漫な印象はなく、全編に緊張感が漲っている。「次は何が出てくるのだろう」というワクワク感を久々に味わった(ほとんどの記事が既読であるにもかかわらず)。
2013-08-13 20:50:209)たとえば「人間は殺しうるものだけを愛しうる」(174頁)、「お互いが理解し合うなんて、最低の貧相なコミュニケーションだ」(185頁)、「"関心"や"意欲"を超えていやいや勉強するからこそ、知見が広まり、世界も広がるのです」(317頁)、等々枚挙にいとまがない。
2013-08-13 20:50:5110)そもそも「努力する人間になってはいけない」という本書のタイトルからして、世の「良識派」のみなさんの神経を逆撫ですること必至。文句なしに「いぶかしい」(386頁)。
2013-08-13 20:51:0611)私が(九州で大学院生をやっていて、「ジャック・デリダ」についてちょっと調べていた2002年頃)、著者である芦田宏直さんの存在を、ブログ「芦田の毎日」によってたまたま知ったときにまず感じたのも、今考えると「いぶかしさ」であった。
2013-08-13 20:51:2313)でもその種の、いわばゴシップ的(述語的)な興味だけでは10年はもたない。芦田さんの言葉は一見「いぶかしい」のだけど、「よーく考える」と、何というか、真っ当すぎるほど真っ当だと分かることがある(分からないことも多いが)
2013-08-13 20:51:5014)その真っ当さが分からないのは、読んでいるこちらがバカなだけだと思い知らされる瞬間がある。「この人は何者だ?」という最初の問いが、「俺は芦田=ジャイアンだ。お前は誰だ?」という答え=問いとして自分に跳ね返ってくる。まったく油断がならない。
2013-08-13 20:52:0515)この本は、読む者に「よーく考える」ことを強いる(人によってはかなり「ウザい」と感じられるはず)。そしてこれは、この本の一貫したテーマでもある。
2013-08-13 20:52:2016)「ながーい時間」(386頁)をかけて、「退屈 Langeweile」(390 頁)に耐えて、純粋かつ無垢に何かに取り組む=「沈潜」する(94頁)ことによってしか得ることができないものがある。
2013-08-13 20:52:3318)この本は若者の、若者による、若者のための本でもある(48頁参照)。芦田さんは還暦前のおじさんであるが、本質的には若者である。というか、普通の大人にはこんな「いぶかしい」本は書けない。
2013-08-13 20:53:2419)その芦田さんから実際の若者に対して執拗なまでに発せられるのは、「生活に追われるようになる前の、若いうちに、これだけは他人に負けないと言える何か=ストックをつくれ」というメッセージ。
2013-08-13 20:53:4020)「孤独」に耐え、「ながーい時間」をかけ、「くすぶり続けて」(386頁)はじめて得られる何か。長い人生を自立して生き抜く力、他の人を幸せにできる力=competency(116頁)になるのは、それしかない。
2013-08-13 20:53:5521)そうしなければ、外的状況の変化によって、一生振り回され引きずり回され続けることになる。自ら変化を引き起こすことは決してできない。「私の言う〈根性〉とは、そんな変化を担ったり、変化に耐える能力のことだ」(115頁)。
2013-08-13 20:54:1222)若者(特に男子)は、この本を自分の人生の成功のために生かすこともできるだろう。「成功」とは、とりあえずは普通の意味での成功である。受験競争に勝つ、できるだけ大きな会社に就職する、会社で出世する、結婚して家族をつくって養う。
2013-08-13 20:54:3324)だがここで終わらないのが芦田さんの芦田さんたる所以、この本の「いぶかしさ」の所以である。そうした社会的「出世」や「成功」は、究極的にはすべて「偶然」にすぎないと言い放たれる。
2013-08-13 20:55:0325)「社会的な不遇も、厚遇も、理由をつけようと思えばいくらでもつけることができそうだが、ほとんど嘘だ。人は偶然出世し、偶然落伍する。それが"社会"観の究極の認識だ。つまり社会評価は、評価にならない」(98頁)。
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