i乗のイメージ

関心のある皆さんのお役に立てばなによりです
13
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

オイラーの公式「e^{iθ} = cos θ + i sin θ」は数学上最も美しい式の一つと称されてますが、同時に理学(特に物理系)・工学(特に電気系)の分野で最もパワフルに用いられている公式の一つです

2013-11-25 22:49:26
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

この式を初めて見たときに「???虚数回かけるって何???」と面食らう学生さんが多かったとしても当然だと思います。納得できないまま使ってるけどまだ気持ち悪い、という社会人の方も多いでしょう

2013-11-25 22:49:41
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

ここで 「i 乗すること」のイメージ について考えてみたいと思います。これはオイラーの公式の数ある導出法の1つでもあります

2013-11-25 22:49:58
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

自然対数の底あるいはネイピア数e = 2.718…は高校数学では指数関数の微分の学習で登場しますが、eの最もオリジナルの定義に(1+1/n)^nのn→∞における極限というのがあります。これを使って説明します

2013-11-25 22:50:15
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

この定義のいいところは、指数計算の本来の意味である「z回かける」という概念を用いずにe^zを計算できるところです。つまり「(1 + z/n)をn回かける」ことに置き換えることができます。ここでzにどんな数を入れても別に不自然な感じはしませんよね

2013-11-25 22:52:26
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

[念のため] e^zは(1 + z/n)^nのn→∞における極限で与えられます。 なぜならeの定義より (1 + z/n)^n = [(1 + 1/(n/z))^{n/z}]^z → e^z

2013-11-25 22:52:48
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

[脱線] 一体何のためにこんな計算を?と思われる人もいるでしょう。実はeは金融の複利計算の問題から生まれた数です

2013-11-25 22:50:59
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

[脱線] 例えば (1 + z/n)^n の計算とは「年利z、単位期間1/n年の複利で1年貸付けると元利合わせて元の何倍になるか?」という問題と等価です。つまり最もガッポリ利息をとるための貸付条件を研究する過程で生まれた数がeです

2013-11-25 22:51:24
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

[脱線] ちなみに eを与えるz=1の場合は年利100%の悪徳貸付に該当します。これは貸付けの単位期間を無限に細かく刻めば1年で172%も利息をボッタくることができることを意味します

2013-11-25 22:51:52
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

i 乗の準備ができました。z = iθの場合を考えます。この場合 (1 + iθ/n)^nは実部1、虚部θ/nの複素数(1 + iθ/n)をn回かけ合わせた数になります

2013-11-25 22:53:16
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

ここで、複素数の積の性質のおさらいです: 「複素数の積の絶対値は各々の絶対値の積となり、複素数の積の偏角は各々の偏角の和となる」 つまり複素数の乗算は幾何学的には複素平面上での回転と伸縮に対応します

2013-11-25 22:53:50
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

したがって (1 + iθ/n)^nとは、言い方を代えれば複素平面上で1を起点として×(1+iθ/n)という微小な回転・伸張をn回繰り返した結果に相当します

2013-11-25 22:54:13
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

[念のため] 複素数 a+ib の絶対値(原点からの距離)は√(a^2+b^2)、偏角(原点で実軸となす角度)はtan^{-1} b/a で計算されます

2013-11-25 22:54:34
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

いよいよ(1 + iθ/n)^nの絶対値と偏角を求めます。これは同じ数をn回掛けるだけなので、前述の積の性質を使えば計算は結構簡単で、絶対値は (√(1 + (θ/n)^2) )^n、偏角は n (tan^-1 θ/n)となります。これらのn→∞での極限を求めます

2013-11-25 22:54:55
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

まず絶対値ですが、(1 + iθ/n)はn→∞で1に収束するので、(1 + iθ/n)^nの絶対値 (√(1 + (θ/n)^2) )^n も1に収束します

2013-11-25 22:55:30
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

次に偏角です。θ/nが小さくなるにつれて tan^-1 θ/n は θ/n に漸近します。 従って、(1 + iθ/n)^nの偏角 n (tan^-1 θ/n) は n (θ/n) = θ に収束します。 もうゴールが見えてきました

2013-11-25 22:56:38
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

つまり、e^{iθ}を定義する(1 + iθ/n)^nのn→∞での極限値は絶対値1、偏角θの複素数となります。これは直交座標的には実部cos θ、虚部sin θの複素数として表されます。この帰結はまさにオイラーの公式 e^{iθ} = cos θ + i sin θ そのものです

2013-11-25 22:57:12
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

以上のように、「i 乗すること」のイメージをまとめてみました。関心のある皆さんのお役に立てば何よりです

2013-11-25 22:57:53
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

先般オイラーの公式について http://t.co/uiFea4wPcs にまとめたんですが、その中で (1+z/n)^nのn→∞における極限がどうして e^z なのか納得できん、という質問というか苦情がありました

2014-02-18 12:39:22
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

確かに、e^zの定義はもともと lim_{n→∞} (1+z/n)^n だっ!とアタマごなしにいわれても困ってしまう人もあるかと思います。だったら、この「定義」をもっと馴染みのある形に変形してみましょう

2014-02-18 12:39:49
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

(1 + z/n)^n は二項定理を使って ∑_{k=0}^n _nC_k (z/n)^k と展開できます。ここで _nC_k はn個からk個を選ぶ組合せで n!/(k! (n-k)!) と同じです

2014-02-18 12:40:09
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

ここから式が続いて恐縮ですが、 ∑_{k=0}^n n!/(k! (n-k)!) (z/n)^k = ∑_{k=0}^n n(n-1)…(n-k+2)(n-k+1)/k! (z/n)^k

2014-02-18 12:40:34
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

…= ∑_{k=0}^n (n-1)/n…(n-k+2)/n (n-k+1)/n z^k / k! ここまではいいですか? ここで (n-1)/n…(n-k+2)/n (n-k+1)/n の部分にご注目です

2014-02-18 12:41:11
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

n→∞ の極限をとります。(n-ナントカ)/n は1に収束するので、(n-1)/n… (n-k+2)/n (n-k+1)/n も1に収束します。すなわち、∑_{k=0}^n n(n-1)…(n-k+2)(n-k+1)/k! (z/n)^k → ∑_{k=0}^∞ z^k / k!

2014-02-18 12:42:10
森 邦彦 C103 12/30(土) 東U-39a「げんそけん」 @morikuni_net

したがって (1+z/n)^nのn→∞における極限は ∑_{k=0}^∞ z^k / k! であることが示されます。これはよく知られた e^z のマクローリン級数展開にほかなりません

2014-02-18 12:42:35