古代ギリシアの農事暦 ヘシオドス『仕事と日』より -初冬の種まき編-

日本では全国的に勤労感謝の日になる11月23日。 だいたいこのくらいの時期(11月半ば)に古代ギリシアでは麦の種まきが行われていた――ということが『仕事と日』の記述からわかります。 ということで、『仕事と日』の「農事暦」のうち、該当する部分について原文を取り上げてみました。
人文 ヘシオドス ギリシア語 仕事と日 ギリシア 農事暦
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土曜の朝の定期ポスト

ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
【大地母神デメテルへの祈り】"εὔχεσθαι δὲ Διὶ χθονίῳ Δημήτερί θ᾽ ἁγνῇ, ἐκτελέα βρίθειν Δημήτερος ἱερὸν ἀκτήν,"ヘシオドス『仕事と日』第465~6行より。(続きます)
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(承前)意味は「地の神ゼウスと清きデーメーテールに祈ること、デーメーテールの聖なる穀物が満足に実ることを」。種まきを始める前にこう祈れ…と歌われています。農業生活におけるデメテルの重要性がよく表されていますね。

やや強引な前振り

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今日は勤労感謝の日。元は収穫祭のような日でした。ギリシアでは―地中海性気候を活かして、日本とは真逆に「秋に種をまき春に収穫する」というスタイルの農業が行われていました。 …ということで、およそこのくらいの時期に行われていた種まきについて、『仕事と日』から関連記述を取り上げます。

冬が来たら牛と荷車の用意を(448~457行)

ギリシアにて冬を知らせる鶴の声

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【448行】"φράζεσθαι δ᾽, εὖτ᾽ ἂν γεράνου φωνὴν ἐπακούσῃς" "φράζεσθαι"は"φράζω"(示す)の不定法現在中・受動態。"εὖτ᾽"は"εὖτε"(~する時)のエリジオン型。(続きます)
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(承前)"γεράνου"は"γέρανος"(鶴)の単数属格、"φωνὴν"は"φωνή"(声)の単数対格で、"ἐπακούσῃς"は"ἐπακούω"(聞く)の接続法アオリスト二人称単数能動態。全体で「示される、鶴の声が聞こえた時」となります。
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【449行】"ὑψόθεν ἐκ νεφέων ἐνιαύσια κεκληγυίης:" "ὑψόθεν"は「上の方から」、"νεφέων"は"νέφος"(雲)の複数属格、"ἐνιαύσια"は"ἐνιαύσιος"(一年の)の女性形単数主格。(続きます)
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(承前)"κεκληγυίης"は"κλάζω"(鋭い声を上げる)の完了分詞女性形単数属格。この分詞が係りうる単数属格女性名詞は―"γεράνου"(鶴の)となります。全体で「上の方で雲から一年の鋭い声を鳴らす(鶴の)」となります。
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【448~449行】全体を通すと「示される、その年の鋭く鳴く鶴の声が天高く雲の上から聞こえた時」となります。 ちなみに、ギリシアでは、越冬するためにアフリカに渡る鶴が、11月中旬頃に高い鳴き声とともに通っていました。
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【450行】"ἥτ᾽ ἀρότοιό τε σῆμα φέρει καὶ χείματος ὥρην" "ἥτ᾽"は"ὅστε"(それ)の女性形単数主格、"ἀρότοιό"は"ἄροτος"(畑)の単数属格詩的表現、"σῆμα"は「印」という意味の中性名詞です。(続きます)
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(承前)"φέρει"は"φέρω"(運ぶ)の直説法現在三人称単数能動態です。"χείματος"は"χεῖμα"(冬の寒さ)の単数属格で"ὥρην"は"ὥρα"(時・季節)の単数対格イオニア方言。全体で「それは畑の印をもたらし、寒い冬の季節を」となります。
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【451行】"δεικνύει ὀμβρηροῦ: κραδίην δ᾽ ἔδακ᾽ ἀνδρὸς ἀβούτεω:" "δεικνύει"は"δείκνυμι"(示す)の直説法現在三人称単数能動態。(続きます)
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(承前)"ὀμβρηροῦ"は"ὀμβρηρός"("ὄμβριος"(雨)の別型)の単数属格。"κραδίην"は"καρδία"(心)の単数対格イオニア方言。"ἔδακ'"は"δάκνω"(噛む)の直説法アオリスト三人称単数能動態のエリジオン型。(続きます)
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(承前)"ἀβούτεω"は"ἀβούτης"(牛のない者)の単数属格詩的表現。全体で「雨の~を示す。牛のない男の心を噛む」となります。
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【450~451行】全体を通すと、「それは畑の印をもたらし、雨の寒い冬の季節を示す。それは牛のない男の心を苛む」となります。

牛を世話しておくこと

ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
【452行】"δὴ τότε χορτάζειν ἕλικας βόας ἔνδον ἐόντας:" "δὴ"は「確かに」、"χορτάζειν"は"χορτάζω"(餌をやる)の不定法現在能動態。"ἕλικας βόας"は「角の曲がった牛たち」の意です。(続きます)
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(承前)"ἔνδον"は「中に」。"ἐόντας"は"εἰμί"の現在分詞能動態男性形複数対格。全体で「確かに中にいる角の曲がった牛たちに餌をやる時期だ」となります。

「貸してくれ」というのは簡単だが「ダメ」と断るのも簡単

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【453行】"ῥηίδιον γὰρ ἔπος εἰπεῖν: βόε δὸς καὶ ἄμαξαν:" "ῥηίδιον"は"ῥᾴδιος"(簡単な)の中性形単数主格イオニア方言、"ἔπος"は「言葉」で"εἰπεῖν"は"εἶπον"(言った)の不定法能動態。(続きます)
ギリシア語たん(自転車操業中) @Hellenike_tan
(承前)"βόε"は"βοῦς"(牛)の双数対格で"ἄμαξαν"は"ἄμαξα"(枠で作られた四輪車=荷車)の単数対格。全体で「こう言うことは簡単だ。『二匹の牛と荷車を(貸してくれ)』」となります。
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【454行】"ῥηίδιον δ᾽ ἀπανήνασθαι: πάρα ἔργα βόεσσιν." "ἀπανήνασθαι"は"ἀπαναίνομαι"(断る)の不定法アオリスト中動態。"πάρα ἔργα"は対格支配なので「仕事に対して」といった意味になります、(続きます)
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