エボラウイルスに効く薬? ~続・続感染症よもやま話~

ポリメラーゼを理解するのは解説なしには無理だった・・・。 〇関連まとめ 「感染症よもやま話  エボラとかインフルエンザとか」http://togetter.com/li/698398 エボラウイルスに手洗いうがい、アルコール消毒は効くのか ~続感染症よもやま話~http://togetter.com/li/700426
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Y Tambe @y_tambe

基本的に「ウイルス」は、ウイルス自身の遺伝情報を担っている核酸と、それを覆うタンパク質の殻(カプシド)、そして種類によってはそれを覆うエンベロープ、という非常に単純な構造しか持ってない。遺伝情報を「核酸」が担っているのは同じだけど、DNAでなくRNAを核酸に持つものもいる(続

2014-08-07 21:02:25
Y Tambe @y_tambe

なのでウイルスは、遺伝情報を担っている核酸の種類で「DNAウイルス」と「RNAウイルス」に二別することが可能。これと、さらに「エンベロープを持つ/持たない」で四グループに分けて、さらに細かく分類していくのだけど、余談なのでそれは置いておく。

2014-08-07 21:04:17

ではそのウイルスが増えるための条件として・・・

Y Tambe @y_tambe

で、RNAをゲノムに持つウイルスは、一部を除いて自分の子孫を作るには「RNAを鋳型にしてRNAを複製する」必要がある。ところが、ヒトの細胞の中にはそのための酵素がない。あるのは「DNAからDNAを複製する酵素」と「DNAからRNAを複製する酵素」。

2014-08-07 21:08:14
Y Tambe @y_tambe

そこでRNAウイルスが細胞の中で増えるには (1) RNAを鋳型にRNAを複製する酵素を持つか (2) 一旦、RNAを鋳型にDNAを作って、それをヒト細胞の「DNAからRNAを複製する酵素」で増やす というどちらかを行う必要が出てくる。

2014-08-07 21:11:12
Y Tambe @y_tambe

承前)前者の酵素が「ウイルスRNAポリメラーゼ(RNA依存RNAポリメラーゼ)」で、今回話題になってるのがこれ。ウイルスが独自に持ってて、ヒト細胞の中に持ち込むものなので、正常な細胞にはこの酵素はない。だからこの酵素だけ阻害できれば、細胞のダメージは最低限でウイルスを阻止できる。

2014-08-07 21:14:39
Y Tambe @y_tambe

承前)ちなみに、後者(2)のために必要な「RNAを鋳型にDNAを作る」酵素を「逆転写酵素」と呼ぶ。これを持っているのがレトロウイルス…AIDSの原因になるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)がこれ。

2014-08-07 21:16:50

なるほど。ウイルスが増えないようにしてしまえばいいのか。
増えるための条件を阻害してしまうということなのね。

ぶたやま@「ぶたやまかあさんのやり過ごしごはん」発売中 @Butayama3

@y_tambe  でも、それ、ぴったりあわないと意味ないですよね、、?

2014-08-07 21:17:57
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 普通はね。ただ、ちょっと仕組みがあって。さっきDNAがアデニン、シトシン…って4つのが並んで出来てるって言ったけど、RNAも似てるのね(チミンの代わりがウラシルってヤツに変わってる程度)。で、その「パーツ」になる核酸のニセモノを入れてやる。

2014-08-07 21:22:58
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 こういう薬をひっくるめて「核酸アナログ」(アナログ=似てるもの)と呼ぶ。この「似てる具合」を上手く調整してやるのが大事で、「RNAを鋳型にRNAを作る」ためのウイルスの酵素がダマされて、ヒトの酵素がダマされないようにすることができれば…ということになる。

2014-08-07 21:26:53

ウイルスの酵素だけをダマして、人の酵素をダマさないようにする。

ぶたやま@「ぶたやまかあさんのやり過ごしごはん」発売中 @Butayama3

@y_tambe  で、今回、インフルエンザの薬でだまされてくれた、というわけですか、、、。

2014-08-07 21:28:48
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 もうちょっと細かく言うと、インフルエンザも「RNA依存RNAポリメラーゼ」を持ってて、それをだませる薬で、エボラもだませた、という感じ。ただ「いろんなものをだませる」薬ほど、ヒトの酵素もダマしちゃう可能性が高くなって、そうなると副作用の大きさに関わってくる

2014-08-07 21:31:20
Y Tambe @y_tambe

(一本鎖RNAの+鎖、-鎖ウイルスの違いとか、二本鎖RNAウイルスの違いとか、いろいろあるのだけどそこらへんはざっくり)

2014-08-07 21:34:14
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 ざっくり言うと、ですけどね。

2014-08-07 21:38:31
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 実際の「副作用の強さ」は、それ以外のところから来る場合もあって、けっこう複雑なんです。でもまぁポイントは外してないはず。

2014-08-07 21:45:02

ところで、どうしてこの薬があうってわかったんですか?

Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 この辺りの開発は「総当たり戦」に近いです。もともと「核酸アナログ」はいろんなものが開発されて、抗ウイルス薬、抗菌薬に使われてました。で、その化学構造をいろいろと変えて、どう変えたら効果が上がるか、どの病原体に効くかをひたすら試す。

2014-08-07 21:51:07
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 もちろん、一個一個試していくとどれだけカネと時間があっても足りないので、最近は、標的になる酵素(この場合はウイルスRNAポリメラーゼ)の立体構造を元に、どういう形の薬がぴったり嵌るかをコンピュータでシミュレートするのが一般的。

2014-08-07 21:53:38
Y Tambe @y_tambe

@Butayama3 今回の場合は、元々「ホンモノ」の核酸がピッタリはまる辺りに、ちゃっかり嵌ってダマせるか、的なことを調べて、見つけた候補の中から使い物になるのを見つけた、と思ってもらえれば、まぁだいたい合ってると思う。

2014-08-07 21:56:48